二丁拳銃を撃ちまくりながら「てめぇらにゃ黙秘権があるが、悲鳴を聞かせやがれ!」と突撃するサミーの勇姿が素晴らしすぎる。
是非、この二人を主役にしたまま痛快ポリス・アクション映画で突き進んでもらいたかった。
激烈カーチェイスの果てに犯人逮捕。刑事部屋に戻ってくると、同僚達が拍手で迎えてくれる。決して主役になれないアザー・ガイズ(その他大勢)な刑事達。
その中にいるのが、ウィル・フェレルとマーク・ウォルバーグ。実はこっちが今作の主役なのでした。
デスクワーク大好きで決して現場に出ない引き籠もり刑事と、正義を貫こうとするとドジを踏む熱血空回り刑事のコンビ。
フツーなら絶対に主役になれない二人が、たまたま引き当てた大事件。巨額の金融詐欺を企む巨悪に立ち向かう──というか、立ち向かってしまった。
大丈夫なのか?
ウィル・フェレルはともかく、マーク・ウォルバーグがコメディ映画に出演するというのがビックリ。なんか似合わんなぁ。
序盤は結構、笑えたのですが。それはサミュエル・ジャクソンが出ている間だけでした。
この「フツーのポリス・アクションなら主役の刑事コンビ」が実にバカな殉職を遂げるのが最大のギャグ。殉職した瞬間はホントに大笑い。
主役ならビルから飛び降りても、何らかの救済策が発動するものデスが、ここでは発動しなかった。当然の帰結として墜落死。物理の法則には逆らえないのデス。それにしても何とも間抜けな死にざまでした。
かくして空席となった花形刑事の座を巡って、その他大勢の刑事達がしのぎを削り始めるのであるが……。
やる気十分のマークに対して、相棒のウィルはさっぱり動こうとしない。『S.W.A.T.』のテーマを鼻歌で歌いながら書類仕事ばかりしている。
しかも乗り回している車はトヨタのプリウスである。誠に刑事らしくない(笑)。
コメディなのはいいが、刑事の私生活に関するネタを頻繁に出してくるので、ドラマの展開が遅く感じられてしまいます。
例えば、マーク・ウォルバーグはバレエが踊れる(結構、上手に踊るので、それはそれで見事なのですが)。だからサブタイトルに「踊るハイパー刑事」と付くのもあながち嘘ではない。でも、それがただの一発ネタというのが哀しい。
本筋となる事件の捜査と、「刑事が踊れる」ことには何の関係もない。クライマックスの犯人逮捕とかで、役に立つというのならともかく。
マーク・ウォルバーグがバレエを踊る。すごい。でもそれだけ。
他にも、ウィル・フェレルが顔に似合わずモテる、というネタもある。理由はない。とにかく元カノは美人だわ、奥さんは超絶に美人だわ、道行けば美人から逆ナンパされるわ、どうしてこんな野郎がモテるのかさっぱり判らん。
しかも本人は仕事の邪魔になるだけだと、美人の誘いを邪険に断るばかり。マークでなくても世の不条理を感じる。モッタイナイお化けが出るぞ。
でもこれも本筋とは一切、関係ない。
こんな調子で一発ネタとか出オチのギャグが続くので、その瞬間は可笑しくても、物語としての連続性が無いので、事件の捜査がブツ切りになっているように感じられる。
なんとも残念なコメディでした。
マイケル・キートンまで出演しているというのに。キートンはここではデカ長の警部。彼には息子がバイ・セクシャルであるという悩みがあるのだが、これまたドラマとは無関係のネタ。
更にこの警部、意識せずに口にするセリフが、TLCというバンドの歌詞のフレーズばかりというギャグの持ち主。でも日本人には判りづらい(私が音楽方面に疎い所為もあるか)。
何となく「無意識に『機動戦士ガンダム』の名台詞を引用している」ようなものなのかなあという雰囲気は判りますが……。
悪党の手先となるマッチョが、レイ・スティーヴンソン。『パニッシャー:ウォーゾーン』では主役でしたが、やっぱり悪党面ですから手下役がハマリ役なのは仕方ないのか。『ザ・ウォーカー』でもそうだったし。
巨額の金融詐欺事件というのが、ちょっとフツーのポリス・アクション映画とは毛色の違うところなんですがね。理不尽な金融界に正義の鉄槌を喰らわそうというあたりに、米国の現状を皮肉った脚本であることが伺えるのですが……。
結局、直接のワルだった悪徳投資銀行家は逮捕するものの、裏で糸を引いていた巨大企業は生き延びる。「巨悪は経済破綻しても救済される」という苦い現実。うーむ。なんかスッキリしませんねえ。
コメディの筈なのですがねえ。
エンド・クレジットで紹介される幾つかの事実がモロに『キャピタリズム/マネーは踊る』や『インサイド・ジョブ/世界不況の知られざる真実』等の金融ネタのドキュメンタリさながらなので苦笑してしまいました。しかしここは笑うところなのか。
なんかアカデミックな部分が透けて見えるあたりに、大笑いできない……。
監督はアダム・マッケイ。『サタデー・ナイト・ライブ』のメインライターで、フェレル主演のコメディ映画『俺たちニュースキャスター』(2004年)等の監督してきたお方ですね。
ウィル・フェレルも、アホでマヌケなブッシュ大統領のモノマネを得意としているひとなので、下品な下ネタばかりでは無いと云うのは判りますが、下ネタから離れると今度は直感的に判りにくいギャグばかりになってしまうというのは如何なものか。
カーチェイスもそれなりに頑張っているのですがねえ。どうせならプリウスが獅子奮迅の活躍を見せて、「エコカーをナメるんじゃねェ!」くらいのタンカを切ってくれれば楽しかったのですが。
惹句にある「全米興行成績ランキングで『インセプション』を抜いて、初登場ナンバーワンとなり、以後六週間にわたりトップテン内をキープ」というのはホンマかいなと、首を傾げたくなります。
しかしイマイチなコメディ映画でも吹替版で観ると、また違った印象になったりするので侮れません。
その昔、『ドラグネット/正義一直線』(1987年)を劇場で観たとき、イマイチな映画であると云う感想を抱いたものでした。しかしその後、TVで放映されたとき、何の気なしに観始め、なんかオカシくてクスクス笑いっ放しでした。
まぁ、あれはダン・エイクロイドが広川太一郎、トム・ハンクスが井上和彦でしたからねえ。
この『アザー・ガイズ』はどうかな。ウィルの吹替は山路和弘か山寺宏一、マークは森川智之か咲野俊介あたりでしょうか。是非、吹替版に期待したいです。
映画「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」 (S.W.A.T.のテーマ)
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