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2010年6月20日日曜日

サバイバル・オブ・ザ・デッド

(SURVIVAL of the DEAD)

 監督・脚本ジョージ・A・ロメロ。元祖による正統派ゾンビ映画。
 ちゃんと死んでます! 走りません!

 七〇歳を超えてなおロメロは健在である。素晴らしいデスね。
 ロメロのゾンビ映画はこれで六本目ですが、最初の四本で一旦、シリーズとしては完結したそうな。聞くところに拠ると、ロメロは〈リビング・デッド〉シリーズの版権を持っていないのだそうです。ちょっと意外。
 そこで五本目から、最初に戻って仕切り直しを図っているとか。
 前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』から、急にまた低予算映画になってしまったのはそういうワケだったのか。
 今作『サバイバル~』も自主製作映画のノリですね。配役は無名の役者さんばかり。そうは云っても素人が作る映画より遥かにキチンとした作りですが(笑)。

 再び屍者が生者を襲う事件が発生し始めた時点に遡って描かれた『ダイアリー~』の続編。時系列的には事件発生後四週間程度の頃という設定。
 原因はやっぱり不明なままか。
 謎の宇宙放射線の影響で──と云うのは日本でだけ通用するネタやね(笑)。
 文明はまだ崩壊しておらず、インターネットでの動画配信もまだ健在。お笑い番組ではゾンビを使って政治家を揶揄するネタが受けている。
 前作にも登場した州兵のグループが原隊を脱走し、強盗集団としてサバイバルしていくという物語。彼らは噂に聞く「死者の蘇らない安全な島」に渡ろうとするのだが……。
 文明は崩壊しきっていないが、限りなく無法状態らしく、全体的に西部劇のノリが伺えます。

 そして主人公達は「安全な島(実はデマ)」で行われていた〈実験〉に巻き込まれていく。そこではゾンビを調教して人類との共存を図ろうとする一派(改革派)と、ゾンビを強制的に排除しようとする一派(保守派)が互いに争い合っていたのである。

 うーむ。ゾンビを調教。マジですか。
 常識的に考えると、絶対〈保守派〉の方が正しいような気がする。
 しかし愛する家族がゾンビ化してしまったら、と考えると〈改革派〉の言い分にも一理あるような。でもやっぱり死体が動いているだけのように見えるのですがねえ……。
 患者の脳死を認めたくない家族の気持ちとはこのようなものなのか。
 さすがロメロ御大。深い哲学的考察と溢れるゾンビ愛デス。

 この〈保守派〉と〈改革派〉が、島を代表する二つの旧家によって推進されているというのがトラブルのタネ。オフリン家とマルドゥーン家という、ただでさえ仲の悪い一族同士が、ゾンビの扱いを巡って更に対立を深めていくという構図。
 傍から見ていると始末に負えん。
 もう単に「あいつらのやっていることだから気に入らん」という理屈のようにも思えます。
 かくして人類存亡の危機的状況だというのに、人間同士でいがみ合い、殺し合うという救いがたい泥沼が描かれる。いやはや、度し難い。
 ゾンビの方がよほど気楽で平和でいるように思える。
 やはりロメロ御大のゾンビ映画は単なるホラーではありませんね。この辺が、模倣リメイク作品群とはひと味違うところか。

 ロメロのゾンビの描き方が、初期から次第に変容してきている、というのはよく知られたことですね。新シリーズになってから、更に強調されるようになってきた。
 単なる動く屍体ではなく、知能の片鱗が見られるようになってきた。これはなかなか怖い。
 生前の微かな記憶が影響しているらしいのだが、それまでの動物的な動きだけでなく、道具を使用したり、車を運転したり──しているように見える。
 生前、乗馬が趣味だった娘さんが、死後はゾンビとなって馬を走らせているという描写がある。飲み食いもせず、二十四時間ずっと、ただひたすら馬を走らせている。忠実な愛馬は、ゾンビと化した主人を乗せて島中を走り回る。なんと丈夫な馬であろうか(笑)。

 結局、一族同士の争い──西部劇になぞらえるなら『大いなる西部』のゾンビ版とでも云いますか──がエスカレートし、互いに殺し合い、殺されたヤツは直ちにゾンビとなって復活し、ますます状況は混乱し、遂に破局が訪れる。
 巻き込まれた主人公達は災難という他はありません。

 生き残った数人の仲間達とボートで島を脱出。安住の地はどこにもないのか。
 そして文字通り「死の島」と化した島に残されたものは……。
 いがみ合う一族の当主同士がゾンビとなってもなお、殺し合いを続けていた。あんたらもう死んでるんだってば!

 バカは死んでも治らない──を、ここまで明確に描いた映画は初めてデス。
 この皮肉なエンディングには思わず笑ってしまいました。
 恐怖と笑いは紙一重ですねえ。いやぁ、実に深い(笑)。


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