2012年1月31日火曜日

ジョニー・イングリッシュ/気休めの報酬

(Johnny English Reborn)

 ローワン・アトキンソンと云えば昔、NHKで放送していた『Mr.ビーン』をポツポツとしか観ていないので、その劇場版二作品や、前作『ジョニー・イングリッシュ』(2003年)もスルーしておりました。
 よもや八年たって続編が制作されるとは。密かに人気があったのですか。
 そんなわけで、久しぶりにローワン・アトキンソンを観たわけですが、記憶の中の容貌より若干老けている。それは仕方ないか。「もう若くない」というのも、ネタのひとつでありますし。

 MI7の敏腕エージェントだったジョニーも今や過去の人である。モザンビークの大統領警護で大失態を演じて辞職して以降、人里離れたチベットの山奥で修行するという日々。
 しかしMI7の抱えるある重要案件で、情報提供者たっての希望から復職が叶う。
 様変わりしたMI7本部。知らない顔も随分と増え、上司は女性。色々と戸惑うことはあるものの、とにかく任務を帯びて香港へ。
 そこで掴んだ情報は、謎の暗殺集団〈ボルテックス〉が密かに中国首相の命を狙っているというものだった。近日中に開催される英中首脳会談までに、ジョニーは暗殺集団の正体を暴き、陰謀を阻止できるのか。

 予想したとおり、ゆるゆるなギャグが連発される「真面目なコメディ」で、それなりに楽しめました(爆笑するほどではありません)。
 基本は007のパロディですので、秘密兵器ネタもいろいろ。
 紹介されるヘンテコなアイテムの数々も007のノリとほとんど変わりません。特にロジャー・ムーアが007だった頃の雰囲気に似ています(あの頃のノンビリした雰囲気が懐かしい)。

 日本もネタにされていて、MI7本部が「日本の民間企業に運営を委託している」という設定があり、笑う前にちょっとホッとしました。
 あの東芝がMI7本部ビルに看板を出しており、受付嬢も「スパイの東芝でございます」などと応対している。
 よかった。まだ日本企業はネタに使ってもらえるのだ(一発ギャグだけですが)。
 これがあと数年もすれば、サムスンだとか、LGだとかの韓国企業にネタを持っていかれるのでありましょうか。ヘンなところで心配になりました。
 制作者の中に親日家がいるんですかね。ありがたいことです。

 上司が女性になるという設定も007と同じですが、本家Mがジュディー・デンチなのに対して、こちらはジリアン・アンダーソン。おお、『Xファイル』のスカリー捜査官ではないか。御無沙汰しておりました。
 他の共演者は、ドミニク・ウェストや、ロザムンド・パイク。
 ドミニクは『パニッシャー : ウォー・ゾーン』(2008年)で、パニッシャーの敵役となる顔面ツギハギのボスを演じておりましたが、今回は男前のままです。
 ロザムンドは本家の『007/ダイ・アナザーデイ』(2002年)にも出演しておりましたが、近年の『サロゲート』(2009年)でブルース・ウィリスの奥さんの役だった方が印象深い(『ダイ・アナザーデイ』はマドンナの主題歌とハル・ベリーしか記憶に残ってません)。

 香港で掴んだ情報は、〈ボルテックス〉の三人の幹部が持つアイテムを三つ合わせると、とある場所の鍵となり、そこに中国首相暗殺に使用する秘密兵器が納められていると云うものだった。アイテムを三つ揃えない限り、敵は秘密兵器を使用できない。
 早速、そのアイテムのひとつを入手するジョニーだったが、すったもんだの末、結局は敵に奪われてしまう(詰めが甘いというか)。三幹部の一人も口を封じられ、手掛かりは途絶える。
 しかし〈ボルテックス〉は、ジョニーの苦い思い出である(ほとんどトラウマ状態な)モザンビークの大統領暗殺にも関与していたという事実が判明する。手掛かりを求めてジョニーは思い出したくもない記憶を催眠療法で呼び覚まそうとするが……。

 「モザンビークで何があったの?」と訊かれる度に、ローワン・アトキンソンの瞼がピクピク痙攣して身体が硬直するというギャグが数回、挿入されます。顔面を使ったギャグというのも健在なようです。
 ゆるゆるなコメディ映画ですが、香港やスイスにちゃんとロケして、真面目に制作しています。無意味に豪勢と云うか。
 クライマックスでのスイスはともかく、前半の香港ロケにはあまり意味ないのではないかとも思えますが、「イギリス人が中国返還後の香港に行く」と云うのがネタのひとつになっているのでしょうか(あまりそうとは感じられませんけど)。

 ロザムンドの尽力により、次第に明らかになっていくモザンビークでの忌まわしい記憶(その割にジャグジー風呂で美女と戯れるなんぞというロジャー・ムーアへのオマージュみたいな場面もありますが)。
 実はジョニーはそこで〈ボルテックス〉の三人の幹部を目撃していたのだ。二人目の幹部の顔を思い出したジョニーは、今度こそ先手を打つべく急行するが、〈ボルテックス〉の放った刺客は執拗にジョニーを追い続けていた。

 ジョニーの命を狙う凄腕の刺客が、白髪のバアさんである、というのがギャグです。このバアさん、忘れた頃に現れては、襲いかかってくる。まるで『ピンクパンサー』でクルーゾー警部をつけ狙うケイトーの如し。
 バアさんに襲われては反撃に転じ、逃走するバアさんを取り押さえようとして、いつも途中で無関係な老婦人と誤認してしまうというのがパターンなギャグになっています。イマドキ老人虐待をネタにして大丈夫なのか。ローワン・アトキンソン、お婆さんにも容赦無しデス。

 ドタバタの末、二人目の幹部も口を封じられ、更に二個目のアイテムまで奪われて、面目丸つぶれのジョニー。しかし三人目の幹部は、MI7内部にいることが判明する。裏切り者は誰なのか。
 謎の核心に迫るジョニーだったが、敵の罠に嵌められ「ジョニー・イングリッシュこそ裏切り者である」との嫌疑をかけられ、自分が逃走する羽目に。
 英中首脳会談は目前に迫り、ジョニーは追われつつも、会談場所であるスイスへ向かう。

 気に入ったのはクライマックスで登場する英中首脳会談の場所ですね。スイス山中にあり、峻厳な山頂に建つ要塞。登坂不可能な断崖絶壁に囲まれた要塞へのアクセスは、ロープウェイがあるだけ。
 このロケーションを観て『荒鷲の要塞』(1968年)を彷彿といたしましたが、まさかそこまで考えているのでしょうか。
 雪原をスノーモービルで追跡したり、断崖絶壁からパラシュート降下するといった本家007に勝るとも劣らぬアクション場面もあります。当然、ロープウェイのゴンドラの中での大立ち回りも用意されています。
 ゆるゆるなコメディのくせに、なんだこの妙に真摯なアクション演出は。

 〈ボルテックス〉の秘密兵器とは、かつてCIAが開発し廃棄された筈の「洗脳ドラッグ」。モザンビークでもこれを使って大統領の側近を暗殺者に仕立て上げていたのだ。
 要塞に侵入し、裏切り者を暴き、カッコよく決めようとして、ドジを踏むジョニー。逆に自分が洗脳ドラッグを飲まされて暗殺者に仕立て上げられてしまう。
 だが中国首相を撃とうとした瞬間、チベットでの厳しい修行の成果が甦る。
 鍛え抜いた精神は洗脳ドラッグの効果に打ち勝ったのだ──但し、左半身だけ。
 暗殺を遂行しようとする右半身を、左半身が阻止しようとするアホな一人芝居をローワン・アトキンソンが熱く演じてくれます。芸達者ですねえ。

 ドタバタやっている割に、冒頭でのチベット修行がちゃんと伏線になっているあたり、脚本も真面目です。その分、いまいち大笑いできるようなコメディにならないのが辛いところでしょうか。
 様々な小ネタもあちこちに散りばめられていますが、一発ギャグだったり、出オチだったりするので、ストーリーとは深く関係しません。ゆるゆるなコメディが好きな方なら楽しめますが。
 最後の最後で、在位六〇年を迎えようという女王陛下までもギャグのネタにしてしまうあたり、英国人の自虐ネタは素晴らしいデスね。日本じゃ、出来ないよなあ、これは。

 エンドクレジットでオマケのネタまで披露してくれますが、どこで笑えばいいのかよく判りませんでした。芸が達者なのは判るのですが。
 ローワン・アトキンソンがペール・ギュント組曲4番「山の魔王の宮殿にて」のメロディに乗せて料理するという場面なのですが、本編からカットされたけど勿体ないからエンディングに突っ込んだんですかね?


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