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2011年9月10日土曜日

グリーン・ランタン (3D)

(GREEN LANTERN)

 約百億年前、宇宙で最初の文明を築いた不死の種族は、宇宙平和維持機構を創設した。全宇宙を三千六百のセクターに分割し、各セクターの知的種族から選ばれた三千六百人の勇士が常時、悪の活動に目を光らせている。
 悪の力を崇める者よ、我が力を畏れよ。グリーン・ランタンの光をッ! ──と云う設定が、あからさまにE.E.スミスの〈レンズマン〉シリーズを彷彿とさせるのですが、いいのかしら。

 マーベル・コミックスと双璧を成すアメコミの雄DCコミックス(こっちの方が老舗なのですが)の映画化作品ですね。マーベルの方は各作品の映画化は順調に進行しているのに、何故かDCの方は『バットマン』以外は軒並み残念なことになっている。あの『スーパーマン』でさえも、なかなか巧くいかないようで。
 マーベルは着々と『アベンジャーズ』映画化に向けた準備を整えているというのに。DCが『ジャスティス・リーグ』を映画化できる日は来るのでしょうか。

 監督はマーティン・キャンベル。つい最近はメル・ギブソン主演の『復讐捜査線』を観ました。このところのキャンベル監督作品はイマイチなものが多い。どうしたことか。

 冒頭、基本設定を何もかもナレーションで説明した後は、いきなり太古に封印された邪悪な精神体パララックスが復活するところから始まります。超お約束。
 そして話は飛んで、しばらくは地球での主人公紹介が続くのですが……。
 主人公が空軍のテスト・パイロットである紹介部分はともかく、人工知能搭載の最新鋭機との模擬戦闘は、特に無くても良かったような。本筋にこの無人機が絡んでくるならともかく、関係ないのだから省略しても良さげなものだったと思うのです。
 ここで必要なのは「父親もテストパイロットだったこと」と「父の事故を目の当たりにしたトラウマに今も苦しんでいること」の二点だけの筈では……。

 映像的には文句なしデス。いやもうCG特撮はすごいね。
 配役もそれなりでしょう。
 主役のハル・ジョーダン役にライアン・レイノルズ。『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』でヒュー・ジャックマンの敵役だったり、『あなたは私の婿になる』でサンドラ・ブロックの相手役だったお兄さんか。なかなか愉快なイケメンです。
 ヒロイン、キャロル役がブレイク・ライブリー。
 パララックスに取り憑かれて敵となるヘクター役がピーター・サースガード。
 他にもマーク・ストロングや、ティム・ロビンスが脇を固めてくれて安定しています。
 やはり問題は脚本か。アメコミ・ヒーローの映画化は、出だしで躓くケースが多いですなあ。

 地球に不時着した瀕死の異星人から、パワーを受け継ぐと云う設定が、アメコミには珍しい。むしろ日本のヒーローものにありがちな設定のように思えます。
 そう云えばグリーン・ランタンの決め台詞も日本のヒーローものぽい。あの誓約の文言は、ピンチから逆転するときに唱えるというのがパターンらしく、この映画でも踏襲されていますね。
 アレは結構、カッコいいのですが。

 大宇宙に於いては、グリーンの光は「意志の力」を表す。イエローが「恐怖」を表し、他にも七色あって、全部で九種類だそうですが、今回は二色だけ。
 正義がグリーンで、悪がイエローという単純な色分けは如何なものかと思いますが、判り易くはあるか。
 意志の力を自在に操るのが、グリーン・ランタン。精神力で物質生成までやってのけるという、まさに魔法のような科学力。
 その一方で、意志を挫くものが「恐怖」である。恐怖は心を萎縮させ、行動を鈍らせ、力を弱めてしまう。グリーン・ランタンたるもの、恐怖を克服しなければならぬ。
 人はそれを「勇気」と呼ぶ。

 原作コミックスは歴史がありすぎて、どこから始めればいいのか制作者としても迷うところがあったのでしょうか。とりあえずSFになった二代目の初期のエピソードから。
 なので最大の宿敵シネストロ(マーク・ストロング)が、まだランタン・コァのリーダーだったりします。知っている人は「いつ裏切るのかなあ」とニヤニヤ出来るのでしょうが、今回はそのまま主人公の味方。まずは師弟関係の構築から始めないとね(笑)。

 続編への仕込みが随所に見受けられるのですが、逆にその所為でドラマのテンポが落ちているような気がします。今回のパララックスのエピソードと、シネストロがランタン・コァを裏切るエピソードは別物だと思うのデスが。
 結局、対パララックスの為に作られたイエローのパワーリングは使用されることなくお蔵入り。一件落着した後、ラストでやっとシネストロが誘惑に負けてイエロー・リングを指に嵌めるところで「つづく」。もうあからさまに第一作は序章でしたと云わんがばかり。マーク・ストロングはまた悪役になるのか(笑)。
 しかし指輪の力の誘惑に負けて……って、これは『指輪物語』ですか。

 未使用に終わったイエロー・リングの顛末より、もっと主要キャラの関係を説明して欲しい。
 そもそも主人公ハルとキャロル、そして悪の手先になるヘクターは三人とも子供の頃から友達なのであるが、なかなかその設定が紹介されない。無人戦闘機との模擬戦闘なんかより、幼少時から一緒だった三人の少年少女のうち、ハルとキャロルがペアとなり、告白する前に玉砕したヘクターは内向的オタク学者になっていく過程を説明しておくべきでした。後になってから「実は三人とも知り合いでした」なんて描写は不自然だと思うのですが……。
 「ヒーローと悪役がヒロインを挟んで三角関係になる」という図式をもっと前面に押し出していれば、ヘクターの悲劇的な側面が強調されて、より泣ける展開になったと思うのに。
 ヘクター役のピーター・サースガードの演技はなかなか良かったデス。役者は頑張っているのになぁ。

 CGでコスチュームを表現した衣装デザインも面白いです。単なるタイツや、ボディスーツではない、身体組織の一部のような描写が斬新でした。
 でも、あのマスクは意味ナシやね。あの程度のマスクで正体を隠せると思うあたりに、宇宙最古の知性体はホントに大丈夫なのかと疑いたくなります。
 案の定、幼馴染みのキャロルには即バレ。この場面は実に笑える。
 まぁ、色々とツッコミ始めるとキリが無いデスね(笑)。
 有名コミックスが原作だと、思うように改変できないのが辛いところなのでしょうか。

 基本的に徒手空拳のグリーン・ランタンの戦い方は、その場で何でも作り出しちゃうという方法で、戦闘シーンの演出としては楽しいです。
 すべてがイメージであり、物質化する道具も持ち主の性格をよく表している。
 ハルには子供っぽい部分があるので、咄嗟にイメージするのも巨大な玩具というパターンが多い。次から次へあり得ないものを物質化させながら戦う図というのが楽しい。

 CG全開の3D映画なので吹替版で観ました。
 松本保典や甲斐田裕子といった声優さんが起用されているのは嬉しい。字幕版だとジェフリー・ラッシュや、マイケル・クラーク・ダンカンの声が聴けますが、それよりは玄田哲章ボイスの方が楽しいか。
 吹替版最大の笑い処は宇宙大魔王パララックスが内海賢二であることですかね。もう定番な配役なので嬉しくなりました。飯塚昭三でも良かったのですが(笑)。

 とりあえず続編の製作は決定したそうなので、一安心。




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