2012年2月5日日曜日

ペントハウス

(Tower Heist)

 ベン・スティーラー、エディ・マーフィ主演のユーモア・タッチの犯罪サスペンス映画です。なかなか楽しい映画でした。昨年のキアヌ・リーブス主演の『フェイク・クライム』と同一ジャンルですが、こちらの方がずっと楽しめます。
 監督はブレット・ラトナー。近年は制作に回ることの方が多く、『ラッシュアワー3』(2007年)以来の監督作になりました。やはりコメディ系の作品の方が手慣れた感じがしますね。

 まぁ、ベン・スティーラーとエディ・マーフィの二人が出演してコメディにならない方が意外です。おまけにマシュー・ブロデリックも共演していますし。コメディ系の役者を揃えています。
 マシューは昨年末の『ニューイヤーズ・イブ』(2011年)のカメオ出演でお見かけしましたが、本格的に映画に出演しているのを観るのは『プロデューサーズ』(2005年)以来でしょうか(コメディ系の作品はビデオスルーになることが多い所為だ)。

 ベン、エディ、マシューの三人に加えて、彼らの仲間になる面々として、ケイシー・アフレック、ガボレイ・シディベ、マイケル・ペーニャといった皆さんが共演しております。
 ガボレイは『プレシャス』(2009年)のシリアス演技より、コメディ女優の方が向いているような気がしますねえ。

 ニューヨークのマンハッタンにそびえる高層マンション〈ザ・タワー〉に住んでいるのはセレブばかり。その最上階は大富豪ショウの住まうペントハウスになっている。
 このマンションの管理責任者として、住人達の便宜を図り、あらゆる要望に応え、万全の警備とサービスを維持しているのがベン・スティーラー。警備や清掃に携わる従業員達を統括するリーダーでもある。
 住人達からも、従業員達からも信頼の篤いベンの日常は非常に多忙。日夜の激務に耐えてキビキビ働く描写が小気味いいです。

 ある日突然、FBIが〈ザ・タワー〉に押しかけてくる。巨額の証券取引詐欺に絡む容疑でショウを逮捕しに来たのだ。
 唖然とするベン。彼は自分も含めた全従業員の年金の運用をショウに任せていたのだ。案の定、皆が積み立てた年金資金は、私的に流用されて影も形もない。
 間近に迫った引退後の年金生活を楽しみしていた勤続三〇年の老ドアマンが、絶望に駆られて自殺未遂事件を起こすに及び、ベンは失われた自分達の年金を取り戻そうと決意する。
 FBIから聞いたところでは、差し押さえられた富豪の口座から消えた二千万ドルが未発見であるという。その現金は最上階のペントハウスの何処かに隠されている筈だ。

 大富豪ショウを演じているのがアラン・アルダ。映画とTVドラマの両方で活躍されている方ですが、俳優だけでなく、脚本家や監督でもある人です。エミー賞に二一回もノミネートされ、五回の受賞。本作でもなるほど納得な名演技を披露してくれます。
 一見、人の良さそうな善人面をしていながら、実は腹の底の底まで真っ黒という大悪党。
 にっこり微笑みながら「私が君の貯金を三倍にしてあげよう」と云うと、悪党だと判っても、ともすればウカウカと信じてしまいそうになるくらい人好きのする善人オーラを発したりします。

 一般人との格の違いをまざまざと見せつけられても、ベンは引き下がれない。
 主人公が大金強奪を企画する動機が金銭欲からではなく、一緒にやって来た仲間達への責任感からだという設定が非常に好ましいですね。特によかれと思ってやった行為が裏目に出ている場合は尚更です。
 観ている側としては、文句なくベンを応援したくなります。
 長年、勤めてきたマネージャーとしての立場を利用し、ペントハウスへの業者の出入りを記録したデータを調べるベン。どこかにある筈の隠し金庫の位置を特定する推理が冴えています。

 とは云うものの、ベンの助けになるのは同じ従業員だったケイシー、マイケル。マシューは従業員ではありませんが、同様に富豪に財産をだまし取られたマンション住人(投資銀行の社員であり計算は得意)。
 決意は固いが、実際の盗みとなると手に余る。
 そこでその道のプロに助力を仰ごう──と云う展開は、ラトナー監督が制作を勤めた『モンスター上司』(2011年)と同じですね。

 指南役の盗みのプロとして登場するのが、エディ・マーフィ。実際はケチなコソ泥ですが、ベンの人脈ではそれが精一杯。それでも本業の先達として、ベンやマシューに泥棒の心得を伝授したり、覚悟を試したりする場面はなかなか面白いデス。
 賑わうショッピングセンターで「お前らここで五〇ドル以上の品物を万引きしてこい」と指令を発したりします。観ている側としては、そこで捕まったらどうするんだよとツッコミたくなる場面ですが、各自が思い思いの方法で様々な商品を万引きする場面はなかなかスリリングです(でもフツーは捕まるよなぁ)。

 〈ザ・タワー〉のメイドであるガボレイが、実は祖父譲りの錠前破り技能の持ち主という設定は、ちょっと御都合主義的にも感じられますが、何十人もの人種や年齢も雑多な従業員の中には、色んな経歴の人もいるのでしょう。

 設定上、もうひとつ不思議なのはベンとエディの関係でしょうか。
 ベンとエディは互いに御近所さんであり、定職に就いているベンは内心エディを軽蔑していたりします。エディの方もまた同様にベンのことをいけ好かない奴だ程度に見ている。
 それはいいのです。その関係を踏まえた上で、ベンが頭を下げて助力を請うワケですが、それだけでなく、実はベンとエディが幼馴染みだったという設定もある。これは物語の展開上、まったく意味がない蛇足デス。伏線でも何でもないのに、何故こんな関係をわざわざ付け加えるのか。

 着々と準備を整えていく一方で、計画実行にタイムリミットも設けられる。もはや猶予なし。
 決行日を定め、いざペントハウス攻略に望む素人泥棒たちであったが……。

 仲間のケイシーが警備責任者として敵側に寝返ったり、土壇場でエディがお宝を独り占めしようとしたりするといった、泥棒映画ではパターンなアクシデントも出来します。なかなか一筋縄では行きそうにない展開が面白いです。
 でもだからこそ、ベンとエディの間にはビジネスライクでドライな関係だけあった方がいいと思うのですが、これだとエディが幼馴染みでも平気で裏切る悪党──まぁ元からコソ泥ですが──に見えて、いまいち感情移入しづらいデス。
 結局、エディの裏切り行為自体が、結果的には助けになるという展開ですが、もう少し脚本は考えて戴きたかったです。

 ともあれ苦労して解錠した隠し金庫の中身が空っぽだったり、二千万ドルの隠し場所が意表を突いていたり、計画通りに進行しないのが楽しいです。もう計画の後半はアドリブで、その場で解決策をひねり出しながら進行させていくところがいい。
 グダグダになった強奪計画を強引に進めていくのが素人の怖いところですねえ。プロならあっさり諦めるか出直すところでしょうが、追いつめられた素人はナニするか判らないですねえ。

 またNYの風物詩として名高い感謝祭のパレードが計画に巧く取り込まれているのも興味深かったです。ニューヨーカーにはそんなに人気なのデスか。
 故意に決行日をパレード当日に選んで、喧騒に紛れて強奪するという図が、ロケーションの妙と相俟ってなかなか面白かったです。
 二転三転するクライマックス描写も泥棒映画の定番ですね。冒頭の従業員の紹介を兼ねた場面も、伏線として巧く活用されているし、真の悪党も最後には報いを受けるという描写も痛快でした。

 本作は役者のコミカルな演技で笑わせるのでは無く、シリアス・コメディな路線で、役者は皆さん真面目に演じておられる。
 ベン・スティーラーが真面目だというのは、前半で見せてくれる全力疾走のシーンでも判ります。もう『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』でトム・クルーズが見せた走りに勝るとも劣らぬ見事な走りっぷりでした(笑)。


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