2011年5月1日日曜日

キッズ・オールライト

(THE KIDS ARE ALL RIGHT)

 低予算ながらアカデミー作品賞にノミネートされ、サンダンスやベルリン等の映画祭でも受賞しまくっておりますな。ゴールデン・グローブ賞でもミュージカル&コメディ部門で受賞。
 ミュージカルではあり得ないが、さりとてコメディかと訊かれるとビミョーですね。
 同性愛一家の家族の絆を描くハートウォーミング・コメディ……なのかな。
 爆笑するようなコメディではないです。「奇妙なホームドラマ」であるとは云えるが。

 最近のハリウッドはホモセクシャルやらレズビアンやらゲイな世界を描くのも一般的になりましたデスね。この映画も、描かれる家庭がたまたまレズビアン夫婦の家庭だったと云うだけで、特にエロい描写はない。
 そもそも主役のレズ・カップルがアネット・ベニングとジュリアン・ムーアですからな。中年女性の同性愛夫婦。あまり夜の営みの方は観たくない(汗)。一応、そういう描写はあるがこの部分はコメディ・タッチでした。

 監督・脚本のリサ・チョロデンコ自身もレズビアンだそうで、淡々とした演出ながらリアルな描写は巧いデス。惜しくもアカデミー監督賞候補からは外れたものの、脚本賞の方でノミネート。
 アネット・ベニングが主演女優賞候補にもなりました。
 マーク・ラファロも助演男優賞で初ノミネート。
 でもジュリアン・ムーアは……何も無し。片手落ちではないか。

 同性愛夫婦のアネット・ベニングとジュリアン・ムーアに、精子提供者であるマーク・ラファロが絡む三人のドラマなのだし、三者三様に素晴らしい演技を見せてくれるのだから、ジュリアンもノミネートしてあげて欲しかった。
 先にそういったアカデミー賞に関する予備知識が先行していたので、ちょっと偏った見方になったが、観終わった後はジュリアンがノミネートされなかったことが不思議でした。
 三人ともそれぞれに良かったのになあ。
 まあ、結局はノミネートされたが、全てオスカーは逸してしまいましたけど。

 一方、二人の子供達の方は、姉の役がミア・ワシコウスカ。ティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)でアリスを演じましたが、バリバリCG映画なときとは印象が違いますねえ。一般家庭の女子高生役なので、実に地味です。素がそう云う人なのか。
 弟役がジョシュ・ハッチャーソン。『ザスーラ』(2005年)で、お兄ちゃんの役だった彼か。子役は育つのが早い。なんか別人ぽい(笑)。

 お姉ちゃん役のミアは高校を卒業して、大学での寮生活が待っている時期である。既に一八歳となっている。即ち、精子バンクに申請すれば、自分たちの精子提供者について情報を開示してもらえる年齢に達している。
 弟はまだ一五歳であるが、姉をそそのかして情報開示の申請を出させる。

 そもそもコレが間違いの元というか。お姉ちゃんの方は別に知りたくもなかったのに、弟にせがまれて開示申請してしまう。元凶はこの弟にあるワケですね。
 家庭に要らぬ波風立てやがって。

 そんなわけでお気楽な独身貴族──それなりにセフレな恋人もいる──で、そこそこ商売の方も順調なマーク・ラファロの生活と、この家族との生活が交錯することからドラマが展開していくのですが……。
 四十路野郎が、突然ティーンエイジな子供がいるんデスなどと打ち明けられたら、そりゃ面食らうわな。そして子供の親であるアネットとジュリアンにとっても心穏やかであろう筈もない。
 なかなかビミョーな心理から生じるドラマが面白いデス。
 悪人などひとりも登場しないのがいい。人それぞれに相手のことを気遣いもし、愛しているのに、ちょっとした優先順位の差異や、我を張ることもあって、関係がこじれたりする。

 アネットとジュリアンの夫婦関係は当然として、劇中ではジュリアンとマークが図らずも不倫してしまう展開になる。この不倫発覚が最大の山場なワケですが、アネットとマークの関係の描写もなかなか興味深く、巧い脚本だと思いました。
 さすが脚本賞の方でノミネートされるだけのことはあるわ。

 結局、家庭に波風立ったが一件落着するのですが。
 お姉ちゃんは大学での新生活に一歩踏み出し、二人のママの関係も修復され、弟はママ達の幸せそうな様子を確認して笑みを浮かべる。おしまい。

 うーむ。なんかこのラストには、違和感を感じてしまう。
 つまり、マークの方にフォローが無いのですよ。
 不倫してしまったことから、それまで考えもしなかった「自分の家庭」と云うものに夢を描いてしまい、セフレとの関係も清算し、身辺を整理した上で家庭取得に臨もうとして……最終的には拒絶される。
 アネットから実に厳しい言葉を投げつけられたりして。

 「自分の家庭が欲しければ自分で作りなさい!」

 そりゃ、マークの行為は他人の家庭を乗っ取ろうとしたようにも見えますがね……。おまけに二人の子供達からも軽蔑の眼差しを向けられたりして、いいところなし。所詮、精子提供者はパパではないと云うことか。
 しかし事の発端は弟の好奇心であり、マークは状況に対応しているうちに破局を迎えてしまうだけなのでは。彼だけは以前より状況が悪くなってドラマが終わっている。そんな。可哀想じゃないか。
 マークに一体、何の罪があるというのだッ。何故、弟は天誅を喰らわぬ。反省も無しか。

 可哀想と云えば、もう一人、犠牲者がいましたな。
 造園業を営むジュリアンが雇ったおじさん。ルイスという名前だったか。明らかにメキシコ系の労働者といった風情。人の良さそうなおじさんで、特に悪いことは何もしていないのに……。
 彼は突然、ジュリアンに解雇されてしまうのです。
 ジュリアンがマークの家の庭を造園する仕事を請け負ったことから、不倫関係が生じてしまい、造園デザインの打ち合わせと称して、家の中にこもってヤッてしまうのである(何度もな)。
 二人が不倫に励んでいる間に、ルイスおじさんは肥料の買い出しやら庭石の設置やら、せっせと働いている。彼に非はないのである。勤勉な労働者なのである。
 それなのにジュリアンは不倫しているという罪悪感からか、ルイスおじさんの笑顔が気に入らない。何か見透かされているような気がするのであろう。
 自分たちの秘密に感づいているのではないかと、不安になる気持ちは理解できますがね。
 しかしそれで突然、解雇だなんて言語道断な仕打ちじゃありませんか。不当解雇だッ。
 しかもマーク以上にフォロー無し。そりゃあんまりだ。
 ルイスおじさんが一体、ナニをしたと云うのだ。別にノゾキをしていたワケでもなく、秘密に感づいていたかも知れないが、それをネタに脅迫するとか云い触らすといった行為に及んだワケでもない。しかし解雇。以後の出番なし。

 どうにも監督の男性キャラに対するフォロー意識の低さが気になってしまい、素直に感動のドラマだったとは云えませぬ。やっぱりレズビアンな監督だからか。男なんてどうでもいいと思っていやがるのか。
 子供達は大丈夫かも知れぬが、男達は全然、大丈夫じゃありません(泣)。


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