2011年4月30日土曜日

少年マイロの火星冒険記 (3D)

(MARS NEEDS MOMS)

 ロバート・ゼメキスはもう、すっかりアニメ監督になってしまいましたね。しかも作風はパフォーマンス・キャプチャーを使ったCGアニメばかり。好きなんだねえ。
 これも『ベオウルフ/呪われし勇者』(2007年)なんかと同じですが、『モンスター・ハウス』(2006年)と同様、自分は製作に回って監督は別の人に任せていますね。今回の監督はサイモン・ウェルズですか。
 あのH.G.ウェルズの子孫で、リメイク版『タイムマシン』(2002年)の監督か。
 そうと判ると、なんとなくネタが御先祖様の作品から拝借しているようなところがあります。脚本もこの人ですからねえ。

 ウェルズだから「火星」──と云うワケではなく、どちらかと云うと前作『タイムマシン』と同じネタ。未来人がエロイとモーロックに分化したように、火星人もそのような階級差から来る分化が進んでいるという設定が。
 この設定、気に入っているのかしら。

 しかし火星に人類の探査機が到達する現代でも、堂々と「火星人は存在する」とブチかます度胸が素敵です。もはや「火星人」とはSFではなくて、ファンタジーの設定なのか。

 冒頭、火星の地表をNASAの探査機が走り回っている。赤く広がる荒野。生命の痕跡もない……と思ったら、実は地下深くに壮大な都市を築いて火星人達は生活していたのであった(笑)。
 地球人が火星を探査しているように、火星人も地球を探査していた。それも遥かに高度な方法で詳細に。軌道上から一気に地球の住宅街をズームしながら、火星人達は何かを探している。ナニを探しているのか。

 火星人達は「火星語」を話すので、言葉の意味は判らないが、何をしているのか大体は判る。スクリーンに映るのは様々な地球人の「母親」の様子である。
 どうも「ある条件に合致する母親」を探しているらしい。と、遂に理想の対象を発見したらしく、更にカメラはズームして……。
 そして物語は主人公マイロくんがママから小言を食らっている場面へとつながる。判りやすい演出ですね。

 パパが出張中に些細なことからママとケンカしたマイロ少年は激しく後悔していた。暴言吐いてママを泣かせたことで寝付けず、やはり謝ろうと起きた時……。
 ドア下の隙間から強烈な光が差し込む演出はスピルバーグ直伝ですなあ。
 気が付くとママは掠われ、空き地に着陸していた宇宙船に乗せられようとしていた。マイロ少年は必至に追いすがり、発進する宇宙船に密航し……。

 手堅くスピーディな展開です。尺も短めだし。
 宇宙船がワープする場面も、特に説明なし。もはやSF映画の常識的描写となりました。
 火星到着後の、低重力下でのキャラの動きもリアルです。こういう定番設定をきちんと映像化してくれるのがSF者としては嬉しいデス。

 実は火星人は女性ばかりで、子育ては育児ロボットに任せていた。そして育児ロボのソフトウェアのアップデートに、地球人を利用していたのである。定期的に「子育ての上手そうな」地球人を拉致し、その脳から行動パターンを記憶と共に抽出して、育児ロボにインストールする。
 こっちの方が手間が掛かりそうであるが、いちいちプログラミングするより早いのか。
 問題は記憶を抽出された対象は、肉体的に分解されてしまうと云う点で……。

 記憶抽出装置の作動まで6時間あまり。果たしてマイロくんはママを救出し、無事に地球に帰還できるのか。

 マイロ少年は設定上は九歳ですが、パフォーマンス・キャプチャーのモデルとなったのはセス・グリーン(三七歳!)。もはや役者の年齢などあって無きが如しですな。この人は『オースティン・パワーズ』でDr.イーブルの息子役でしたか。
 役者の年齢、体型すら軽々と変更し、火星人の逆間接脚も容易く映像化するシステムとは、ゼメキスが惚れ込むのも判りますね。セットも衣装も必要無い。制作費は節約できるのだろうが、俳優は大変だろうに。
 しかし撮影は脚本数ページ分を一気に撮影できるそうなので、舞台役者を起用すると割と巧くいくらしい。へえ。

 ファミリー向け映画なので、SFとしては所謂ジュブナイルに分類されるのか。ヤングアダルトと云う呼び名も古いか。ライトノベルではちょっと違うか。
 とにかく多少無理っぽい設定をサラっと流してしまうあたり、如何なものかと思うのですが、こういうツッコミは野暮か。
 そもそもエイリアンが「火星人」である時点で御意見無用か。

 しかし火星人の赤ん坊が「植物のように地面から生えてくる」というのはどういう理屈なのだ。それでは性別など必要無いのでは。
 種族として分化しつつある「毛むくじゃら族」が、実は男性ばかりで、古代火星文明はちゃんと男女両性がそろって健全な家族を営んでいたという設定もあるのに。
 生まれた赤ん坊は女の子のみ残され、男の子は遺棄されて「毛むくじゃら族」になると云うが、この生殖の仕組みがよく判りませんでした。どうでもいいことデスか。

 しかし火星人の総統がこんないびつな社会を作った原因というのが、「男は家事も手伝いもしないで遊んでばかりだった」からと云うのが、実に地球人ぽい理由ですな。いずこの星も同じなのか(笑)。
 育児に追われて自分の時間が持てないことにキレた女性が、男を追放し、育児はロボットに任せるという社会を作り上げたのだった。なかなか風刺の効いた設定ではありますが、SFとはちょっと違うような……。
 まあ、御先祖様と同様に「科学ロマンス」とでも呼べばいいのかしら。

 ゼメキスの趣味も幾つか反映されていて、火星人が地球のTV番組から言葉を覚えるという設定もあります。おかげでなかなか面白いエイリアンになりました。

 まあ、少年が主人公のSFアドベンチャー映画としては、巧く出来ているし、それなりに感動的です。どことなく昔懐かしい感じがするのが、ゼメキス流なのか。

 エンドクレジットを流しながら、映画のメイキング風景を見せてくれるのも興味深い。
 この映画はもう、撮影時にはセットも衣装もないのである(パフォーマンス・キャプチャーなんだから当然か)。
 体育館みたいなところにマットを敷いて、ワイヤーで役者を吊したりしながら撮影している。役者も体や顔にまでマーカーを付けながら演じている。
 先に本編を観ておかないと、どんな場面を撮影しているのかさっぱり判らないですわ(笑)。




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