2012年1月26日木曜日

ダーク・フェアリー

(Don't Be Afraid of the Dark)

 往年のB級ホラー『地下室の魔物』(1973年)をリメイクしたのが本作。長年リメイクの機会を窺っていたというのが、『ヘルボーイ』(2004年)や『パンズ・ラビリンス』(2006年)のギレルモ・デル・トロ。自分で脚本を書いてますが、今回はデル・トロは制作に回り、監督はコミック・アーティスト出身のトロイ・ニクシーに任せています(初監督作品)。
 でもデル・トロが関わっているので安心して観ていられるホラー・ファンタジーです。

 古い洋館の地下に巣くう邪悪な妖精「トゥースフェアリー」が人間を襲うという、実にオーソドックスな物語です。
 新生活を始めようと引っ越してきた家は、実は曰く付きのワケあり物件で、幽霊とか、悪霊とか、魔物とかの巣窟だった──と、云うホラー映画定番な設定が忠実に守られています。一切、ヒネリなしというのが清々しい。
 オリジナル版を尊重し、古典的なイメージが大事にされているのが判ります。ホラーと云うよりも怪奇映画と呼ぶのが正しいのかも。

 本来のトゥースフェアリーは、乳歯が抜けた子供の家にやって来て、抜けた歯とコインを交換してくれる可愛らしい小人さんの筈ですが、デル・トロ的解釈は違うようで。
 『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008年)でも、トゥースフェアリーは群れなす奇怪な昆虫のような描写でしたし。これはデル・トロの趣味なんですかね。
 本作のトゥースフェアリーもまた人間の歯や骨を好んで喰らう生物であると描かれます。特に子供の歯が好み。
 暗闇の中でひそひそと会話しながら、カサコソと移動する得体の知れない生物。直立したネズミのようであり(尻尾はない)、道具を操り、ときには四つん這いで徘徊する。悪意に満ちており、当然ですが、まったく可愛くありません。
 その意味では、フェアリーなんぞと呼ぶよりも、まさに「魔物」と呼ぶに相応しい。

 古典的な演出に則り、前半では彼らは姿を現しません。声だけ、影だけ、痕跡だけといった演出が思わせぶりでいいですね。
 後半になるとチラチラと姿を現し始め、クライマックスではCG全開となり、ワラワラと団体さんで登場します。もう堂々と人間を襲い始めるのが、『グレムリン』を彷彿とさせます。

 本作の主演はガイ・ピアースでも、ケイティ・ホームズでもなく、ベイリー・マディソンちゃん。
 子役の少女が可愛らしいというのが、『パンズ・ラビリンス』と同じく本作の肝でありますね。
 オリジナル版では成人女性が魔物達に狙われる設定でしたが、リメイクに際して小学校低学年の女の子に変更するあたりに、デル・トロの趣味が現れていますね。私も全面的にこれを支持いたします(笑)。

 舞台は米国ロードアイランド州。
 ガイ・ピアースの仕事は、古い家屋を改装して販売するという不動産業。妻とは別居状態で、インテリア・デザイナーであるケイティ・ホームズを公私にわたるパートナーとしている。
 今、手掛けているのは、有名な画家であったブラックウッド卿の館。かつてこの館では、卿の幼い息子が失踪する惨劇が発生し、次いで卿自身も失踪したという経緯がある。以来、買い手のつかないまま長期間放置されていた館を、ガイはリフォームして販売しようという心算。
 そこへ一人娘の少女がやってくる。母親から厄介払い同然に送られてきた様子で、沈んで心を閉ざし、なかなか気難しい。
 父であるガイも娘を愛してはいるけれど、仕事が忙しくてなかなか気が回らず、イマイチ打ち解けない。少女の方は、もう両親の関係がどうなっているのか理解しており、親にたらい回しにされている状況に気がついている。
 なかなか人に馴染めない心理状態であるところを、魔物達につけ込まれてしまうという寸法。

 遊び相手のいないまま、屋敷の敷地を探検するうちに、少女は隠されていた秘密の地下室を見つける。地下室はかつてブラックウッド卿のアトリエとして使用されていた部屋だった。
 アトリエの片隅にある暖炉は厳重に鉄格子で封印されていたが、その奥から聞こえる得体の知れない声に呼ばれ、こっそりと少女は鉄格子のボルトを外し、封印を解いてしまう。
 その日から館の中を「何か」が徘徊し始める……。

 音響設備の良い劇場で鑑賞しましたので、不気味な囁き声や、カサコソと動き回る魔物共の物音が四方から聞こえてきたりして、効果を発揮しておりました。職人芸な音響設計です。

 悪質な悪戯行為が発生し、少女の行動が疑われる。どんなに無実を主張しても信じてもらえない。父親も娘に虚言癖があると思い込んでしまい、ますます少女は孤立していく。
 お約束な展開がキッチリ守られていく安定した演出です。
 お約束と云えば、「祖父の代から屋敷を管理してきた」という館の管理人の老人(ジャック・トンプソン)がいい味出しています。明らかに、何かを知っていながら隠している。もう怪しさが炸裂しまくり(笑)。
 無論、「妖精の仕業よ」という少女の主張が正しいことも老人には判っている──というのが観ている側にはバレバレなのですが、それがいい。
 ガイ・ピアースの頭の固さがいっそう際立ちます。
 本作では父親がなかなか娘を信じようとしません。娘を愛しているなら、半信半疑でも何か手を打ちそうなものだろうに、ガイのボンクラぶりは最後まで貫かれます。

 逆に、愛人であるケイティの方が、何かがおかしいことに先に気が付くとは。パパ、もうちょいしっかりしてくれよ!
 管理人の老人は誰にも気付かれないうちに、一人で地下室の暖炉をまた鉄格子で塞ごうとするが、もはや手遅れ。魔物達の逆襲を喰らって病院送り。このあたりの描写が怖いデス。
 小さな生物でも、ハサミやナイフを持って、物陰から足を切りつけてくる。倒れたらもう最後。群がってくる軍団に為す術も無く切られるわ、刺されるわ、もう血まみれ。

 病院に老人を見舞ったケイティは、街の図書館にある古い記録を探すよう告げられる。
 このあたりの、単刀直入に真相を語らないもどかしい演出が趣深いデス。ズバーッと語れば良さそうなものなのに、そう簡単には明かさない。
 「あの子を屋敷の中に置いておいてはいけない。早く連れ出すのだ」と、警告しながら、はっきり理由を語らない老人(いや、まぁ、重傷を負って息も絶え絶えなんですよ)。かゆいところに手が届きそうで届かないもどかしさが楽しいデスね。
 図書館の司書は、一般公開しないことを条件に、ブラックウッド卿の遺族が寄贈した遺品の数々をケイティに見せてくれる。写実主義で有名だった画家が、失踪前に描いたスケッチの数々には驚くべきものが描かれていた。

 真相に迫ったケイティは、直ちに少女を屋敷から避難させてと主張するが、間の悪いことにその夜にはブラックウッド邸修復完成パーティーが予定されており、ガイは何人ものスポンサー達を迎えて晩餐の準備に余念が無い。
 じきに館には何人もの来賓客がやってきて……。
 このパーティが無事に済む筈が無かろうと云うのは、容易に想像できますね。
 案の定、大騒ぎになって、一気に怒濤のクライマックスへ。

 少女を地底へ引きずり込もうとする魔物共と戦うケイティ。ガイはほとんど助けになりません(もっと頑張れ、パパ)。
 結構、スリリングな攻防戦の末、ようやくガイは娘を助け出すのですが……。
 オリジナル版を踏まえての演出なので、結末はちょっと不思議で後味の悪いラストでしたねえ。うーむ。ケイティ、それでいいのか?




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