私が読んだことのある原作は小学生向けの物語だったから、ジョナサン・スウィフトの原典をちゃんと読んでいるとは云い難いのですが、随分と変わっているというのは判るぞ。
まぁ、過去に何度も映画化されてますからねえ。少しくらい差別化を図らないとイカンのか。
でもそれならいつもいつも「第一話・リリパット国渡航記」ばかり映画化しなくてもいいようなものですが。
現代のNYで大手新聞社に勤めるガリバーは、しがないメール係。毎日、郵便物を満載したカートを押して社内の各部署に配達して回るのが仕事である。
はっきり云って面白そうな仕事ではないし、長年勤務しているのに異動も配置転換の気配すらない。お気楽ではあるが、人事考課は低いらしい。
周囲からも空気扱いされているが、旅行欄担当の女性編集者(アマンダ・ピート)に片思いして五年が経つ。しかし自分に自信が持てず、デートに誘う言葉が出てこない。
非常に判りやすいですね。
相手の女性もガリバーからの誘いを待っているような節も見受けられるというのに、実にもどかしい。そしてデートに誘うどころか、見栄を張ってホラを吹いて旅行レポートを書いてみたいと云い出す始末。
そして転がり込んだバミューダ海域のレポートの仕事。
小人の国は異次元にあるらしい(笑)。
まぁ、現代を背景にするからには、それなりに理屈を付けねばならぬとは云え、バミューダ・トライアングルを持ってくるのが、何とも判りやすい。さすがファミリー映画。
と云うか、今でも「バミューダ・トライアングルは異次元への入口である」というネタを堂々と持ってくる展開が、逆に軽く驚きでした。
リリパット国に漂着してから先は、もう安心して観ていられますね。映像的には文句の付けどころもない。
ファミリー向けなのでJBにしては下品なネタも少ないか。唯一、火事をオシッコでチン火するという場面が下ネタであるが、実は原作に忠実だったらしい。スウィフト先生、やるな。
自分に自信が持てなかったガリバーも、小人相手ならホラ吹きまくりで、すっかりヒーロー扱いされ有頂天である。お気楽ですなあ。
二〇世紀フォックス製作の映画なので、『スターウォーズ』や『タイタニック』のパロディが笑える。自分の半生を過去の大作映画ネタのつなぎ合わせで説明し、リリパット達から感心されるという展開は、小さな子供には判らないのではと心配ですが。
映画ファンなら笑えるのですがね。
やはり「私はお前の父だ」でリリパット達にどよめきが走るという描写は笑える。このネタはもう至る処で使われていますが。お約束なんだねえ(笑)。
しかし背景を現代にした所為で、設定に整合性が取れなくなった部分があるような。
ガリバーのリクエストに応じてリリパット達が便宜を図ってやる。家を作り、家具を用意してあげる。リリパットは優れた大工であるという設定そのままなのですが、どう見ても電化製品まで再現している。
リリパット国は中世ヨーロッパ風の文化なのだが、電気を知っているのか。
その割に、ガリバー用のゲーム機は人力で再現しているが……。
隣国と交戦状態にあり、防衛装置が領海を警備しているという描写もある。ガリバーが漂着する以前から、優れたメカニックを作り出しているのに、街中の様子は中世のまま。なんか世界観が矛盾していますよ?
そこはスルーしてあげるのが大人ですか。そうですか。
対ガリバー用の巨大ロボットも、ネタとしては面白いのですが……。
設計図を見ただけで巨大ロボまで作れるくせに、大砲を積んだ帆船で攻めてくるとか。
ガリバーのメタボ腹が大砲の弾を跳ね返す、という描写がある割に、最初の頃はエドワード将軍(クリス・オダウド)の槍がガリバーのスニーカーを貫いて足を突き刺していたり。
細かいところにツッコミ処が散見されるので、あまり脚本は丁寧ではない感じがしました。むしろネタ先行でイキオイのままに物語を転がしている。
このあたりは波長の合う人には気にならない部分なのでしょう。
色々あって隣国の巨大ロボとの戦闘で完敗するガリバー。
見栄を張って吹きまくったホラが露見し、ヘタレであることがバレて追放の憂き目に遭う。どこへ追放されるのか。「忌み嫌われ島」なんて原作にあったかしら。
忌み嫌われ島に流されたガリバーは、巨人の女の子に捕まってしまうのであった。
うわ。第一話だけかと思っていたら、第二話もちょっと混じっていたのか!
しかしリリパット国の描写には心血注いだのに、ブロブディンナグ国の描写は手抜きでしょう。そこまでやったら尺が足りなくなるのは判りますがね。
巨人の女の子の家で、巨大なドールハウスに放り込まれ、「生きた着せ替え人形」として弄ばれるガリバー。JBのドレス姿が笑える。
すっかり無気力になり、お人形さんな生活に甘んじていると、親友となったリリパットの友人(ジェイソン・シーゲル)が迎えに来てくれる。ガリバー追放後の、占領状態なリリパット国の窮状を訴える。
ここで遂にヘタレのガリバーが一念発起して立ち上がる。
この映画は、設定はネタ先行型ですが、キャラの描写はきちんとしていますね。ベタでもパターンでも、守るべき展開をちゃんと踏襲しているのがイイです。
勇気を持って立ち直ったガリバーは、巨大ロボとの再戦に勝利。
そして「戦争なんてくだらないぜ。俺の歌を聴けえッ」とばかりに、反戦歌をロック調にアレンジして歌って踊るJB。かくして平和が訪れる。JBは熱気バサラか(笑)。
NYに帰還した後の生活の一変ぶりもハッピーエンドとしてはお約束でしょう。
総じて楽しい映画ではありました。
ところで、私が観たのは日本語吹替版でした。JBの声は高木渉。JBの吹替担当声優は何人もいるみたいですが、私は別に高木渉でフィックスされても特に問題ないと思いますねえ。
『愛しのローズマリー』や『僕らのミライへ逆回転』でも高木渉でしたし。
出来れば『カンフー・パンダ』も高木渉で吹替をやり直してもらいたいくらいで(笑)。
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