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2008年12月14日日曜日

アラトリステ

(ALATRISTE)

最近、歴史映画づいている。今年は特にそういう作品が多いのだろうか。

時代的には『ブーリン家の姉妹』>『エリザベス』>『エリザベス:ゴールデン・エイジ』と続いたあとの時代。
一六世紀後半の〈アルマダの海戦〉で大敗を喫した後のスペインが舞台。一七世紀初頭、次第に衰退し始めたスペイン帝国を舞台に、男気を貫くひとりの剣士の物語。

云ってみればスペイン版『三銃士』というか。
アラトリステと云うのは主人公の名前です。
原作はスペインで大ヒットしたベストセラー小説で、既に翻訳も五巻出ています。架空のキャラが主人公ですが、時代背景は緻密にリサーチされているらしく、八十年戦争、ブレダの開城、異端審問、梅毒蔓延、西仏戦争などが描かれています。時代考証も完璧だ。
しかし緻密すぎた。もっと冒険活劇な痛快剣客物語を期待していたのですが。

それに扱う時代も長すぎた。なんせ二十数年にも及ぶ物語ですから。
五巻にも及ぶ物語を凝縮した所為で、なんとなく大河ドラマの総集編的な印象になってしまいました。仕方ないのかなあ。
制作費がもっとあれば三部作くらいにして、もっと自然なドラマ展開に出来たろうに。やたらと「一年後」とか「十年後」とかエピソードが飛び飛びになるのが辛い。

とは云え、中世の戦争スペクタクル場面や、マスケット銃など使わず剣と剣で勝負する漢同士のチャンバラ活劇場面は素晴らしいです。
特に監督・脚本のアグスティン・ヤネスの映像感覚が素晴らしく、初期のリドリー・スコット並みの映像美でした。歴史絵巻的な背景が見事にスクリーンに切り取られています。これは一見の価値ありだと思う。

あとは主演のヴィゴ・モーテンセンの魅力に尽きる。
友情に厚く、義を貫き、愛を胸に秘めた孤高の剣士──などという時代錯誤なキャラを大真面目に、熱い血潮のたぎる演技で魅せてくれます。
特に、ちゃんとスペイン語を話しているのが凄い。

今年の前半に『イースタン・プロミス』で、ヴィゴはロシア人役で出演し、ロシア語ペラペラで熱演してくれましたが(ついでに全裸の体当たり演技)、今度はスペイン語である。
特に助演のスペイン人俳優さん達と無理なく会話していて、違和感なしなのが凄い。ワールド・ワイドな俳優さんになりましたねえ。
今度『ラスト・サムライ』的な映画を撮るときには、ヴィゴを起用しよう。
きっと日本語ペラペラで演技してくれることでしょう(笑)。

原作者も制作には相当、肩入れしたようで、執筆中の第六巻のエピソードまで脚本に提供したとか。
つまり最終エピソードの西仏戦争。主人公アラトリステがロクロワの戦いで玉砕する場面。かつては無敗を誇ったスペイン歩兵部隊も、没落する帝国とともに時代に取り残され、あろうことかフランスと戦って負けてしまうのである。
してみるとこのシリーズは六巻で完結するらしい。文庫化されたら読んでみようかな(笑)。

ラストは『明日に向かって撃て』的にヴィゴの突撃シーンでストップ。
セルバンテスと時代を共にし、自身をドン・キホーテにもなぞらえた孤高の剣士の熱い生き様に涙しよう。


それにしても今年はスペイン映画を2本も観てしまった(もう一本は『REC/レック』ね)。
昨年には『ボリベール/帰郷』とかあったし、邦画も負けてはいられないのだが……。
うーむ。『椿三十郎』とか『隠し砦の三悪人』とかリメイクしていてはダメかなあ。座頭市のリメイク『ICHI』も相当、ヒドかったらしいし。
邦画の時代劇は再起できるのだろうか。


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