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2011年6月24日金曜日

ロシアン・ルーレット

(13)

 何処とも知れぬ館に集う富豪達の間で行われる究極の賭博ロシアン・ルーレット。一夜にして大金が動くが、プレイヤーのほとんどが死亡する。
 勝率一%。運がなければ即、死亡。
 どこかで聞いたような物語だと思っていましたが……。

 これは『13/ザメッティ』(2007年)のリメイクでしたか。
 オリジナル版は、グルジア系フランス人のゲラ・バブルアニ監督によるノワール・ムービー。モノクロ映像が異様に迫力あると云われながら、見損ねておりました。
 同じ監督によるリメイクだから、ほとんど変わらないのでは──と思っていたら、随分と様変わりしたようで。
 無名俳優ばかり起用した、モノクロ映像の低予算映画だった筈が……。
 サム・ライリー、ジェイソン・ステイサム、ミッキー・ローク、レイ・ウィンストン、ベン・ギャザラ等々が出演するカラーの大作になっている。

 しかし実際は、これが『13/ザメッティ』のリメイクであると意識することなく、単にジェイソン・ステイサムやらミッキー・ロークが出演している、何やらシブそうな映画だなぁというので観に行ったのでした。
 結果として……。うん、悪くなかったデスよ?

 サム・ライリー演じる主人公の家庭は、事故で入院した父親の入院費用を捻出する為に、住んでいる家を担保にして借金している。返済が滞れば家族はホームレスとなる。
 家族の厄介者になったとベッドで嘆く父親を慰める息子であったが、大金が必要であることに変わりはない。
 ひょんなことから「一日で莫大な金額を稼げる仕事」の話を聞きつけ、本来の参加者が出場不能になったことを利用し、家族に内緒で身替わり参加することにしたのであるが……。
 これが自分の命を賭けたとんでもないゲームへの参加だと知ったときには、もはや後戻りできない羽目に陥っていた。
 しかも自分に与えられたゼッケンは「13番」。実に縁起の悪い数字。

 ロシアン・ルーレットを扱った映画と云うと、やはり『ディア・ハンター』ですかねえ。あれは怖かった。
 基本的にロシアン・ルーレットとは、自分で自分を撃つゲームだと思っていましたが、よもやこれを「円陣を組んだ野郎達が互いに自分の前に立った奴を撃つ」ゲームにしてしまうとは。ホントにルーレットみたい。
 自分の銃が不発であることを祈るのではなく、自分を撃とうとしている奴が不発でないと生き残れない。怖い。
 自分の銃が不発でない場合は、当然に人が死ぬ。殺人を犯すことになるので主人公は引き金が引くことに抵抗がある。そりゃそうだろう。この葛藤の描写が丁寧ですね。サム・ライリー、演技派やね。
 しかし一番怖いのは、それを見物されることか。

 自分のゼッケンがルーレットに於けるポケットの番号となり、誰が生き残るかを賭けの対象にするという極悪非道のゲーム。しかも映画ではその倫理的な是非を問うたりはしない。
 どういう経緯でそんな秘密クラブが誕生したのかなんて説明は一切無い。
 まぁ、でも賭け事の行き着く先は、命を賭けたゲームになるんだろうなあ。

 大金を持った富豪達が人が死んでいくのをワクワクと見守っている。もちろん自分の賭けたプレイヤーには生き残ってもらわねば困りますが。一回戦でプレイヤーが死亡してしまうと、次のゲームが始まるまでに大金が飛び交い、出資者の間で駆け引きが行われる。
 生き残ったプレーヤーは逃げ出さないようにしっかりと監視下に置かれる。このインターバルの間に精神的に参ってしまったり、体力を消耗してしまう奴も出る。待っているだけの時間というのも辛いものがあります。

 ベン・ギャザラが極悪な富豪のひとりを演じていい感じデス。もう人の命なんて駒同然という態度。他の部分が普通ぽいので、尚のこと異常に見える。
 そして単調なゲーム──弾を込めて引き金引くだけですから──を盛り上げてくれるのが、審判役のマイケル・シャノン。この人のハイテンション演技は素晴らしいです。異常なゲームがますます加熱していく。

 オリジナル版にはないキャラも追加されています。ミッキー・ロークが追加キャラ。ゲームに出場する奴には色々な事情があるのだというのは判りますが、イマイチ主人公との関わりが薄い。やはり後付けだからか。良い味出しているのにちょっと残念でした。
 ジェイソン・ステイサムとレイ・ウィンストンは兄弟の役。兄ウィンストンがプレイヤーとなり、弟ステイサムがそれに賭けている。儲けは山分けと云っているが、どうも弟が独り占めしているらしい。極悪な弟です。
 過去、三回の出場経験があり、ウィンストンはこれを生き延びてきた強運の持ち主でありますが……。

 ルーレットは三回戦まで行われ、弾倉に詰める弾も増えていく。当然、プレイヤー達はバタバタ死んでいき、胴元が淡々とオッズを計算し、大金が飛び交っていく。
 三回戦で複数が生き残ると、四回戦目は「決闘」となる。抽選で二名が選出されて決勝戦を行う。運の悪い主人公は──いや、強運だからか──決勝戦に進出。遂にレイ・ウィンストンとの対決にもつれ込む。
 追加キャラの存在が弱いのはこの部分でありまして、ミッキー・ロークも生き残ってきたのに、この時点でお役御免になるのである。以降の出番なし。勿体ない。

 九四分という短めの作品であるのは、オリジナル版と変わりなしですね。
 序盤の導入部からゲーム開始までのミステリアスな展開で前半、死のルーレットが中盤となり、ゲームが終わった後の終盤の展開もスリリングでよく考えられています。
 生き延びた主人公は──まぁ。当然、主人公ですし。勝つんですけどね──約束通り大金を配当されるワケですが、秘密クラブの存在を知ってしまっているので、生きて館から出られるか判らない。
 どうやって館から逃げ出すか、どうやって無事に家まで帰り着くかというところまで描かれています。
 警察当局だって無能ではないので、そんな違法な殺人賭博を取り締まろうと網を張っているわけでして、主人公は警察の職務質問からも逃れねばならないという二重の逃亡となる。カバンに詰めた現金をどうやって持って逃げるか。

 刑事役がデヴィット・ザヤスでした。いつもなら印象に残らずスルーしてしまうところでしたが、直前に観た『スカイライン/征服』にもマンションの管理人役で出演しておりまして、記憶に残っていました(笑)。

 それにしても、せっかくのミッキー・ロークが勿体ない。どうせなら最後で主人公の逃亡を助ける「ちょっといいキャラ」にするとかしてもらいたかった。

 野郎ばかりが殺伐とした賭博に興じる(だけ)という、実に渋い映画でした。
 カラー作品でしたが、色調が淡い感じでオリジナル版に近づけようとしたのが伺えます。
 しかし殺伐とした映画に相応しい、殺伐としたエンディングではありました。
 うーむ。さっぱり華がない。そこがいいのか。




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