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2010年6月30日水曜日

ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション

(Universal Soldier : A New Beginning)

 ベルギーの輝ける星、ベルギーの人間国宝ジャン=クロード・ヴァン・ダムの新作ですよ。昨年の『その男ヴァン・ダム』以来か。待ってました。
 遂にヴァン・ダムもジョン・トラボルタのように、ミッキー・ロークのように、返り咲くときが──来たのだろうか。
 ……ビミョー。

 ところで監督の名前がジョン・ハイアムズ。
 あの職人監督ピーター・ハイアムズの息子ですか。既にドキュメンタリー作品を数本、監督しているそうです。主に格闘技関連のドキュメンタリー作品というあたりが、何となく納得です。
 初のエンタテイメント作品らしいけど、限りなく格闘技がメインな作品デス(笑)。

 さて、親父のピーター・ハイアムズはと云うと、撮影監督に納まっている。
 まるで「儂は撮影に専念するから、息子よ雑事は頼むぞ」とでも云いたげな様子ですな。
 職人監督のいいところは、必ずある程度の品質が保証されるところでありましょう。大傑作は無いかも知れないが、滅茶苦茶な失敗作もない。あの天才キューブリック監督作品の続編 『2010年』だって、きちんと撮りましたしね。
 加えてヴァン・ダムとも『タイム・コップ』と『サドン・デス』以来、三度目の顔合わせ。

 で、この『ユニバーサル・ソルジャー』の新作(シリーズ第三弾)ですが。
 さすが職人。フツーなら出来んよなあ。
 と云うか、フツーの監督はこんな企画を引き受けたりはしないでしょう。依頼されたら己の好き嫌いは置いといて、期待以上の仕事をこなす職人ならではの出来映えですわ。

 私の勝手な想像ですが──。
 映画会社のプロデューサーが仕事を持ちかけてきたとしましょう。
 ここでロケをする。使える撮影機材はこれ。脚本はこれ。起用する俳優はこの人たち。予算はこれだけしかない。じゃあ頑張ってね。
 さて、どうしたものか。

 この映画には「手に入る材料で精一杯頑張りました」的な雰囲気がみなぎっています。いや、もう期待以上の出来映えであると云って過言ではないでしょう。
 もっとダメダメなC級アクション映画を予想していました。
 ハイアムズ親子の手腕には感心するばかりです。

 ただ、まぁ……。
 「限界」と云うものは、どんな名人にもあるのだと痛感しました。ヘタをすればZ級まで堕ちてしまいそうな企画を、Bマイナス程度にまで引き上げ、最後までそれを維持してはいますが。並の監督には出来ない芸当でしょうけど。
 でも、やっぱりB級はB級なのですが。もっと予算があれば……。

 第一作の『ユニバーサル・ソルジャー』は、あのローランド・エメリッヒが監督でした。エメ公のアレより遙かにマシでしょう(第二作については忘れよう)。
 やはりヴァン・ダムの主演映画なのだから、「格闘」がキチンと撮れないとイカンじゃろ。
 その点、今回は「判っている人」が監督し、撮影しているので、実に見事。
 もう「そこに銃が落ちていても、拾ったりせずに、格闘で敵を倒す」という、ある意味では信念に貫かれた演出です(不自然だけど……)。

 何を云うにしても、問題は主演俳優がもう歳であるという点か。製作が十年遅かった。いや、十五年くらいか。
 『処刑人2』では、パトリック・フラナリーがもう歳なのではないかと云われ、見事にその予想を覆してくれたのですが……。
 今度はそうは行かなかった。

 ヴァン・ダムも、そしてドルフ・ラングレンも、哀しいまでに年輪の刻み込まれた風貌。ヴァン・ダム四九歳、ラングレン五四歳。
 切ない。
 立っている姿を見るだけで切ない。
 走っている姿を見るともう泣ける。
 哀愁のユニバーサル・ソルジャー。

 特に新キャラの次世代兵士(アンドレイ・アルロフスキー)が若々しいのが、更にギャップを感じさせる。
 ただ、逆に「それでもちゃんと格闘シーンがサマになる」というのが凄いのですが。それだけは評価してあげたい。そこしか評価できないのが辛いけど。

 ストーリーについては語りますまい。
 ええ、もう、チープなB級作品ですから。中身無いデス。いっそ清々しいまでに何もない。野郎ばかりが殴って、どついて、拳と拳で語り合う。色気なし。
 寒々とした、色調のない画面が雰囲気にピッタリ。

 ただ一点、残念な場面があります。
 ドルフ・ラングレンが、自分を蘇生させた生みの親でもある科学者を殺害するシークエンスがね。モロに『ブレードランナー』なのが……。
 なんでそんな小ネタを仕込むのかな。
 パクリとは云いますまい。オマージュと云ってあげたい。
 でも、そんなことせずに、そのまま「何もない物語」を貫いてもらいたかった。

 そしてB級ムービーの定番的エンディング。続編への布石。
 いや、もう、やめておけばいいのに……。


●余談
 ドルフ・ラングレンの次回作は、あのシルベスタ・スタローン製作の『エクスペンダブルズ』であるそうです。
 スタローンを筆頭にジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ミッキー・ローク等々のロートル親父共が大挙出演するアクション映画だそうで、実に楽しみ。アーノルド・シュワルツネッガーも、ブルース・ウィリスも特別出演するとか。
 ヴァン・ダムにも当然、オファーがあったのに、蹴ってしまったとは残念。
 ひょっとしてヴァン・ダムより先にラングレンが返り咲いたりするのでしょうか。


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