2011年10月7日金曜日

リミットレス

(LIMITLESS)

 今年もトンデモ学説上の通説をネタにした映画が色々公開されていますね。古典的なネタが使われているのを観ると懐かしい。
 『ガリバー旅行記』では「バミューダ・トライアングル」ネタを。
 『SUPER 8/スーパーエイト』では「エリア51」ネタを。
 本作『リミットレス』では「人間の脳の活用」について。

 人間の脳の大半は眠ったままで使われておらず、これを100%活用できれば超能力が身につく──と云うのは随分古くからネタにされてきております。「脳の大半は活用されていない」というフレーズ自体が懐かしいわ。
 SF者には手垢がつきすぎて、却って新鮮に感じられるネタですね(笑)。

 本作では、超能力とまでは行きません。まぁ、でも知能の増大も超能力みたいなものか。知覚の促進により、エスパー並みの洞察が得られるようになるという描写もありますし。
 遙か昔に読んだ本の内容が突如として思い出せるようになり(しかも一言一句そのままに)、全く関係のないような出来事との関連づけが頭の中でひらめき、一般人には思いも寄らないような発想が生じる。
 記憶力も桁外れに促進され、どんな外国語も数日でペラペラに。
 全ての問題は解決し、文化的欲求が増し、ベストセラー級の大作も瞬く間に書き上げ、数字にも強くなって株で大儲け。おまけに話術も冴えて皆の注目の的となる。
 更に、集中力の増大により、時間経過が遅く感じられるという描写もあります。これは自分が加速しているようなものですね。
 殴りかかってくる男の拳がスローに見える。かつて観たカンフー映画の一場面が思い起こされ(ブルース・リーだ!)、映画で観たとおりに身体を動かすことが出来るようになる。
 頭も良くなる上に、腕っぷしまで強くなる。

 これはそんな夢のような超人的能力を引き出すことのできる薬品をめぐるSFスリラー。
 主役は『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』でフェイス役だったブラッドリー・クーパー。『ニューヨーク、アイラブユー』とか『バレンタインデー』といった恋愛映画への出演が多かった人ですが、最近はだんだんアクションものやらコメディものにも出るようになりました。応援してます。
 元々、この映画の主演はシャイア・ラブーフに決まっていたそうですが、ラブーフが交通事故を起こした為、降板してオファーが回ってきたとか。
 ラブーフより役にハマっている気がするのは贔屓目ですか。特に初期のホームレス並などん底状態と、超人化して身嗜みもこざっぱりしたイケメン状態との落差は、ブラッドリー・クーパーの方が印象的な気がする(想像ですけどね)。

 原稿執筆がサッパリ進まず煮詰まっていた冴えないライターに降って湧いた幸運。離婚した妻の弟と偶然再会したところ、元義弟はドラッグの売買絡みで入手した怪しげな薬を一錠くれる。
 半ば自暴自棄になって服用した途端に光明が……。

 クスリが効き出すと、文字通り周囲が明るくなって、何もかもクリアに見えてくると云う演出が巧いです。その上、覚醒状態を表現する演出も面白い。
 私も一度で良いから「頭上から言葉が雨あられと勝手に降ってきて、手が勝手にキーボードの上を踊りまくって、ニコニコ微笑みながら超大作を書き上げる」なんて体験をしてみたいものですわ。
 実に羨ましい。
 しかしどうなんでしょね。薬物に頼って人生を切り開き成功する、なんてストーリーはあまり褒められたものではないと思うのデスが……。
 案の定、調子に乗ってサクセス街道を驀進していると、トラブルに見舞われる。まぁ、自業自得なので同情の余地はありませんな。と云うか、手っ取り早く金を儲けるのはいいが、ヤバいことに首を突っ込んじゃイカンでしょう。
 頭が良くなっているのに、どうしてそういうところには気が付かないんですかね。ドラッグが効いている間は、何事に対しても自信が漲るようになって大胆になる──もう人格が豹変するくらいな変貌を遂げる──ので判断を誤るのか。
 やはりクスリに頼りすぎれば身を滅ぼすのか。当たり前だ。

 原作小説があるそうで、数年前に翻訳も出版されていたとか。
 アラン・グリンの『ブレイン・ドラッグ』(文春文庫)か。英国推理作家協会新人賞候補作にもなったそうです。うーむ。SFじゃないのか。
 最近は一般作家がSFネタで書く小説というのも増えましたねえ。カズオ・イシグロだって『わたしを離さないで』とか書いてるし。一般作家だから古典的なSFネタを使うとも云えるか。

 監督は『幻影師アイゼンハイム』のニール・バーガーでした。今回も映像表現の手法に凝ってますね。
 一方、共演はロバート・デニーロ。さすがの貫禄で財界の大物役が板に付いております。
 負け犬人生のブラッドリーに愛想を尽かしかける恋人役がアビー・コーニッシュ。『エンジェ ウォーズ』でエミリー・ブラウニングらと一緒に戦っていたスイートピーちゃんか。大人の女性役なので雰囲気がガラリと変わりました。今回もちょっとだけアクション・シーンを演じています。
 アンドリュー・ハワードがロシアン・マフィアのチンピラ役で登場しますが、これがなかなか巧い。学のない粗暴なヤクザ者が脳活性化ドラッグのお陰でだんだん組織内でのし上がっていく様子が間接的に描かれる。ブラッドリーと同じようにスーツを着るようになり、手下を連れて歩くようになっていくのが笑える。

 結局、ヤミ金融から借金したお陰でヤクザに付きまとわれ、頼みの脳活性化ドラッグだって無限にあるわけでもなく、だんだんクスリの副作用も出始めるし、効果が切れると脱力して前よりヒドイどん底状態に陥るという悪循環。
 やめなきゃいけないと判っていても、クスリが効いているときの無敵状態が忘れられず、やめることが出来ない。
 いやぁ、麻薬って怖いですね。

 物語は、この追い詰められたブラッドリーが高層マンションから飛び降り自殺しようとしている場面から始まり、どうしてこんな羽目に陥ったのかと人生を回想する形式で語られていくわけですが、クライマックスで再び冒頭の場面に戻ってくる。
 そのまま破滅して終わりかと思いきや……。
 起死回生の大反撃。
 あんな方法でドラッグを摂取するとは思いつきませんでした。ちょっとビックリ。

 観客の願望充足型の映画ではありますが、フツーにこの手の物語なら主人公はラストで破滅し、やっぱりドラッグに頼っちゃダメだよね的な教訓を残して終わるのかと思っていたら大間違いでした。
 そりゃまあ、ブラッドリーくんが助かるのは嬉しいが、これからは健全に生きていきましょう的にまとめるのではなく、サクセス街道に復帰してしまう。それでいいのかとツッコミのひとつも入れたくなろうと云うものでしょう。
 しかも最後に摂取した方法があまりにも異常だったので、脳のシナプスが固定されて、最早ドラッグに頼らずとも常時、超人状態を維持できるようになった──って、そんな都合の良いハナシがあるかーっ。

 ハッピーエンドではありますが、それでいいのか。願望充足も極まれりですわ。うーむ。
 私もそんな便利なドラッグがあるなら試してみたいが、現実はキビシい。「脳トレ」ゲームでもチマチマやって脳を鍛えるしかないか。
 でも科学的には「脳トレに効果なし」だそうで。ちぇっ。




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