京極夏彦の小説はどれもこれも分厚いので、〈京極堂〉シリーズ以外は手に出すのを控えておりましたが、『魍魎の匣』に次ぐアニメ化作品というので観に行きました。京極にしては珍しくSFらしいし。
それに劇場版で一気に観てしまえば、長ったらしい小説を読む手間が省けるというものデス。
……結果、余計にフラストレーションが溜まってしまいました(汗)。
原作があのとおり、新書版で六百頁近いというボリュームなのだから二時間の尺に納めるのは難しいのは判りますけど……。
端折りすぎて判らん!
確かに本筋「だけ」は理解できた。殺人事件も解決した。
だがその周辺の出来ごとは判らないことだらけで、気になって仕方がありません。
例えば、連続殺人事件の被害者に共通なアレとか……。
隠れた共通点があったというのは、ミステリとして定番というかお約束だし、京極夏彦はSFを書いてもやっぱりミステリ仕立てになるのだなあ──というところまではいいが、何故にそこから被害者を選んでいるのかが判らない。
だって結局、犯人は──(自主規制)──ったから殺していたのであって、それなら別にアレと関係していない人間を襲ったって良いではないデスか。
更に、「四年前の連続殺人事件」と今回の事件の関連について、まったく説明していない。いやまぁ、ドラマの展開として犯人は判ったし、動機も明らかにされたけど……。
犯人だけ明らかにされても困るんですけど!
明らかになったことだけ整理してみると、意外なほど説明の付かないことだらけで非常に困ります。原作を読まずに劇場に足を運んだ私のような観客は、こんなんでは満足できませんよ。
……それともフツーの観客は気にしないのだろうか。
いや、するだろ?(してほしい)
恐らく京極夏彦はその辺りもきちんと説明している筈でしょう。
やっぱり原作読まないとダメか! あんな分厚いのに!
しかもアニメ化に合わせて、続編の出版も企画されているとか。ぬう……。
監督は藤咲淳一でした。『攻殻機動隊SAC』や『BLOOD+』なんかのTVシリーズでは監督も務めたみたいですが、劇場版としてはこれが初監督作品だとか。
うーむ。『BLOOD+』がアレだったからなあ。
パンフレットの解説によると、まず脚本化に際して最初はノーカット版の脚本を書き、そこから尺に合うように削っていったそうな。まぁ、ノーカット版だと何時間あっても終わらないのでしょうが。
コレは削りすぎだろ。
もう、故意にカットして放置したとも思える。
近未来社会の描写なんかは、なかなか巧く出来ていたのになあ。
元々、小説執筆時の企画として、読者参加型というか、広く近未来的設定を募集して、それを繋ぎ合わせながら京極夏彦がプロットを構築していったそうな。その所為か、非常に「平均的な近未来像」でした(笑)。
映像化しても特に違和感ないし、特殊な設定はそれほど無いので、説明セリフもほとんどないし、判りやすいことは判りやすかったのですが……。
「女子高生でウィザード級の天才ハッカー」なんてキャラ設定は、ホントにアニメ化を前提としているとしか思えぬ(笑)。
劇中で、主人公達女子高生がバンドを組むという展開がありました。
原作の出版はもう十年前になるので、完全に『けいおん!』を先取りしているワケですが、今こうしてアニメ化されると「『けいおん!』みたい」とか云われてしまうのであろうか(笑)。
バンド活動がドラマ上、重要なのでアニメ化に際しても音楽については力を入れた演出が為されておりました。ちゃんと実在のガールズバンドに楽曲を提供してもらい、登場人物達がそれを唄うのである。
〈SCANDAL〉というバンドは存じませんでしたが、その方面では有名らしいですね。日本レコード大賞新人賞とか獲ってるそうですし。
但し、やはり楽曲提供だけに留めておけば良かったのに……。
脇役で、セリフは二言三言くらいしかないとはいえ、やはりミュージシャンに声優の真似事させると、そこだけドラマが浮いてしまう。
ホントにもう、素人の棒読み台詞は耐えられぬ(汗)。
プロダクションIGの制作だし、作画のクォリティについては問題ありません。まぁ、イマドキはCG作画がほとんどだからねえ、破綻のしようもないか。逆にあまりにもCGぽく、なめらかに動き過ぎな部分があって、違和感を感じるくらいです。
絵柄は……好みの分かれるところか。もうちょいリアル指向な画でも良かったとは思いますが。
ところで題名の『ルー=ガルー』についても、原作ではもうちょっと詳細に説明されているのだろうか。
アニメの中では「人の皮を被った狼=殺人鬼」という意味程度にしか言及されていませんでしたが……。
ああもう、あれやこれや考え始めると、やはり小説の方を読んで補完するしかないではないか!
ランキングに参加中です。お気に召されたならひとつ、応援クリックをお願いいたします。
にほんブログ村