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2012年8月14日火曜日

アベンジャーズ (3D)

(AVENGERS)

 遂にマーベル映画の集大成プロジェクト『アベンジャーズ』が実現しました。まさに真打ち登場。
 ユマ・サーマンやレイフ・ファインズ、ショーン・コネリーが出演した同名の作品(1998年)もありますが、今後はあちらは肩身の狭い思いをするんですかね(だから邦題は『おしゃれ マル秘 探偵』にしておけば良かったのに)。
 『アイアンマン』(2008年)から苦節四年。『インクレディブル・ハルク』(同年)、『アイアンマン2』(2010年)、『マイティ・ソー』(2011年)、『キャプテン・アメリカ』(同年)と追い続けてきた甲斐がありました。当初は半信半疑でしたが、本当に実現しました。素晴らしいです。

 本作では〈アベンジャーズ〉を構成するヒーロー達は全部で六人。当然、各キャラを演じた俳優さん達もほぼ皆勤賞。
 ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・ヘムズワース、クリス・エヴァンス、ジェレミー・レナー、スカーレット・ヨハンソン。只一人、バナー博士(ハルク)役だけは、エドワード・ノートンではなく、マーク・ラファロに変わってしまいましたが、それだけで済んで良かったと云うべきなのか。
 マーク・ラファロというと『ブラインドネス』(2008年)とか『キッズ・オール・ライト』(2010年)でお見かけしております。悪くない配役ではありますが、個人的にはエドワード・ノートン版のハルクが一番好きデス。結局、ハルクは映画に出る度に別人になっておるわけですが(エリック・バナも演じたことがありますし)、ハルクの声は元祖であるルー・フェリグノなので、まぁいいか。

 主役だけに留まらず周辺の人物も、そのままなのがいいデスね。
 まずは〈シールド〉長官ニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソン、コールソン捜査官役のクラーク・グレッグ、セルヴィグ教授役のステラン・スカルスガルド、ペッパー・ポッツ役のグウィネス・パルトロウも再登場とは実に嬉しい。ジェーン・フォスター役のナタリー・ポートマンまで写真で登場しております。
 当然、悪役もそのまま続投で、本作ではロキ役のトム・ヒデルストンも登場です。
 あれ、今回レッドスカルは出番無しか。ヒューゴ・ウィーヴィングも登場して戴きたかったが、ロキとは性格的に合いませんかね。

 マーベル・コミックスの愛読者としては、今回〈シールド〉の移動基地ヘリキャリアまで登場してくれますし(あれで空を飛ぶと云うのが強引ですが)、同時にさりげなく副長のマリア・ヒルも登場してくれたのも嬉しい。今回、ヒル副長を演じるのはコビー・スマルダーズ。原作コミックスによく似せて役作りしてくれているのが楽しいです。
 よし、これでサミュエル・L・ジャクソンに何かあっても、〈シールド〉は大丈夫(原作では一時期、ニック・フューリーは失踪することになっている)。
 カメオ出演皆勤賞のスタン・リー御大もご健在で何よりです。ラスト近くの街頭インタビューを受ける爺ちゃんの役でしたが、今回は出番無しか見落としたのかと思っていた頃に顔見せしてくれました。

 本作は最初からオールスターキャストなお祭り映画が前提ですので、実に賑やかです。
 物語自体はシンプルですが、各キャラクターの見せ場があるのは当然として、顔を合わせるキャラクターの組み合わせが色々考えられていて、ファンが見たい場面を可能な限り実現しようと頑張っているのが見受けられます。そりゃもう、これだけのヒーローが一堂に会せば、最初から意気投合なんぞせずにいがみ合ってもらわねば困ります(我の強い人たちばかりですしねえ)。
 おかげで敵であるロキと戦うだけで無く、味方同士でも激突してくれます。実はそちらの方が観たいですものね。「ソーvsアイアンマン」、「ハルクvsソー」、「ホークvsウィドウ」等々。顔合わせの場面でも、スティーブ(キャップ)とトニー(アイアンマン)は馬が合いそうに無かったり、そうでなくちゃ面白くない。
 演じている役者さんも、クライマックスの戦闘シーンよりも、いがみ合いのシーンの方が楽しそうです。やはりクリス・エヴァンスとロバート・ダウニー・Jr.がいいですね。
 でも本作で一番、おいしい役はクラーク・グレッグ演じるコールソン捜査官だと思います(笑)。

 冒頭から、異世界アスガルドから失われ、レッドスカルが悪用しようとしたコズミック・キューブが登場。今はキューブは〈シールド〉の所有するところとなり、秘密の研究施設でセルヴィッグ教授による解析が行われていた。
 そこへアスガルドから去ったロキが現れ、キューブを強奪。ついでにセルヴィッグ教授と護衛のホークアイも洗脳して下僕にしてしまう。
 追いすがるフューリー長官の健闘も虚しく、ロキ一味は遁走。世界に危機が訪れる──と云うところで、タイトル。結構、長いアバンタイトルです。

 監督はジョス・ウィードン。主に脚本の仕事の方が多かったようですが、『トイ・ストーリー』(1996年)の脚本ではアカデミー賞脚本賞にノミネートされておりますし、SF者としては、監督・脚本を務めた映画版『セレニティー』(2006年)でヒューゴー賞、ネビュラ賞のダブルクラウンに輝いた猛者であると聞けば、腕は確かだと信頼できるでしょう。
 何より、本作のコンセプトとして『七人の侍』(1954年)と『特攻大作戦』(1967年)を挙げているのが「判っている人」です(笑)。
 即ち、目前に迫った危機に際して、ヒーロー達をかき集め、結集させて、対応しようと云う趣向。だから物語のかなりの部分が、メンバー集めと、集めたメンバーが目的意識を持って団結するまでの描写に費やされています。
 一度、団結してしまえば、あとはド派手な戦闘シーンあるのみ。安心して観ていられます。
 アラン・シルベストリの音楽もドラマを盛り上げてくれるし、血湧き肉躍るアクション大作としてまとまっております。
 「これが映画だ!」と云うキャッチコピーもあながち間違いでは無いデス。

 それにしても実に個性豊かなメンバーです。
 実力的にはソーとハルクが双璧ですかね。ソーは神様ですし(雷神だもの)、ハルクはデタラメに強い(相手が神様でも容赦無し)。
 次いでアイアンマンか。豊富なハイテク兵装に加えて、超リッチなセレブですし。
 残り半分がフツーの人というのが実は凄いところで、キャップにしても、ホークアイにしても、ブラックウィドウにしても、鍛えた肉体と優れた体術のみで敵に立ち向かっている。
 そしてチームの指揮はキャップが執るという描写がいいですね。ソーも、ハルクも、アイアンマンも、唯我独尊でワンマンな連中ですから、これをまとめて団結させるにはキャップの指揮官としての能力に頼るほかない(只一人の軍人ですし)。

 実はキャップの特殊能力は、自分自身の攻撃力にあるのでは無く、人々をまとめるリーダーシップにこそあるという描写が素晴らしいです。初対面の警官達も、有無を云わさずまとめてしまうし。
 キャップこそがチームの心臓であり、ハートである。さすがマーベルコミッス随一の高潔な魂の持ち主。そこのところをもうちょい詳しく描いて戴きたかったです。
 実はソーの持つハンマーは自らの持ち主を選ぶという設定があり、本作でもハルクが拾おうとしてビクともしなかったという場面があります。何しろやさぐれているうちは持ち主本人でも持ち上げられなかった代物ですから。
 原作コミックスでは、ソー以外にこのハンマーを持てるのはキャップだけだそうな。このあたりも描いてもらえると嬉しかったのですが。
 それに〈アベンジャーズ〉と云えば、キャップの決め台詞があるのですが、本作では結成したてだからか、いつもの台詞が無かったのが残念デス。
 続編では、是非とも云って戴きたい。「アベンジャーズ、アセンブル!」と。

 本作でもうひとり目立っているのが、ジェレミー・レナー演じるホークアイです。もう彼を主役にスピンオフ作品を一本作ってもらいたいです(そのときはスカーレット・ヨハンセンも一緒にね)。
 序盤から洗脳されちゃって敵に回ってしまいますが、おかげで見せ場が増えました。弓矢しか使わないアナクロな人ですが、矢一本でヘリキャリアが墜落しかけたり、ジェレミー・レナーのキビキビした身のこなしは観ていて惚れ惚れします。
 もう百発百中は当たり前。遂には的を見ないでも命中させる「ガン=カタ撃ち」まで披露してくれる。

 〈シールド〉も単なる正義の組織と云うワケではなく、割と後ろ暗いこともしていたり──コズミックキューブの利用は、異世界アスガルドからの侵攻に対抗する為の兵器開発だった──、長官の上に更に上位の意思決定機関〈委員会〉が存在しているのが現代的な演出ですね。
 ニック・フューリーが〈アベンジャーズ〉結成のプランを〈委員会〉に説明する場面は、何となく『ヱヴァンゲリヲン』の碇司令とゼーレのようでもあります(これもまたジャパニメーションの影響なのかしら)。

 結局、アスガルドからの侵攻は無くても、ロキの手引きにより地球を狙う他の勢力が外宇宙から攻めてくる。チタウリと名乗るエイリアン軍団によってNYはかなり損害を被るのですが、〈アベンジャーズ〉の活躍によって被害は最小限でくい止められる。
 よく考えれば、それほどスケールが大きいとは云えないものの──大都市ひとつがちょっと壊れたくらいだし──戦闘シーンそのものは、なかなかスピーディで迫力ありました。
 敵の母艦もチラリと登場しましたが、外宇宙との超空間ゲートが閉じてしまったので、攻めてこられなかったし。母艦がダメージ食らってゲートが閉じたら、チタウリ兵団が停止する(ロボット兵だったのか)と云うのもお約束ですねえ。

 更に一件落着後、続編を匂わすシーンが付いてくるのもお約束ですね。
 それにつけてもレッド・スカルさんは出番無しでしたねえ。キューブに触れて消え失せてから、どこへ行ってしまわれたのか。『アベンジャーズ2』までには戻ってきてもらいたいです。
 長々と続くエンドクレジット後のお楽しみは本作に於いても健在デスので、くれぐれも途中で席をお立ちになりませぬよう。
 ある意味、本作中で一番おかしな場面が最後の最後にやってきます。実にシュールですわ。

 この先もマーベル映画は続々と制作されていくようで、上映終了後に即座に『アイアンマン3』の予告まで入りましたね(映像まではなかったが)。
 いずれ『アベンジャーズ2』も製作されることでしょうが、その際には他のマーベル・ヒーロー達ともコラボして戴きたいものです。スパイダーマンや、X-MEN、デアデビル、ゴーストライダー、パニッシャー、他にもいろいろ(出演交渉とか難しいでしょうけど)。
 特にロバート・ダウニー・Jr.とパトリック・スチュワートのツーショットが見てみたいです。ヒュー・ジャックマンもお願いします。
 また、個人的には〈アベンジャーズ〉ならば、『アントマン』も映画化してもらいたいし、何よりマーベル・コミックスの一大イベントである「シビル・ウォー」まで映画化してもらえぬものかと思うのデスが、どうでしょうねえ。




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