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2011年6月21日火曜日

スカイライン/征服

(SKYLINE)

 監督は『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』のグレッグ(兄)&コリン(弟)・ストラウス兄弟でしたか。特撮畑出身の監督らしい、B級SF映画デスね。
 問答無用で説明なんて一切しない展開が実に潔いデス。
 『ビッグ・バグズ・パニック』なんかと同じく「やりたいことだけやりました」という姿勢が清々しい。
 なんか『パラノーマル・アクティビティ』が随分と羨ましかったらしく、俺達も誰にも指図されずに映画が撮りたかった旨の発言をしておりました。

 その結果が「製作費一千万ドルの低予算SF映画」。一千万ドルで低予算か。邦画だったら、結構な大作になるくらいなのですが、スケールが違いますね。
 予算はほぼ全て特撮に注ぎ込んだのでしょうねえ。
 なんか脚本を書いた人がカメラ操作までしていたり、ロケ現場のマンションは監督(グレッグ)の自宅らしいし、出来るだけ金をかけずに済ませようという姿勢が涙ぐましい。でもアレが監督の自宅だとすると、結構いいトコに住んでいるんだなあ。
 さすがハリウッド。

 しかし削れる部分は極力削るが、撮影用のカメラには惜しみなく最新のものを用意したりしている。技術的な部分はケチらないという方針だったから、あれだけのものが完成したのですかね。

 とにかくある日、イキナリ侵略が開始されるのである。
 予兆も前兆も一切無し。ある晩、LA市街に光が降り注ぐというイキナリなOPからしてB級全開。これから侵略が始まりますよー。
 しかも宇宙人の目的が、破壊でも支配でもなく、人間の収穫である。ここまで堂々と拉致・誘拐を実行する宇宙人というのも珍しいわな。普通なら、人知れず人間社会に浸透して、気付かれないように拉致していくというパターンになると思うのデスが。
 夜が明けたときにはLA全域がほぼゴーストタウン化しているという設定が秀逸です。出来るだけ登場人物を少なくしようと苦心していますね。

 登場人物は少なく、しかもほぼ無名な俳優さんばかり。エリック・バルフォーとかスコッティ・トンプソンとか云われましても……。多分、どこかで見かけてはいるのでしょう。色々と海外TVドラマにも出演しているみたいですし(汗)。
 どうにも無名の俳優さんばかりなので、誰が生き残るのかさっぱり判らないのもB級ですね。

 そして更に、晩のうちに収穫し損なった人々までを取りこぼすまいと、第二次収穫部隊が降下してくる。
 昼日中、堂々と円盤が降下してきて、まだ残っていた人達を片っ端から吸い上げていく。容赦無しですな。
 おかげで街の破壊シーンが無い。爆発もビルの倒壊も無い。低予算ならではの、実に静かで手際の良い侵略デス。いい仕事してるわ。

 その代わりに、降下してきた円盤とか、宇宙人の生体兵器らしいクリーチャーがウネウネと触手を動かしながら飛んでくる場面は良くできてます。デザインが深海魚ぽいのもイイ感じ。
 まあ、雲間から高層ビルの上空に円盤がドーンと現れるというのは『インデペンデンス・デイ』でお馴染みの光景ですがね。
 これは一般市民視点だけで進行していく『インデペンデンス・デイ』とも云える。侵略から数日間の出来事の描写というのも同じ。
 パンフレットにあった「無謀なほど壮大な低予算SF」という解説記事がぴったりです。

 高層マンションの外へ出たら襲われる、或いは窓から姿を見せるだけでもNGなので、基本的に物語は高層マンションからほとんど外へ出ません。少人数の生存者がスーパーマーケットに立て籠もる『ゾンビ』みたいなパターン。
 少ない登場人物だけでドラマを進行させようと脚本が苦心しているのが感じられます。
 その分、キャラの相関関係が丁寧に描かれていますが、追い詰められた人間達の極限状態の心理描写という部分にまでは至らない。B級ですし、人間の暗部を描くよりも、宇宙人のクリーチャーと戦う方を描きたいんじゃあッと云う姿勢はよーく理解できます。『ゾンビ』のような文明批判もするつもりナシ。
 なんだかんだ云っても怪獣映画が好きなんだしね。

 マンションから脱出できないけれど、マンション内の設備は可能な限り活用して画面が単調にならないようにしようと苦心しているのが感じられます。住居区画だけでなく、プール、地下駐車場、屋上ヘリポート等と垂直に移動しまくり。結構、疲れるだろうに。

 クリーチャーの方も、一種類だけでなくタイプの異なるものを各種用意しています。最大のゴリラ型の登場シーンにはびっくりしました。
 特撮CGはかなり気合いが入った見事なものですが、思ったよりも画面に頻繁に登場しない。観客に印象づけた後は、効果音だけで存在を感じさせたりして、低予算で頑張ろうとしています。

 そうは云っても地味な展開に終始するのも如何なものか──と、思っていたら侵略第三日目になって軍隊も出動。戦闘機部隊と艦載機のドッグファイトとか、お約束の戦闘シーンも外さず見せてくれます。うむうむ。特撮映画はこうでないと。
 ドッグファイトはかなり『インデペンデンス・デイ』を意識したような映像になっていましたが、オーソドックスな描写ではあるか。
 そして核攻撃。
 明らかに核弾頭がブチ込まれる。いやぁ、市街地の真上で容赦なしですな。爆風と衝撃波の描写は凄いが、いいのかよ。まぁ、核攻撃の描写がちょっとお手軽というのもB級か。アノ程度で済むはずはないと思うですが……。
 この後に続く展開も、鉄板とも云える流れで嬉しいのですがねえ。そうそう。核攻撃程度でヤラレてしまっては困ります。

 とは云うものの、全体的な事件全貌については相変わらず蚊帳の外状態なので、何か他に打つ手はあるのかとか、敵の弱点が判るのかと云った疑問にはさっぱり回答が無い。
 このままでは尺も尽きてしまうのに、ドラマがサッパリ収束しそうにない。どうするのだと思っていたら……あの展開には意表を突かれました。
 散々、エイリアンの光線を浴びているうちに、主人公の体調に異変が生じるというのが伏線だったのか。抵抗力が付いたと云うか、慣れちゃったのかのな。

 しかしこれはまた永井豪の『デビルマン』ですね。
 監督自身が「これは誕生篇ね」と云い切ってるし! 続くのかよ!
 異形のヒーローとなった主人公の運命や如何に。

 それにしてもエンディングで予算が尽きたことがバレバレな演出に苦笑してしまいました。あれほど見事にCGを駆使していたのに、エンディングがフィギュアを使ったジオラマとは(笑)。
 当然、続編があるんでしょうね。是非、観たいものデス。




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