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2011年11月4日金曜日

サラリーマンNEO 劇場版(笑)

for the new age of office workers

 人気コント番組のネタを基にした映画化作品と云うと『ブルース・ブラザーズ』(1980年)とか『ウェインズ・ワールド』(1992年)なんてのが思い浮かびますが、まさか日本でも似たような企画で映画化が行われるとは思いも寄りませんでした(昔、ザ・ドリフターズの出演するコメディ映画を観た覚えがあるくらいか)。「サタデーナイト・ライブ」もビックリやね。
 しかもNHKの番組で。冒頭でネオミさんが仰るとおり、無謀という他ありません。

 とは云え、『サラリーマンNEO』は2007年と2008年の二年連続で国際エミー賞コメディ部門にノミネートされていたそうですから、品質については問題はないデスね。
 余談ですが、2009年にはNHK BS2で放送された『星新一ショートショート』が、同賞を受賞していますね。さすがNHKと云うべきか。
 『サラリーマンNEO』の成功は、民放のコント番組との差別化を図るために舞台系の役者を主に起用したというのが、成功の鍵だったとか。最初から映画化向きではあったのか。
 実はTVの方は全シーズン欠かさず観ていたワケではなく、ほとんどポツポツと摘みながら、たまに観ていた程度ですが、まったく基のコントを知らない方でも楽しめるような作りになっています。

 主演は小池徹平。「ブラックな企業に勤めて災難に遭う新入社員」という役は、もはや彼の十八番なのか(いや、株式会社ネオビールはそれほどブラックではありませんが、奇妙な会社ではあります)。
 上司となる課長役が生瀬勝久。最近、この人をあちこちの映画でよくお見かけします。『はやぶさ/HAYABUSA』や『ステキな金縛り』でも見かけました(でも本作が真打ちか)。
 その他には、番組のレギュラー陣ももちろん大挙して出演しています。沢村一樹、入江雅人、田口浩正、中越典子、堀内敬子、平泉成……。伊東四朗もいます。
 コントの内容と劇中のドラマの配役が重複して、一人で何役も演じている方がおられます。芸達者な方がそろっていますね。
 監督はTVシリーズと同じ吉田照幸。

 実は結構、面白かったです。思っていたよりマトモでした。一本の長編映画としてちゃんと形になっています。
 いや、TVシリーズと同じような、ナンセンスでシュールなオムニバス形式のコメディ映画を想像していたのですが。意外と地に足の着いた物語になっていました。

 冴えない若者(小池徹平)が入社した中堅ビール会社で起こる騒動を描いた物語。
 同期の新人がもの凄い老け顔だったり(「大いなる新人」)、職場の先輩がヘタレの「川上くん」だったり、OLのお姉さん達がヤンキーな「欧愛留(OL)夜叉」だったりと云う、TVシリーズのネタが随所に散りばめられています。

 くる年もくる年も業界五位に甘んじ、大手ビール会社である大黒ビール──ヱビスじゃないのか(笑)──の後塵を拝していたNEOビール。
 社長同士のゴルフ・コンペで、大黒ビール社長(大杉漣)に屈辱を舐めさせられたNEOビール社長(伊東四朗)は、遂に我慢の限界に達し、打倒大黒ビールを目指した商品開発指令を発する。
 無理矢理、案を出せと迫られた小池徹平が、ほとんど思いつきで出した「セクシーなビール」というアイデアが採用され、本人の思惑を越えた商品開発プロジェクトが進行していく。
 そこへNEOビールを快く思わない大手広告代理店の横槍で、大黒ビールにアイデアを剽窃されるという事件が発生し、新商品開発プロジェクトは危機的状況を迎えるのだが……。

 この商品開発の場面が、意外なほどマトモです。かなり真面目に行われており、あまりギャグの要素は見受けられません。
 まぁ、試作品を試飲させられた「白石夫妻」というネタ──御無沙汰だった夫婦生活が、いきなり情熱的になり過ぎたり──であるとか、成分にアマゾンに咲く怪しげな植物を使ったりとかしておりますが、基本はシリアスですね。
 ちゃんと真面目に企画会議で検討しながら、商品キャラクターまで作っている(それが例のアノ部長だったりします)。

 小池徹平がなかなか頑張っており、社会に出て働くとはどういうことかという物語を体現しています。
 サラリーマンは理不尽な事にも耐えなければならないのである。何故なら、それがサラリーマンというものであるからだ。社会に出てある程度、年数の経過している観客なら、大いに頷けることでしょう。

 「これからお前は毎日、七時出社だ」
 「そんな。何故ですか?」
 「それはお前が……サラリーマンだからだ」

 ほとんど理由になってませんが(笑)。
 最初のうちは、あまりの理不尽にやる気が出ずに早々と転職を考え始めたりしていた小池徹平が、次第に真剣になっていく過程が巧く描写されています。
 それを象徴するのが、仕事帰りにゲームセンターでプレイする「太鼓の達人」。
 転職を考えている頃は、小池徹平もなんか浮ついており、ドヤ顔で太鼓を叩いて、周囲から逆に失笑を買っておりましたが、仕事に悩み、真剣になっていくに連れて周囲のギャラリーなど眼に入らなくなる。するとギャラリーが増えてくる。
 最後にはギャラリーから賞賛を浴びるまでになるのですが、その頃にはもう目立ちたいなんぞという気持ちは消え失せている。
 雑念を捨てた男の姿こそカッコいい。

 居酒屋で生瀬勝久が小池徹平に説教する場面も印象的でした。
 「今を懸命に生きろ」、「人生は思っているよりも短い」、「人生、何が起きるか判らない」などと為になる説教をしてくれる課長の言葉が、実はすべて何かの受け売りだったというオチが付くのですが、いいこと云っているのだから黙って聞いておきましょう。
 これはひょっとして『ユージュアル・サスペクツ』のパロディなのでしょうか(笑)。

 アイデアを剽窃した大黒ビールが先に「セクシー・ビール」という名称を発表したが為に、同じ名前を使うことが出来なくなった末に、あの言葉が誕生するといった経緯も物語の中でキチンと説明されています。
 “SEXY” は「セクシー」じゃない。「セクスィー」なんだ!
 かくして新商品は「セクスィー・ビール」となり、郷ひろみをCMキャラクターに抜擢する(ちゃんと郷ひろみが本人役で出演してます)ところまで漕ぎ着けるものの、そこでまた大黒ビールの妨害工作に遭い、クライマックスの新商品発表イベントの席上の土壇場で生まれる「セクスィー部長」のシーンが圧巻です。
 やはり『サラリーマンNEO』と云えば、この人でしょう。そう、セクスィーは祈り。
 ちゃんとアノ台詞も決めてくれます。

 「ビジネスと色恋を一緒になさらぬよう!」

 万事丸く収まり、ハッピーエンドを迎えたままエンドクレジットが流れ始めたところで、今度は「映画を読む」のコントが入ります。最後までネタを詰め込もうという姿勢が素晴らしいデスね。
 続編は製作されないものか。もうビール会社の物語でなく、別ものでも構いません。
 次は「セクスィー常務」も登場させてほしいデス(ちゃんと草刈正雄で)。


笑顔にカンパイ!
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