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2010年11月8日月曜日

SP/野望篇

(SP THE MOTION PICTURE : Episode V)

 フジテレビの人気TVシリーズの映画化──ということしか知らずに観に行き、面食らいました。元のTVシリーズはまったく観ておりません。
 あとで読んだパンフレットによる解説では、こんな構成だったらしい。

 エピソード1 : 第一話
 エピソード2 : 第二話~第三話
 エピソード3 : 第四話~第七話
 エピソード0 : 第八話
 エピソード4 : 第九話~第十一話

 そして映画化されたのが、エピソード5『野望篇』であるとな。
 バリバリに続きものではないか!
 もうキャラもストーリーも、すべてTVシリーズからずっと繋がっているようである。過去のエピソードが伏線らしく、随所に説明カットとして挿入されているみたいなのだが、観たこと無いのでナニが何やら。

 かつて企てられた(らしい)総理暗殺未遂事件ってナンですか?
 不可解な死を遂げた(らしい)西島理事官ってダレですか?
 SPと対立している(らしい)公安第一課との関係は……?

 もはや人間関係もナニも詳しく説明しないまま──観客はすべて承知の上であるという大前提がある──物語は進行していく。
 これは一見さんお断りの映画だったのだ!
 非常に不親切なのだが、きっとクダクダ説明しないのがいいのであろう。

 岡田准一演じる井上警護官は特殊な能力を持っているらしく、ほとんど予知能力者かと思われるほど「先読みの能力に長けている」のであるが、これについて尋ねることは、例えるなら、今まで『ハリー・ポッター』の映画を一切観ないまま、『死の秘宝 PART.1』を見に来た人が「ヴォルデモート卿ってダレ? なんで名前を云ってはいけないの?」と尋ねるようなものであろう。

 もうコレは岡田准一は予知能力者なのだ、と割り切って観るしかない。なんか能力を発揮すると身体に非常な負担がかかるらしいのだが、そういう設定なのだ。きっとな。
 とは云うものの、右も左も判らないから詰まらないと云う訳ではない。
 実は結構、面白かった。

 雰囲気的にはかつての海外ドラマ『特捜班CI5』に似ているというか、NHKのドラマ『外事警察』にも通じるような、プロフェッショナル達が織りなすハードなドラマなのである。
 しかもアクションたっぷりで、飽きさせません。

 このあたりは、さすが劇場版と云うべきか。冒頭の六本木で繰り広げられるテロリストとの追跡劇ではかなり気合いの入ったアクションを見せてくれます。岡田准一って結構、やるな。
 ──などと云うと、岡田准一ファンからナニを今更的な軽蔑の眼で見られそうですが、私は岡田准一がドラマに出ているのを一度も観ていないのだから仕方ない。

 アクションも凄いが、音響もまた気合い入ってます。
 クレジットを見ると、ハリウッドの特撮工房が協力している。音響も〈スカイウォーカー・サウンド〉で録音されているらしい。劇場版として相当、入れ込んで制作されているらしいのが判る。TVシリーズからのただの延長ではないと云うことか。

 ただ、まぁ、やっぱりキャラの相関関係が判らないのが、ちょっと辛い。
 岡田准一の上司として登場するのが、堤真一なのであるが、どうもこれが裏切り者っぽいのである。
 水面下で進行していく政権転覆の陰謀。実は堤真一もこれに一枚噛んでいるらしく、「すべては大義の為だ」などと嘯いたりする。
 そして岡田准一を仲間に引き込もうとして、拒絶される。

 どうやらかつての上司が最大の敵となって立ちはだかるという構図らしい。

 TVシリーズを追いかけてきた観客なら、特別な感慨もあるのでしょう。最初はずっと仲間であり、自分を育ててくれた恩義ある人が敵になってしまう──お約束な展開ではあるか。
 やはり弟子は最後には師匠を超えていかねばならぬのか。

 堤真一の属するテロリスト集団が、堤真一には相談無しに刺客を差し向ける。まぁ、仲間になることを拒絶したのだから、当然と云えば当然である。
 しかし警護課第四係の猛者達は襲い来る刺客を片っ端から撃退していくのである。
 このあたりの、岡田准一以外のメンバーの活躍もなかなか面白い。
 真木よう子、松尾諭、神尾佑といったメンバーのプロとしての描写がなかなか。この映画の出演者には主役周辺を除くと、特に有名俳優を敢えて起用していないのであるが、それがいい感じデス。

 差し向けた刺客が片っ端から返り討ちにされていく、という報告を受けた堤真一がどことなく嬉しそうなのがいい。

 「当たり前だ。俺が育てたチームだからな」

 敵ながら堤真一が寄せる岡田准一への信頼と愛情が垣間見えます。なかなか漢燃えな関係ですな。
 それはまぁ、いいのですが……。
 物語は一向に堤真一と岡田准一の対決にもつれ込まないのである。

 アクション場面が盛りだくさんなのに、肝心のクライマックスが訪れる気配がない。革命を企むテロリスト達の計画がどんな計画なのかも判らない。
 そうこうするうちに……。

 ……終わってしまった。
 エピソード6『革命篇』につづく。
 うぉいッ。
 最初から劇場版は二部構成だったのかッ! そんなあ。

 ラストは遠くから岡田准一を見つめる堤真一のアップである。

 「残念だよ、井上。本当に……残念だ」

 残念なのはこっちデスよ!
 袂を分かった男同士の決着は次回に持ち越しである。エンドクレジットのあとにちゃんと予告編も流してくれます。『SP/革命篇』は来年の春に公開だそうな。次回完結──本当でしょうね。三部作とかだったらコロス。
 それにしても、途中から見始めたドラマが中途半端に終わってしまったようなものである。このやるせなさをどうしてくれよう。




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