『E.T.』(1982年)があるでしょ!
『E.T.』は作品賞のみならず、スピルバーグが監督賞にもノミネートされましたが、やはり受賞できませんでした。作曲賞と視覚効果賞と音響賞と音響効果編集賞は獲ったものの。
とは云え『第9地区』の作品賞ノミネートが快挙だったことには違いありますまい。
でも……。
快挙だったのですが、結局どれひとつとして受賞できませんでした(泣)。
作品賞と編集賞は『ハート・ロッカー』に、脚色賞は『プレシャス』に、視覚効果賞は『アバター』に持って行かれた。
なんぢゃそりゃあッ。
どれか一個くらい獲らんかあッ。いや、視覚効果で『アバター』と争っても勝ち目無いデス(汗)。
まあ、SF映画で作品賞候補になったことだけでも喜ぶべきか。あの『二〇〇一年宇宙の旅』ですら、視覚効果賞(1968年)のみに留まっているのだから。
ちなみに同年のメイクアップ賞は『猿の惑星』。『二〇〇一年~』のヒトザルよりも『猿の惑星』かよ──と云うのはSFファンの有名なボヤキですね。
ことほど左様にSF映画は大作、名作でもアカデミー賞では常に周辺に追いやられる。『アバター』ですら、作品賞も監督賞も獲れなかったのだから、無名の低予算映画が受賞するのは奇跡を期待するようなものでしょうか。
かつてSF映画がメジャー六部門のひとつを一回だけ受賞したことがあります。
クリフ・ロバートソンが『まごころを君に』で主演男優賞を──って、おや、これも一九六八年の映画ですか。
一九六八年はSF映画の当たり年だったのかねえ。いやいや。『まごころを君に』はSF映画なのか? 一応、原作は『アルジャーノンに花束を』ですが。今ならきっと〈リアル・フィクション〉とか云われちゃうんでしょうね(笑)。
いかん。脱線しまくり(汗)。
ともあれ作品賞にノミネートされるだけのことはあります。
はっきり云って、内容としては『アバター』より上だと思うのですがねえ。
異星人の難民が大挙して押し寄せる──という設定では、過去にも『エイリアン・ネイション』というSF映画がありますな。あれは実にB級ムービーだった。
『エイリアン・ネイション』の異星人は、まだ人類社会に馴染みやすくて社会に浸透していたが──だから人間の刑事(ジェイムズ・カーン)と異星人の刑事のコンビというバディものになったのですが……。
しかし『第9地区』の異星人は、さっぱり社会に浸透しない──できない。意思の疎通すらままならないので隔離されている。
冒頭の街頭インタビューの場面では、もうゴミ漁りをする犬猫かカラス並の云われようです。まぁ、云われても仕方のない振る舞いではありますがね(笑)。
異星人の飛来した街が南アフリカのヨハネスブルグということもあり、完全に異星人居留地のイメージはアパルトヘイトのイメージそのまんまです。
最近、なんか南アフリカが映画に取り上げられることが多いような気がしますね。『インビクタス/負けざる者たち』もそうでしたし。今年のサッカーW杯が南アフリカで開催されることと関係あるのかしら。
一応、監督であるニール・ブロムカンプが南アフリカ出身であるからという理由はあるそうですが。
実はブロムカンプは日本のアニメが大好きな人らしい。特に『超時空要塞マクロス』が好きだとか。
だから、ミサイルが板野サーカス飛びをするのです(笑)。
異星人のパワードスーツも登場します。ちゃんと脚が逆間接。よしよし。
あの『スターシップ・トゥルーパーズ』もブロムカンプにリメイクさせて戴きたい。外国人の映画監督で〈巨大ロボット〉と〈パワードスーツ〉の違いがちゃんと判っている人、というのはこの人くらいでしょう。
それにしても、パワードスーツという概念はいつの間にやら市民権を獲得しておりますなあ。特に何の説明もなく映画に登場しても違和感なしという点に時代の流れを感じます。
SF的設定を説明するために、過剰に主人公に説明台詞を喋らせるという演出が巧いです。記録ビデオを撮るという名目で、手持ちカメラに向かって主人公がべらべらと説明しまくる。
このあたりの「ビデオの主観映像」をやたらと多用するのも、イマドキの映画ですね。
ついでに南アフリカぽい部分と云うか、二一世紀になっても南アのギャングは呪術を信じているらしいという描写が笑えました。南アの人はやはり今でもそうなんだ(爆)。
エイリアンとか、未知のテクノロジーとかと、南アの土着的呪術信仰が同居している描写に一番、SFを感じました。
で、あのちょっと切ないラストシーン。
続編の『第10地区』と云うのは、ホントに制作するつもりなんですかね? なんか「あの余韻」を全部、台無しにしてくれそうなんですけど(笑)。
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