スティーブン・ソダーバーグは監督作品の出来不出来の振幅が大きくて、ローランド・エメリッヒよりも判断に迷います。
俺的ソダーバーグの最高傑作は『トラフィック』。ラストシーンのデルトロには涙せずにはおれない。
サイテー作品は『ソラリス』。もう、あんたはSFなんか撮っちゃダメですッ。
〈オーシャンズ〉シリーズはなあ。オリジナル版の方が好みなので……。
しかしコレは観ずばなるまい。
ソダーバーグが革命的情熱を持って撮りあげたチェ・ゲバラ二部作(笑)。
上映前に、劇場が親切にもチェ・ゲバラの半生について駆け足で解説するコーナーを設けてくれました。
エルネスト・ゲバラの生まれ、少年時代、青年時代。南米諸国の貧困層を憂えた青年医師は、メキシコでフィデル・カストロと出会い、人生が変わってしまう。
そしてキューバへ──と云う、短いニュース・フィルム風ダイジェスト。
うーむ。とても親切である(笑)。
これなら映画本編が始まってもすぐに状況が理解出来る。DVDにもこういう映像特典を付けて貰いたいがダメかな。
ソダーバーグによると、ゲバラの青年時代を描いたウォルター・サレス監督作品『モーターサイクル・ダイアリーズ』と併せて、この『チェ/28歳の革命』と『チェ/39歳別れの手紙』で三部作が完結するのだそうな(笑)。
これでゲバラの主要な半生がほぼカバー出来ますね。
ついでにケビン・コスナーの『13デイズ』も観ておきましょう。
『28歳~』と『39歳~』の間の〈キューバ危機〉の状況まで押さえておけるので完璧です。
さて本編は唐突に1964年のゲバラへのインタビューから始まる。
既に革命が成功した後の状況。そこからゲバラが1956年から1959年までの三年間の革命の流れについて回想していくという趣向。
若干、予備知識のない方には取っつきにくいかも知れない(だから劇場側はオリジナルの紹介コーナーを流したのだろうが)。
ソダーバーグらしく、ドラマは淡々と進行していく。
時折、インタビュアーの質問がドラマを中断させ、ゲバラ本人のコメントが挿入されるが、基本的には解説は無いも同然である。
ソダーバーグは予備知識が無くても構わないと思ったか、観客は「7月26日運動」が何なのか位は当然知っているものとして製作しているのかのどちらかである(笑)。
私としてはキューバ革命の全体像をもう少し俯瞰して貰いたかったが、物語の焦点はゲバラだけに向けられているので、ちと物足りない。
ゲバラは一時期、後方で新兵訓練などしていたので、対立する反政府勢力をまとめ上げてひとつの革命軍を組織するといった部分の詳細は描かれていないのである。このあたりはカストロ達の功績のようである。
ドラマの見所は、中盤の国連総会での演説シーンと、クライマックスのサンタクララ攻防戦。時間軸が前後する構成を、混乱することなく編集した演出は巧いです。「過去」の回想がカラーで、「現在」のインタビューと国連総会の場面がモノクロのニュース・フィルム風と云うのが面白い。
が、国連総会の場面でも、キューバが中南米諸国からボロクソに批判されているらしい状況がイマイチ飲み込めない。
うーむ。あまりにも淡々としているのも不親切だなあ。
それとも私には革命的情熱が足りないので理解が及ばないのだろうか。
日本人でも学生運動に関わった団塊世代あたりなら解説不要なのかな。
なんか巧く共感出来なかったのがプチ悔しい。
でも『39歳別れの手紙』も観に行くつもりですが。
本筋とは関係ないが、この映画は音響設備の整った環境での観賞をお薦めします。とりあえずサラウンド完備の劇場で観るとよろしいでしょう。
何と云うことのないジャングルの中での音響設計が素晴らしかった。
四方八方から「鳥の声」が聞こえてくる。見事な臨場感。
革命戦士たちと同じ状況を体感出来ます(笑)。
また、淡々としたドラマなのでBGMもほとんどありませんが、ここぞという場面ではアルベルト・イグレシアスのスコアが印象的に使用されています。ちょっとサントラCD聴いてみたい。
●余談
リチャード・フライシャー監督でオマー・シャリフ(ゲバラ)とジャック・パランス(カストロ)が共演した『革命戦士ゲバラ!』もDVDで復刻されましたが、こちらも必見作品だそうな(ソダーバーグ談)。
これも原題は“CHE!”なんですね。
日本人にはイマイチ発音しづらいし、馴染めないのだけどなあ。チェ。
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