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2012年1月7日土曜日

マジック・ツリーハウス

(Magic Tree House)

 小学生に絶大な人気を誇る児童文学のアニメ化だそうですが、存じませんでした。しかしうちのムスメに聞くと、小学校の図書室にはズラズラと並んでおるそうな。もう三〇巻以上出ているのか(翻訳では一冊につき二話収録しているみたいですが)。
 原作者のメアリー・ポープ・オズボーンがこのシリーズを開始したのが一九九二年と云うから、一年一冊以上のハイペースで二〇年も執筆が続いていることに。
 散々、CMで宣伝するものだから、ムスメらのリクエストに抗えず、観に行きました。
 監督は錦織博、脚本は大河内一楼ですから、それなりの出来ではありますか。

 ある日、幼い二人の兄妹ジャックとアニーが森の中で見つけた樹上に作られた不思議な小屋は、本の世界を旅する魔法のツリーハウスだった──とな。
 小屋の中はちょっとした図書館のようになっており、様々な時代の本が収められている。ひとつの時代の本を取り出し、「ここへ行ってみたい」と唱えると、アラ不思議。
 ジャックとアニーの時空を越える冒険の旅が始まる……。

 昔の海外ドラマで云うと『タイムトンネル』みたいな物語だなあ、などと云うと歳がバレますか。『タイムボカン』みたいと云えばいいのか(それもちょっと)。
 原作では一冊につき、ひとつの時代へ旅するエピソードが描かれておりますが、映画化に当たっては四冊分を一気に消化しております。
 『恐竜の谷の大冒険』、『黒い馬の騎士』、『ポンペイ最後の日』、『海賊の秘宝をさがせ』と初期のエピソードが四本。
 更に、各時代からメダルを一枚ずつ探して集めるというオリジナルの設定が追加されています。メダル集めはオリジナル設定ですが、原作も四話ずつ謎解きや何かのシリーズとしてまとめられているそうなので、それほど著しい改変ではないのか。

 そもそも何故にそんなメダル集めをしなければならんのかと云うと、ツリーハウスの持ち主である魔法使いのモーガンさんがネズミの姿に変えられてしまっており、彼女を元の姿に戻す為には四枚のメダルが必要であるからなのですが……。
 映画ではプロローグとして、いずこかにある魔法の国──実は〈キャメロット〉だった──の図書館で司書をしているモーガンさんが、ネズミに変えられてしまう下りがあります。
 やっぱりアーサー王伝説のモルガンでしたか。えらい美人として描かれておりますが、なんでもかんでも魔法で物事を解決してしまう。
 それが最高位の魔法使いマーリンの気に障ったらしく「モーガン、お前はやりすぎぢゃ。ちょっとは反省せいッ」と魔法を取り上げられて、ネズミにさせられたという次第。
 魔法の国の住民が魔法を使うことのナニがそんなにイカンのか、マーリンの判断基準が不明確だったり、モーガンさんをネズミにすることが本当に反省を促すことに繋がるのか甚だ疑問だったりするのですが、そんなところはスルーしてあげねばならんようです。

 各時代への冒険行の幕間に進行していく小学校での学芸会の準備というドラマもあります。演し物は『ロミオとジュリエット』。これはオリジナルのエピソードなんでしょうか。
 ジャックはロミオ役を引き受けたものの、演じきれる自信がない。
 ツリーハウスでの冒険がひとつ終わる度に、少しずつ進行していく学校でのドラマの方がちょっと面白かったです。多分、冒険を重ねていくにしたがって、ジャックも成長し、ロミオ役を見事に演じることになるのであろう──てのは、容易く推測できるワケですが。

 白亜紀、中世イギリス、ローマ帝国、カリブの海賊と、バラエティに富んだ舞台設定が子供達には楽しいようです。
 うーむ。なんでひとつだけ白亜紀なんぞと云う飛び抜けて過去の時代があるのだ、などと突っ込んではイカンのですね。子供は恐竜が大好きだし。多分、私も小学生だったらきっとワクワクして観たのかな。
 それがもはや純真な心はどこかに失くしてしまったらしい。
 あちこちの時代に行く割に、言葉はちゃんと通じるのか。少なくともローマ帝国はラテン語だろう──なんて、いちいち突っ込む自分が恨めしい。「本の世界」を旅しているんだから、別にいいだろう。そこはスルーしろよ、俺。
 なんか観ていてツッコミたくてツッコミたくて仕方がない。精神衛生上、よろしくない。
 でも原作は「子供達に地理や歴史の知識が身につく展開」であると、教育関係者から支持を得ているそうな。そういうものですか。

 御都合主義な展開も大目に見てあげねばならんと、判ってはいるのですが……。
 各時代でメダルが割と簡単に見つかるのは、いいですよ。最初から「見つけさせる為にバラまいている」と考えれば。
 アニーが動物が大好きなのもいい。容易く動物と仲良くなり、ほとんど超能力と云っていいくらい動物と心を通わせ、意思疎通を図れる。プテラノドンだって手なずけちゃうくらいだ。
 しかし「海賊の世界」でアニーがイルカを助けたら、イルカがジャックに恩返ししてくれるという展開は如何なものか。「イルカがアニーを助ける」なら判るが、その場にいなかったジャックが、アニーのお兄さんであると何故、イルカに判るのだ。
 この展開だけはどうにも釈然としません。

 各エピソードも、背景としてバラエティに富んではいますが、物語としてはどうなんでしょね。基本的にメダルを回収しに行くだけなので、その時代、その場所でなければならない理由がイマイチ、ピンと来ませんでした。軽い謎解きも入りますが、ミステリと云うほどではないし。

 あとは声優の配役ですかね。
 劇場用アニメは、主役に芸能人を起用するという悪しき風習から脱却できないものなのか。
 本作ではメインの三人、ジャック、アニー、モーガンをそれぞれ北川景子、芦田愛菜、真矢みきが演じております。
 北川景子については、それほど悪い配役ではないと……思うが、NHKの教育番組ぽい感じがしました。それは作品の脚本がそうだからか。
 芦田真名ちゃんの起用はビミョーです。リアルに子供の声なのも善し悪しでしょうか。「妹キャラの声」としては、これ以上にリアルなものは無いのでしょうが……。
 歳の割には上手だとは思いますが、長い台詞だとやはり聞いていてツラいものが。
 真矢みきは、さすが宝塚のトップスターだっただけのことはあります。まぁ、モーガンさんは劇中ではほとんどネズミで喋りませんけどね。
 他に山寺宏一と水樹奈々という本職がパパとママで脇を固めていますが、更に出番が無いので印象薄いデス。

 数々の冒険を魔法の助け無しで乗り切った兄妹の姿に、魔法に頼り切っていたモーガンさんは心打たれ、元の姿に戻る……のはいいのですが、〈キャメロット〉に帰還した途端、マーリンににっこり笑ってリベンジですか。反省はしたが、それはそれか(笑)。
 かくして冒険を終えた兄妹の元に、今度はマーリンによく似たネズミが助けを求めてやってくる。
 マジック・ツリーハウスの冒険はまだまだ続く──というところで、続編製作も可能になってはいますが、やるのかな。原作はまだまだ沢山ありますし、観てみたい気もしますが、もうちょいとアカデミックな要素とアドベンチャーな展開を融合させてくれないものかと……。
 でもムスメらは大満足していたみたいだから、これはこれで作品としての目的は達成されているのか。
 文句付けているのはヒネた大人だけね。


映画「マジック・ツリーハウス」オリジナルサウンドトラック

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