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2010年4月9日金曜日

シャッターアイランド

(SHUTTER ISLAND)

 本筋に入る前に、配役の面から先に書きましょう。
 レオナルド・ディカプリオ(以下、デカプー)もだんだん渋い役者になってきました。もうイメメンだけの俳優ではないね。
 個人的には、ベン・キングズレーよりも、マックス・フォン・シドーが共演していたのが興味深いです。御老体もまだまだ健在のようで何よりです。
 他にはマーク・ラファロとか、ジャッキー・アール・ヘイリーが出ていました。
 マーク・ラファロと云うと『ブラインドネス』を思い出します。
 ジャッキー・アール・ヘイリーは『ウォッチメン』のロールシャハ役が印象深い。次回作はリメイク版『エルム街の悪夢』のフレディ役だし。ジャッキーは最近、売れているようですねえ。本作でも出番が少ないとは云え、印象的な役でした。よしよし。

 さて……。
 上映が始まる前から、くどいくらいに結末は人に話さないで、と念押しされます。
 困った。
 何をどう書いてもネタばらしになりそうな気がする。
 観客を騙しますよと、前もってお断りしているミステリですが……。

 「映画を観て気持ちよく騙される快感」というのは確かにあります。先日の『アフタースクール』なんてのは、その典型でしょう。あるいは『ソウ』とかね。
 逆にツッコミ入れたくなる映画もあります。
 実はこうでした──って、待てやコラ! となる映画で、経験的に『アイデンティティ』とか『サイレン』がこっちの部類。
 で、この『シャッターアイランド』は……。
 残念ながら、後者のカテゴリに入ると云わざるを得ません。まぁ、『アイデンティティ』ほど悪質ではありませぬが。

 エラリー・クィーンの推理小説が見事なのは、手がかりをすべて読者に開示した上で、謎解きを行うことです。よって完全に客観的な描写が前提になる。
 客観的な観察だと思っていたものが、実は間違っていました──と云うのは、よほど巧くやらないと墓穴を掘ると思いマス。
 やはり『アフタースクール』が優れているのは、その点でしょう。
 観客のミスリードが巧みな映画ほど、欺されて気持ちよいミステリはありません。

 で、この『シャッターアイランド』は、その意味に於いてミステリとしては反則であると思うのですが、如何なものでしょうか。
 まぁ、私も『アイデンティティ』でイタい目を見たので、今度は途中で気が付きましたともさ。

 ひょっとしてデカプー、お前の主観が間違っているのか?

 ──と、思い始めてからは全てが疑惑的になってしまい、ナニが現実でナニが妄想なのか区別を付けるのが難しい。と云うか、反則であるのはこの点でして、解決時に「あれは妄想でした。現実はこっち」と云われてしまうと、観ている側としては非常に面白くないのですよ。
 これではデカプーの回想シーンにすべて疑惑の目が向いてしまい、第二次大戦に従軍した際の忌まわしい記憶自体も妄想であるとも解釈できてしまい、確かなものが何もなくなってしまいます。

 二度観れば判る、とも云われております。確かにバリバリに伏線を張っていたのは判りますよ。
 でもわざわざ確認したくなるような気にもならないのでは意味ないでしょうに。

 原作はあの『ミスティック・リバー』のデニス・ルヘインですね。
 鑑賞後のやるせない感と云うか、独特の雰囲気は確かにこの作品にも受け継がれておりました。
 その点では、ラストシーンのデカプーの演技はなかなか良かったです。

 映像作家としてのスコセッシの腕も確かで、全体の雰囲気は悪くありません。。
 でもこれが「驚愕のミステリ」であるとは云いたくないデス。
 人間ドラマとしては、悪くないとは思いますが……。作り方を間違えています。原作小説の方はどうなんですかね。




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