2010年6月20日日曜日

ザ・ウォーカー

(The Book of ELI)

 ポスト・アポカリプスもの。
 その昔、腐るほど観た覚えがありますねえ(笑)。最終戦争後の荒廃した世界をサバイバルする物語。うーむ。世紀が変わっても相変わらずこういう物語が大作映画として製作されるというのが素晴らしいというか、進歩がないというか。

 ぶっちゃけ、デンゼル・ワシントン版『マッドマックス3』とでも云いますか。
 今更、何故にこんなヒネリのない作品を? 製作は『ダイ・ハード』やら『マトリックス』やらの「大作アクション映画どんと来い」のジョエル・シルバー。

 滅亡後の荒廃した世界を西へ西へと旅する男。寡黙でめっぽう腕が立つ。
 男は一冊の書物を運んでいた。
 それは世界に残されたある本の最後の一冊。その本を支配するものは世界を支配できるという。
 一体、その本には何が記されているのか──。

 もうお判りですよね。予想付くでしょ。

 〈聖書〉です。バイブル。

 ネタばれでも何でもありゃしねえ。謎めいた予告編で気を持たせやがって。
 本編では、始まって三〇分もしないうちに判ってしまうことではないデスか。このあたりの設定の底の浅さが期待はずれと云うか、やっぱりなあと云うか、残念デス。
 キリスト教徒でない日本人にはイマイチな設定ですなあ。まず「聖書ってそんなに凄い本なのかよ」とツッコミ入れたくなります。

 確かに「この本が原因で戦争が起きた」と云われると、ちょっと納得ですが。してみると最終戦争は宗教絡みだったのか。どうせアメリカがまた自分勝手な価値観で良からぬことでもしでかしたのであろう。
 その後、「戦争の原因と云われたその本を、人々は片端から焼き捨てた」ワケで、焼き捨てた後になって一部の者はその本の価値に気付いて探し始めたという。
 どんなものでも「最後の一冊」ともなれば希少価値ありますわな。

 しかしどうなんですかね。
 既に戦後三〇年という設定で、キリスト教という概念自体が失われた世界に於いて、〈聖書の言葉〉を語ったからといって容易く人心を掌握し、世界を支配できるものでしょうか? どうしてそんなに〈聖書の言葉〉には力があると無条件に信じることが出来るのかな。それが不思議でならない。
 せいぜい「ちょっといいことが書いてある」程度のものじゃないのかねえ。
 精神的な歴史が断絶した世界では、聖書と云えどもそれほど有り難く思う人はいないのではないかと思うのですが。

 でもゲイリー・オールドマンは、その本こそが文明復興の鍵であると信じ、デンゼル・ワシントンから奪い取ろうと手下を差し向ける。そしてデンゼルくんにバッタバッタと返り討ちにされていくワケですが。

 まぁ、根底にあるキリスト教万能論に目を瞑りさえすれば、さすらう一匹狼の痛快アクションが堪能できます。このあたりは流石はデンゼル・ワシントン。殺陣の振付は見事です。
 敵対するオールドマンも、単純な悪党ではなく、学があり、文明復興という野心を抱く独裁者を演じております。部下が字も読めない暴力バカばっかりで、唯一人、知識を独占する代わりに孤独を味わうという境遇にはちょっと同情しますけどね。

 チープな設定のくせに、やたらと制作費を注ぎ込んだ背景、セット。そして豪華すぎる共演者達。
 ゲイリー・オールドマンの他にも、マイケル・ガンボン、マルコム・マクダウェル、そしてジェニファー・ビールス(うわ、懐かしッ)。
 『パニッシャー:ウォーゾーン』のレイ・スティーブンソンもいる。やっぱり悪党面だよなあ、このひと。

 そして西へ西へと旅を続ける〈旅人〉さんは──「ウォーカー」というのは通称で、本名はイーライと云うのが途中で明かされる──、遂に西海岸に辿り着く。
 廃墟と化したサンフランシスコ。崩れ落ちた金門橋。定番の風景ですね。

 最終目的地はサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島。ここに一握りのグループが生き残って文化遺産の保護と復興を計画していたのだ。
 なんちゅーか、もうベタな展開。直球勝負と云えば聞こえはいいか。

 ここで最後の最後まで伏せていた「驚愕の事実」が明らかになるワケですが、「謎の書物が聖書だった」なんぞというネタは単なる目くらましで、本当はこれこそが製作者がやりたかったことなんですね。
 いやもう、ちょっとビックリ。
 そんなのアリかよ、とツッコミ入れたくなること必至。デンゼル・ワシントンの演技を最初から思い返してみると、思い当たる節がないわけではない。
 が、でも……。うーむ。
 いや、いくら何でもそりゃ無茶というものでしょ(爆)。

 監督はアルバート・ヒューズとアレン・ヒューズ。この兄弟、『フロム・ヘル』の監督なんですね。コミック・ブックの大ファンだからなあ。仕方ないのかなあ。
 コミック好きな監督は、ビジュアル的な演出には心配ないが、脚本のトンデモさには気が回らないのかな。それともこういうのが好きだとか。きっとそうね。




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