そうは云っても、相変わらずTVシリーズを観ておくとか、『革命篇』公開に先駆けてオンエアされた『SP/革命前日篇』なんかは観ていないのですが……。
どうにも『SP』という物語は、すべてのエピソードを全部観ないと、つながらないと云うか、ピンと来ない「一見さんお断り仕様」であるのが、辛い。
長い物語のクライマックス部分だけ劇場版にするという製作姿勢に問題があるような……。
今回も冒頭から、一切の説明もなく本編が始まる。この姿勢は私のような観客には不親切ではあるが、実に潔い。
もう『野望篇』のダイジェストとかも無い。
「前回までのSPは──」等という、ストーリーのおさらいも、ハイライト場面の紹介もなく始まってしまう。このストイックなまでの態度。
時系列的には『野望篇』の二ヶ月後から始まる。いつもの警護課第四係の朝の出勤風景。
岡田准一は上司、堤真一の態度に不可解なものを感じながらも、確たる証拠も掴めないままズルズルと日常を送っていたらしい。そうか、前回のラストで岡田の方は堤の姿を見ていなかったか。
一方的に堤の方が岡田を見つめていたのだ(笑)。
そしていよいよ革命計画が発動する。
今日も昨日と同じ一日の始まりだ──と思っていたら大間違いですね。いきなりか。
突如として始まる国会議事堂制圧作戦。
この場面は実に巧い。エリート官僚グループのリーダーに作戦のシミュレーションを語らせながら、現実に制圧作戦が進行していく様子を交互に映してくれるので、何がどうなっているのかよく判る。
今回は国会議事堂がメインの舞台となるので、議事堂内部の廊下のセットとかが見事に再現されておりましたな。美術スタッフの気合いの入れようが伺えます。
考えてみれば国会議事堂でロケなんかさせてくれる筈はないか(笑)。
議事堂内部では、衛視といえども武器を携行できない。唯一、武器を携行できるのは要人警護の任に当たっているSPのみである。おお、知らんかった。
SPがそろって行動を起こせば、誰も止められないという展開が自然で、だからこそ『SP』というドラマなのであると納得してしまいました。
内偵を薦めていた公安第一課が異変に気付いたときには、既に遅かった。
──のであるが、なんか妙だ。
公安の田中さん(野間口徹)が、いつの間にやら襲撃されて負傷している。はて、『野望篇』にそんな場面は無かった筈であるが……。
聞いた話によると、その部分はオンエアされた『SP/革命前日篇』で描かれておるそうな。
全然、判らなかったよ! 不親切設計も極まれりである。よもやそこまで押さえておかないとイカンかったとはッ。
制作者としては撮影したシーンをカットしたくないというのは判りますがね。そんな『野望篇』と『革命篇』の間に、もう一話ありました、なんてのは勘弁してもらいたい。これではほとんど三部作も同然ではないか。
『革命篇』で終わらなかったらどうしよう、と心配していましたが、これには意表を突かれた。うーむ。ひどい(泣)。
おかげで私の『SP』観はブツ斬りもいいところである。まぁ、元から『野望篇』以前は観ていませんでしたけどね。
とにかく、どういう経緯で田中さんが襲われたのか判らぬが、とにかく国会議事堂は占拠されてしまうのである。国会中継中に堂々と。テロリストの行動が生放送されてしまうと云うのが面白い。
だけどそこからが……。
革命というのは、国会だけを占拠すればいいと云うものではあるまいに。
本当にこれがキレ者である堤真一の計画なのかと首を捻らざるを得ませぬ。
ここから延々と続く政治家の悪行の暴露。生放送で国民に知らしめるのが目的とはいえ、銃を突きつけて自白を強要するというのは如何なものか。
堤真一のやっていることは、国民の政治不信を一層煽っているだけではないのか。TVカメラに向かってカッコよく云い放ちましたけどね。
「この行為の目的は、諸君らの覚醒を促すことである」
どうなんですかね。そんなことでこの日本に革命が起きると信じていたのだろうか。しかも計画はそれが全てであるらしい。
実は高級官僚グループと香川照之には別の計画があって、堤真一は利用されていただけなのである。そりゃそうだろう。既存のシステムを破壊するだけの行為だけでは「革命」とは云い難いよなあ。それとも壊すだけ壊したら、自然発生的に「覚醒した国民」が新しい日本を建設するために立ち上がってくれると、まさか本気で信じていたのだろうか。
どうにもサスペンス描写とアクションの演出は素晴らしいのであるが、この根本的な脚本の竜頭蛇尾っぷりが信じられぬ。まさかそれだけである筈がない。ちゃんと最後にもう一ひねり、どんでん返しが──。
──無かった。
岡田准一ら警護課第四係の猛者達の大活躍で国会議事堂占拠の一味は制圧され、人質となっていた議員達は無事に解放され、首謀者である堤真一も逮捕される。
ええ? それでおしまいなの?
時を同じくして、計画が失敗した途端、裏で糸を引いていた高級官僚グループもまとめて始末される。怪しげな四人組の殺し屋──この場合は始末屋と呼ぶべきか──によって、公安が動き出す前に全員抹殺である。そんな乱暴な。
どうやら背後には更に大きな黒幕がいるらしい、としか明かされないまま物語は終わってしまう。無責任じゃなイカ。
あの始末屋四人組も『SP/革命前日篇』ではもう少し出番があったのか?
多分、ここから先は『SP』では描かれないでしょう。要人警護が任務の警護課の仕事ではないしな。
ここから先は、公安第一課の皆さんの活躍に期待するしかないが、それはまた別のドラマになってしまう。意味ありげに〈雄翔会〉の写真の断片を手掛かりらしく映したカットがありましたが……。
スピンオフ作品につづく……のであろうか。うーむ。
山本圭の総理大臣がなかなかふてぶてしくて良かったのですが、結局、天誅喰らうことなく生き延びちゃうし、何より「大義のため」と嘯いていた堤真一の真の目的が、「大衆の面前で総理に悪行を白状させること」だけだったというのは、如何なものか。
そりゃ、大義じゃなくて、只の怨恨による犯行なのでは。
途中まではすごく面白かったのに。こんな終わり方で良いのか。がっくり。
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