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2010年7月1日木曜日

エルム街の悪夢

(A NIGHTMARE ON ELM STREET)

 不死鳥の如く蘇った俳優──と云うと、ミッキー・ロークの他にもいましたね。一五年のブランクを経て復活したジャッキー・アール・ヘイリー。
 かつてジャッキーはとある低予算ホラー映画で殺される若者役のオーディションに落ちた。何故かジャッキーの付き添いについてきた友人のジョニー・デップの方が受かってしまう。それが『エルム街の悪夢』。
 そして復活したジャッキーが今度はフレディ役に。なにやら因縁を感じますな。

 しかし復活以降のメジャー作品というと『ウォッチメン』とか『シャッターアイランド』。覆面のヒーローだったり、暗い独房の中でシルエットしか見えなかったりで、なかなか素顔で登場してくれません。
 当然ですが、今度もまた特殊メイクバリバリです。

 近年、八〇年代のホラーの名作が次々にリメイクされておりますな。製作後二〇年でリメイクというのは早いような気もするのですが……。
 製作のマイケル・ベイは昨年の『13日の金曜日』でも前科があるヤツですが、性懲りもなくまたやりやがった。
 しかし、これは『13金』のリメイクほど酷くはありませんでした。監督に起用されたサミュエル・ベイヤーの手腕でしょうか。長くCMの監督だった人の映像センスは信用出来ますね。
 基本に忠実かつ丁寧に制作されていると感じました。俺的評価はまあまあ。

 どうしてもオリジナル版と比較してしまうのデスが、一長一短あるのはどうしようもないか。
 まず特撮が格段に向上している。そりゃそうだ。向上していなきゃ嘘だ。フレディが出現する場面は、CGも使用してダイナミックですよ。
 オリジナル版では説明不足だった箇所も補っている。特に生前のフレディが焼き殺されるという具体的な場面を追加してくれたのは判りやすくてよいと思います。
 フレディ焼死の場面は、TVシリーズ化までされた際に、初めて映像化された筈ですが、今回は最初から物語に組み込まれています。
 ここだけはジャッキーも素顔だし(笑)。

 しかしそこまできちんと映像化してしまうと、他にも説明が欲しくなります。贅沢ですか。
 説明不足──と云うか、お約束だから今更いいでしょ的な理由については、敢えてスルーしています。即ち「何故、フレディは夢の中に現れるのか」。
 あまりにも基本でありすぎるし、観客の大多数も「そういうものだから」という前提で観ているので、説明はない。とにかく恨みを呑んで殺されたフレディは死後、夢の中に現れる悪霊と化す──というのが基本なので、敢えてリメイク版でも説明はない。

 比喩として判りやすかったのは「ハーメルンの笛吹き」ね。大人達に恨みがあるなら、直接本人に復讐すればよいようなものだが、敢えてその子供達を殺していく、というのが「ハーメルン的復讐」なのだという解釈も判りやすいデス。
 特に今回、生前のフレディは幼児性愛者だったという設定なので、子供がティーンエイジにまで成長しちゃったら、もう用無しなのね。

 フレディのシンボルであるナイフ爪には一応の説明らしき場面がありました。
 何故、あの殺し方なのか。生前の本職は幼稚園に住み込みの保育士兼庭師だったという設定なので、ガーデニング道具で花壇を作っている場面がチラっとあり、それがグレードアップしてナイフ爪になったと云う解釈であるようです。
 まぁ、説明ばかりだと面白くないし、そもそも大人気シリーズだから一見さんお断りでも良し。
 総じて判りやすく、かつ映像的にもチープな部分はありません。
 でも物語が破綻しない分、オリジナル版に忠実すぎるのが物足りないと云えば贅沢でしょうか。最新の脳科学による理論武装も充実。
 編集のセンスも見事で、「いつの間にか夢の中にいて、どこをどう通っても不気味なボイラー室に辿り着く」という演出は前作以上に感じました。
 シリーズ化で性格がファンキーになっていった反省から、今回のフレディはダークでハード。

 うーむ。実は一番不満な部分にはあまり触れたくありません。
 私はジャッキー・アール・ヘイリーが好きなので。
 何が嫌かと云って、やっぱりフレディ・クルーガーはロバート・イングランドが演じていたのが良かったのに、と思ってしまったことなのデス。ううう。
 しかもこれはジャッキーの演技とは関係ない部分なのが、尚のこと悔しい。
 特殊メイクの好みによるものなので、如何ともし難いのです。
 あの特殊メイクの所為で、昔のロバート・イングランドのフレディの方が精悍でカッコ良かったと思ってしまうのデス。ジャッキーのフレディは……実はあまり見たくない。

 演出上、そのほとんどの場面でフレディはシルエット。帽子も被っているので、なかなか焼けただれた素顔は見せない。それはいい。
 でも、やはりラスト近くなると、堂々とアップになってしまうのデス。
 これは特殊メイクのアーティストの方針によるものなのか。
 フレディの顔が妙にのっぺりしている様に感じられてならないのデス。焼死したワケだから、ケロイドもあり、皮膚はひきつれ、異様な面相ではあります。
 しかしナンと云うか……ちょっと「溶けて流れた」感が強くて、あまり怖くなかった。
 奇妙なことに私は、この新生フレディの顔が「子犬に似ている」などと思ってしまったのデス。
 希代の殺人鬼フレディ・クルーガーがッ。あろうことか「ちょっとワンちゃんみたい」な顔になっているッ。
 こんな印象は俺だけなのでしょうか? 是非、そうであってほしい。
 うーむ。DVDで見直せば印象が変わるのでしょうか。

 あの特殊メイクのまま続編を製作するのは……勘弁して下さい(泣)。




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