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2012年1月9日月曜日

フライトナイト/恐怖の夜

(Fright Night)

 トム・ホランド監督・脚本による傑作ホラー『フライトナイト』(1985年)のリメイクですね。リメイクするにはまだ早いような気もしますが、八〇年代の映画だし、四半世紀過ぎていればやむを得ないのか。
 個人的にトム・ホランド監督と云えば、『フライトナイト』の他には、『チャイルドプレイ』(1988年)と『痩せゆく男』(1996年)の三作品のみで記憶しております。最近はどうしておられるのか。
 そのうち『チャイルドプレイ』もリメイクされたりするのでありましょうか。

 本作では、『ラースと、その彼女』(2007年)のクレイグ・ギレスピーが監督となり(いきなり作風を変えましたか)、脚本は『バフィー 恋する十字架』のマーティ・ノクソン(バンパイアつながりか)。トム・ホランドは原作(オリジナル脚本)のみでクレジットされています。もはやあまり関係なくなってしまったのか。
 「新年最初の肝試し!」と銘打たれ、3D版でも公開されていますが、2D版で観賞しました(正月早々にホラー映画を観るというのも季節感ないけど、まぁいいか)。3Dなら迫力あったのかなぁ──と思われる箇所が部分的にありましたが、そう多くはなかったな。2Dで充分だと思います。

 それなりに面白くはありましたが、残念ながらやはりオリジナルには及ばない出来映えでありました。CGとか駆使して頑張っているんですけどねえ。かつてのリチャード・エドランドの特殊メイクや視覚効果の方が味があったような気がします。贔屓目でしょうか。
 まぁ、オリジナルの脚本を元にしている分、あの『フライトナイト2/バンパイアの逆襲』(1988年)よりはマシか。

 アメリカ中流層の一般的住宅街に、吸血鬼が引っ越してくる──と云う設定が昔は新鮮だったのですが、今ではそうでもないのか。新鮮さが失われたのは、云うまでもなく、あの〈トワイライト・サーガ〉の所為だ(笑)。
 本作でもちゃんと言及されています。

 「あいつは吸血鬼なんだ!」
 「お前、『トワイライト』の観すぎだ」

 ごく普通の冴えない高校生チャーリーの家の隣に引っ越してきた隣人が、実は吸血鬼であるのに、誰も信じてくれない。吸血鬼に狙われた恋人を守ろうとするチャーリーの助けになるのは、落ちぶれたホラー映画俳優の爺さんのみ。
 昔取った杵柄なホラー映画で得た知識だけを頼りに、若造と老人がおっかなびっくりで吸血鬼に立ち向かう、という構図がなかなか楽しかったのですが。
 特に気弱な吸血鬼ハンターであるピーター・ビンセント役がロディ・マクドウォール。これが素晴らしかった。
 ロディ・マクドウォールが御存命なら、再度出演して戴きたかったが(無理か)、一九九八年に既にお亡くなりになっておられる。残念。

 本作ではロディ・マクドウォールに代わって、ピーター役はデイヴィッド・テナント。イマイチ馴染みがありません。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005年)に悪役でチラッと登場してましたか。
 ピーターが「落ちぶれた老俳優」ではないという設定に一番、違和感を感じました。本作のピーター・ビンセントは、ラスベガスで超絶的な人気を博するホラー・ショーのホストになっている。若くて、イケメンで(ちょっとアル中気味)、豪華なペントハウスに暮らし、湯水のように金を浪費し、趣味で集めた世界各地のオカルト・グッズを自宅内にコレクションして展示している(このコレクションが最後の対決で役に立つという伏線)。
 うーむ。かつての設定とは真逆を突こうという趣旨は理解できますが……。

 主役の高校生チャーリー役がアントン・イェルチン。こちらはリメイク版の『スタートレック』(2009年)や『ターミネーター4』(同年)でお馴染みです。『ニューヨーク、アイ・ラブ・ユー』(同年)にも出演していました。
 チャーリーの級友エド役にクリストファー・ミンツ=プラッセ。『キック・アス』(2010年)の〈レッド・ミスト〉ですね。今回もまたオタクっぷりを炸裂させてくれています。
 チャーリーの恋人役がイモージェン・プーツ。『28週後…』(2007年)の、あのお姉ちゃんか。
 若手の俳優さんを結構、実力派で揃えているのはいいですね。

 しかし肝心の吸血鬼役が、コリン・ファレル。かつてのオリジナル版でクリス・サランドンが演じた吸血鬼の方が男前だったような気がします。
 クリス・サランドンの場合は、チョイ悪な感じのプレイボーイというイメージでしたが、コリン・ファレルが演じるとなんかチガウような。そもそも〈トワイライト・サーガ〉みたいな色白なメイクをするのがイカンのではないか。
 ここは敢えて〈トワイライト・サーガ〉とは異なる吸血鬼像にすべきでしょう。それともイマドキはああしないと吸血鬼とは認めてもらえないのか。

 オリジナル版よりスピーディに、テンポよく展開させようとした演出意図は良いのですが──確かに八〇年代は展開もノンビリしていましたからね──残念ながら、それが裏目に出ているような気がします。
 オリジナル版は主人公が真っ先に隣人の正体に気付き、誰も信じてくれない状況から級友のエド達に助けを求めていくという、非常にオーソドックスな展開でした。本作ではそれが逆になっている。
 まずエド達の方が先に気が付き、隣人の内偵を進めていたという設定。
 だから最初のうちはチャーリーの方が吸血鬼を信じず、続発する怪事件の背後に隣人がいると疑い始めたときには、もう証拠も何もかもすっかり揃っている。エド達があらかじめ収集した証拠があるので、即座にアクション展開へと雪崩れ込んでいくことが出来るワケです。
 でも、やはり主人公には自分でいろいろと調べて戴きたかった。なんか影が薄くなったような気がします。
 逆に級友エドの方が存在感を増している。これではイカンでしょー。

 おかげでクリストファー・ミンツ=プラッセは大活躍ですよ。オリジナル版と同じく途中から吸血鬼の下僕にされちゃって、敵側に回ってしまうので、尚のこと印象深い。
 しかし本作では、クリーチャーへの変身という場面はありませんでしたねえ。CGなら狼やコウモリへの変身はずっと容易いと思うのですが。監督のポリシーなのでしょうか。

 その分、吸血鬼の暴れっぷりがパワフルになっているのはいいんですけどね。オリジナル版では、あくまでも吸血鬼と高校生の人知れぬ暗闘が展開していくのに(予算がなかった所為か)、本作ではもうあからさまデス。正体が露見するや(いや、しないうちから)、住宅は破壊するわ、車は破壊するわ、目撃者が出たらソッコーで血祭りに上げるわ、派手なアクションが続くのはいいのですが、無茶しすぎでしょう。
 そして夜間、暴れるだけ暴れて、朝になったら元の隣家に戻って、地下室に潜伏する。そんなバレバレなところに居続けていいのか。あまりにも大胆すぎる。絶大な自信があるのか、頭が悪いのか……。

 ちなみにアッと云う間にやられてしまう目撃者のオジさん役が、クリス・サランドンでした。
 えー。そんなカメオ出演だけとは。
 いっそ、クリス・サランドンをピーター役にした方が面白かったと思うのですがねえ。

 とは云え、クライマックスの対決場面は、割と気合いの入ったアクション演出でした。絶体絶命の大ピンチから一発大逆転というのは非常によろしいデスね。吸血鬼の断末魔が気合い入りすぎのCGでしたが、多分3Dの見せ場だったのでしょうか。
 御都合主義的に、襲われて吸血鬼化した人々も正気に返ってめでたしめでたし。

 しかしどうにも『フライトナイト』のリメイク版と云うよりも、〈トワイライト・サーガ〉の二番煎じ的な部分の方が強く感じられて、ちょっと興醒めでしたねえ。
 できればエンドクレジットでは、オリジナル版の主題歌をアレンジするなりして聴かせて戴きたかったデス。


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