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2010年4月14日水曜日

月に囚われた男

(MOON)

 監督は新人ダンカン・ジョーンズ。実はデヴィット・ボウイの息子だそうな。
 父は「地球に落ちてきた」が、息子は「月に囚われて」いる(笑)。
 父親の名前を出さずに自分の才能だけで世間から評価されたいと願い、実現してしまうのですから、この人の才能は本物でしょう。

 やはりSF映画は低予算の方が面白いのでしょうか。
 『第9地区』よりも更に低予算。
 あっちが三〇〇〇万ドル。こっちはたった五〇〇万ドルだそうな。まあ、制作費二億ドルがザラであるという状況下では、低予算なんでしょうが……。
 日本円にして億を超える金額を注ぎ込んでいる時点で、どっちも大作だろうと思ってしまいますね(汗)。

 限定されたセットと、少ない登場人物、CGを使わずミニチュアで月面車を動かして見せるあたりに懐かしさを感じます。やっぱり英国SFの特撮はジェリー・アンダーソン以来の伝統なんですかね。
 また、英国産SFらしく、アクション場面は可能な限り押さえるという演出もイイですね。

 うーむ。最近観るSF映画は、どれもこれも実は『アバター』より面白いんじゃね?
 いや、『アバター』が詰まらないワケでは無いのでしょうが……。

 サム・ロックウェルの一人芝居が延々と続く映画ではありますが、脚本が巧いので退屈はしないです。SF者が観ると、かなり早い段階でネタバレしますが、ネタバレしてもなおお約束かつ定番な展開は、丁寧な描写もあって安心して観ていられます。
 まぁ、ちょっと丁寧すぎて展開がゆっくりな部分もありますが。

 それからハードSF的側面からのツッコミには弱い部分もあります。
 特に「月面基地に常駐者を置く費用対効果」とか……。特に主人公の相棒役であるロボットの出来が非常に良さげであるだけに、「無人でも問題ないだろ」と思ってしまったり(笑)。
 しかし無人基地ではドラマにならんじゃろが。

 まぁ、あるとき「自分の人生がすべて虚構であったら」と感じてしまうシチュエーションは、SF独特のものですから、それを描くには有人基地にしないとイカンのですがね。いや、『トゥルーマンショー』とかあるから、もうSFだけの題材ではないのでしょうか。

 『サイレント・ランニング』とか『ダーク・スター』が好きな人にはお勧めです。
 月面基地のセットがなんとなく『二〇〇一年宇宙の旅』に似ているように感じられるのは、やはり意識して似せているのでありましょう。
 『サイレント・ランニング』の頃に比べると、特撮にも格段の進歩が生じている筈ですが、何となくあまり変わっていないねえ。低予算だからかな?

 どっちかと云うと、場面の合成が非常に巧い点に時代の流れを感じますな。
 サム・ロックウェルが自分のクローンと対峙する場面はもう正面切って描写できるようになったのだねえ。昔はカットを変えながら撮り分けていた筈ですが、今やワンカットでサム・ロックウェル同士の殴り合いも出来るのです。
 一昨年の『スパイダー・ウィックの謎』でも、フレディ・ハイモアが一人で双子の兄弟を演じておりましたが、もう低予算映画でも簡単にできてしまうのだねえ。
 いや、一々こんなことに感心している時点で、もはや時代遅れなのか。

 時代の流れを感じると云えばもう一点。作中に登場する巨大企業が、米韓の合弁会社らしいという描写です。
 『エイリアン』では「ウェイランド・ユタニ」なる企業が登場した。『エイリアン3』でも日本企業ぽく、セットの壁面に漢字が書かれているという描写がありました。
 が、この作品ではハングルが書かれている。
 台詞でもサム・ロックウェルが「あんにょんはせよ」とか云ってるし。

 もう近未来SFを描くには、日本企業ではダメなのだ! 韓国企業なのだ!
 うがーっ。

 でもそれを云うなら、月面の資源採掘を中国にやらせる方がイマドキの世界情勢を反映させていて良いと思われるが、中国ではそもそも「企業」にならないか。
 いや、それ以前に中国はクローンなんか使わないだろう。
 月面基地駐在員にクローン人間なんか作ってストックするような真似を中華政府がする筈ないし!
 そりゃもう、クローンの人権を無視する以前に、フツーに人権無視して生身の人員を次々に消耗していくでしょうから、主役が中国人ではドラマが成立しなくなってしまうのだ(暴言)。

 時間経過を表現するために、赤ん坊だった娘がいきなりティーンエイジャーになって現れるという場面がありますが、私は奥さん役の俳優を二役にして、「奥さんだと思ったら娘だった」とした方が強烈な印象を与えることが出来ると思うのですが、どうでしょう。


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