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2013年8月28日水曜日

宇宙戦艦ヤマト 2199

 第七章 そして艦は行く

 一年半続いた『宇宙戦艦ヤマト2199』のイベント上映マラソンも最終回です。遂におしまいか。
 第七章は、二三話から二六話まで。第六章『到達! 大マゼラン』の上映から速いペースでの公開になりました。いつもなら、もう二ヶ月くらいは間を開けたであろうに。やはりTV放送が始まってしまいましたからねえ。追い越されるわけにはイカンですか。
 その所為か、製作スタッフに多大な重圧がかかったであろうことは想像に難くありません。上映開始前に「お詫び」が表示されます。
 一部を短縮版として公開せざるを得なかったとな。完全版はブルーレイ化されるときまでお預けか。

 端折られてもちゃんとストーリーは繋がるのか。実に不安な断り書きでありましたが……。
 はて。どこが短縮されたのかよく判りませんでした。ちゃんと完結しましたよ。見事に。
 確かに色々と投げっぱなしのエピソードは散見されましたが、まさかそれが全て完全版になったら説明されるのかと云うと、とてもそうとは思えませぬ。
 意図的に投げたところも見受けられます。これはやはり続編への布石でしょうか。
 続編製作の告知はありませんでしたが、いつでも続けられるように「あえてその後は語らずにおく」と云う演出だと思われます。気になる部分は多々あって、色々とその先が知りたくなるのですが……。

 さて、前章のラストに於いて、サレザー恒星系に到着したヤマトを狙って発射されたのは、やはり敵の波動砲──デスラー砲ね──でした。波動エネルギーの武器転用は地球人の専売特許では無かったのだ。
 開巻早々にヤマト撃沈……かと思われましたが、間一髪狙いは外れます。ワープ直後の亜光速で移動する的は狙いづらいと云う事情があったようです。即座に敵の波動砲の攻撃と認めた沖田艦長は、全速でガミラス星へとヤマトの進路を向ける。
 本星直上では敵も波動砲は撃てないだろうと踏んでの行動ですが、ギムレーらの親衛隊艦隊はヤマトをスルー。

 親衛隊にとっては、遷都の為に建造した巨大な宇宙都市〈第二バレラス〉こそが守るべき対象であり、もはやガミラス本星は守備範囲外であるようです。結果として、易々と帝都上空へのヤマトの侵入を許してしまい、慌てふためく帝国の幕僚達(親衛隊はホントに頼りになりませんねえ)。
 そのままヤマトは総統府の建物に突入。総統府の土手っ腹にヤマトがめり込んで止まると云う異様な光景です。
 狙うはデスラー総統、只一人と云うあまりにも潔い作戦ですが、総統府から脱出艦が分離して発進していく。旧作に於ける「デスラー艦」ですね。
 幕僚達を置き去りにして、自分だけ脱出する総統に呆然とするヒス副総統とミーゼラです。よもや自分達が捨てられるとは思いもしなかったようです。
 「それが指導者のすることかあッ」と怒りも露わなヒス副総統。このあたりから「お飾りだった副総統」がだんだんと目覚めていく過程が描かれております。

 もはやなりふり構わぬデスラー総統は、〈第二バレラス〉の一部を切り離し、帝都への直撃コースに乗せる。巨大な構造物を落として帝都臣民すべてを巻き添えにしてもヤマトを仕留めようと云う無茶苦茶さです。タラン将軍が諫めても聞く耳持たず。
 「尊い臣民の犠牲は私が背負う」と何やら自己陶酔しておられる様子。正気を失っているのか、熱に浮かされているのか。
 どうやらデスラー総統はスターシャに惚れていたようで、イスカンダルの掲げる「遍く宇宙に救済を」と云う思想を体現するのは自分であると任じているようです。それがガミラス帝国の急激な版図拡大の理由だったとは。
 確かに宇宙が統一国家に支配されれば争いも起きないというのは判りますが……。そんな単純な。

 しかもその為には、自分の星の民を犠牲にすることも厭わぬとは、やはり常軌を逸しておられます。
 ヒス副総統は帝都全域に避難命令を出すものの、間に合うはずも無い。万事休すと思われたときに、ガミラス星を救うのがヤマトの波動砲であると云うのがお見事でした。
 旧作では、ガミラス星で波動砲ぶっ放して星を壊滅させて、そのあとで「愛し合うべきだった!」などと古代君が号泣しますが、このリメイク版ではそりゃなかろう。波動砲を武器にしないとユリーシャに約束もしましたし、どうするのかと思っていたら、ガミラスを救う為に落下してくる巨大な質量を波動砲で吹き飛ばします。使用はあくまでも身を守る為に限定。
 言葉ではなく行動で示す。戦う為に来たのでは無いと云う沖田艦長のメッセージを明確に読み取るヒス副総統です(なんだ、まともな人じゃないデスか)。

 その後、デスラー総統は今度はデスラー砲でトドメを刺そうとしますが、総統と一緒に連れて来られていた雪が破壊工作を行い、〈第二バレラス〉が木っ端微塵に吹き飛ぶという顛末となりました。ちょっと『スターウォーズ』のデススターの末路みたいですねえ。哀れ、親衛隊艦隊も巻き添えに。
 脱出した雪を古代が発見して、やっとめぐりあう恋人達。宇宙空間で抱き合う二人の眼前にはイスカンダル星が浮かんでいるという、ロマンチックな図です。
 しかしこのあたりは尺が詰まっているのか、展開が駆け足のように思えます。かなり怒濤の展開でしたが、二六話で終わらせるにはまだまだこなさねばならないメニューが残っているしやむを得ないか。

 そしてイスカンダル星に到着するヤマト。やっとのことでスターシャと対面する地球人達です。
 しかしスターシャ様は何やらご機嫌斜めな様子。波動エネルギーの武器転用の件とか、デスラー総統死亡の件とか、色々あるようで、すんなりと〈コスモ・リバース・システム〉を渡してくれそうに無い。ここまで来てそれは無かろう。
 スターシャが決心するまで待つことになるヤマト乗組員です。
 旧作では、ここで乗組員の叛乱が起こっていたのですが、本シリーズではそれはもう済んだし、イスカンダルでは何か別のエピソードがあるとは思っていましたが。

 水着回か! その発想は無かった!
 イスカンダルの紺碧の海に、乗組員には女性も沢山。となれば、待っている間に海水浴をと云うのは自然な流れなのか。イマドキのアニメには「水着か温泉か」いずれかが入っていなければならないと云うお約束までを忠実に守ろうという、製作スタッフの執念を感じました。
 ガミラス星での本土決戦に尺を割くよりも、イスカンダル星での海水浴が大事なのですねッ。

 一方、旧作では古代進の兄、守との対面というエピソードもありましたが、本シリーズはそこでもう一ひねりありました。進が見せられたのは、守の墓標。
 〈ゆきかぜ〉乗組員はガミラスの捕虜となり、生体サンプルとしてガミラス本星へ連行されようとしていたところ、事故によってイスカンダルに不時着していたのだという。しかし生存者は守のみ。しかも長くは生きていられなかったようです。
 亡くなる前に地球へのメッセージを残し、それを託されるヤマト乗組員。今度こそ本当に古代守は死んだのだと知って失意の進、新見さん、真田副長達ですが、ここに幾つか仕掛けがあるようです。

 古代守の肉体は消滅したが、亡くなる前に記憶は保存されていたようです。しかし〈コスモ・リバース・システム〉には、その星に生きる者の意思と記憶が不可欠であるようで──人の想いの力で色々なものを再生させる仕組みらしい──、地球を再生させるには「守の記憶」をヤマトに返さねばならない。スターシャが躊躇っていたのはその為だったようです。
 やはり本作でも、古代守とスターシャは愛し合う仲になっていたのか。
 しかも、何やらスターシャの身体には新たな命が宿ってもいるようで、守兄さんも亡くなる前にやるべきことはやっていたのか。すると後年、進のことを「叔父さん」と呼ぶ少女が登場できる布石も打たれているような……。
 でもそうすると、デスラー総統は完璧に片思いだったことになるのですが。なんか哀れな。

 やっと〈コスモ・リバース・システム〉を受領したヤマトですが、そのシステムとはヤマト自体を改造することでした。船体にシステムを組み込まれ、帰路につくヤマト。
 ユリーシャやメルダともここでお別れなのが寂しいです。彼女達にはまた別の道があるようで、ガミラス星再建の為に尽力したいと袂を分かちます。
 ガミラス帝国の未来は昏くはないようです。副総統もまともな政治家に開眼したようですし。

 旧作どおりなら、デスラー総統が本土決戦で死ぬ筈も無いのは御承知の通りですね。
 案の定、死んだと見せかけ、帰路でヤマトを待ち受けておりました。出番が無いと思われていたゲールにも登場の機会があったとは嬉しいです。
 帰路のワープ中に不意を突いて、亜空間内で強襲を仕掛けるデスラー総統。ヤマト艦内に突入してくる機械化兵士の軍団。
 あれ。この展開は『さらば宇宙戦艦ヤマト』ですね。劇伴も旧作と同じにするコダワリよう。
 使えるシチュエーションは全部使いきってしまおうと云う、全力投球な演出方針が伺えます。

 ここで真田副長の策が当たって、機械化兵は無力化。さすがに「こんなこともあろうかと」とは云われませんでしたが、往路でのエピソードを活かした巧い対処法でした。
 「あの時のデータが役に立ったよ」と云う台詞に、言外に「こんなこともあろうかと」と云うニュアンスを強く感じました。しかし自慢しない。謙虚です、真田副長。

 デスラー総統と短い邂逅を果たす古代。そして撃たれて倒れる雪。
 最後の決戦は亜空間内での砲撃戦です。亜空間ではビーム兵器が使用できず、デスラー艦が波動砲発射に手間取っている間に、ヤマトの副砲が火を吹くと云う演出が巧いです。
 個体弾頭を撃つという発想はガミラス側には無かったようです。なまじ科学が進んでいるので、ビーム兵器に頼りすぎると云う設定がSF者には嬉しいですね。
 「野蛮人めえッ」と叫んで、デスラー艦は撃沈。これがデスラー総統の最期……なのかな。総統閣下はしぶといですからね。爆発だけでは死亡は確認できませんですねえ。

 本章は帰路の描写にもう少し尺を割いており、地球との通信の回復や、残してきた母のことを心配する相原通信長のエピソードにも軽く触れられております。相原さん、忘れられていたわけでは無かったデスね。
 そして地球帰還を前に、艦内で結婚式を挙げてしまう加藤・原田ペアです。実におめでたい。
 しかも真琴ちゃんの身体にも新たな命が……。加藤隊長、デキちゃった婚だったのか。
 真琴ちゃんを加藤隊長に取られて、やむなくアナライザー相手に酒を飲む佐渡先生の図が笑えます。ようやくこの関係が出来上がりましたね。

 けれども、めでたいエピソードの裏で進行する雪の容態急変。沖田艦長の命ももはや長くはない。そこで古代守の意思を宿したヤマトが起動させる〈コスモ・リバース・システム〉。
 色々と理屈を考えた展開ですが、基本的には旧作どおり。雪は生き返り、沖田艦長は静かに息を引き取る。
 疑問点がないわけではないのですが。あのシステムは誰かが人柱にならねば動かないようですが、守兄さんは地球を救うことより、弟の事情を優先させた疑惑もあったりしますし、最後に地球を救うのは沖田艦長の意思だったのかとも思われます(守兄さんはそこまで考えていたのかな)。
 それでも「何もかも皆、懐かしい……」と云う台詞には万感の思いを感じます。

 青く甦った美しい地球。感動のラストシーンに流れる最後の主題歌「愛の星」は水樹奈々が歌い上げます。堂々たるバラードに感無量であります。
 スタッフの皆様には「ありがとう。お疲れさまでした」と申し上げたいです。

● 蛇足
 しかし一体どこが短縮されていたのか、完全版で補完されるのはどこなのか……。

 森雪がサーシャと瓜二つだった件か。雪の記憶喪失の件か。
 そういえば、真田副長のサイボーグ疑惑もはっきりしませんでしたねえ。
 あるいは、ディッツ提督が指揮する反乱の行方か。藪くんはどうなってしまったのか。
 イスカンダル文明が衰退した理由や、スターシャと古代守が愛し合うことになった経緯とか。
 ガミラス星のその後のこととか、ヒス副総統がきっと養女にして引き取るのであろうヒルデちゃんの件か。
 出番の無かったフラーケン艦長は再びデスラー総統を救出していたのか。

 どれもこれも気になることだらけですが、恐らくその全てを補完することは出来ないだろうし、またするつもりも無いのでしょう。いずれそれらは続編製作の暁に、改めて語られることになるのでは……。
 と、なると、気になるのは「続編製作はいつから?」と云うことになるのですが、完全燃焼してしまった出渕監督は果たしてその仕事を引き受けるのかしら(当分は無理でしょう)。
 いやホントに、お疲れさまでした。これだけでも充分ですよ。




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