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2011年1月12日水曜日

スプライス

(Splice)

 『CUBE キューブ』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督作品ですね。
 その次作として企画されながら撮影に漕ぎ着けるまで苦節13年。その間に別の映画を4本撮ってますが、『CUBE キューブ』ほど話題になるものは無かったような気がする(いや、私が観てないだけですが)。
 しかしここにようやく『CUBE キューブ』と肩を並べられる佳作が出来ました。

 うん、佳作。傑作と云いたいところであるが、やっぱり『CUBE キューブ』と同じくちょっとクセがあるというか、カルトなSF。
 B級には違いないが、お馬鹿アクションではない。
 人間に似ているが人間ではない新種の生命体──しかも女の子──と云うと、思い出されるのは、あの『スピーシーズ』ですが、あそこまでバカでは無かった。

 あくまでもシリアス。物語の風呂敷を広げすぎず、適度にこぢんまりして、詳細に作り込んでいるという印象ですな。丁寧に作っている分、あまりハジケた感がないので、クライマックスも地味だ。
 色々と巧い部分もあるので、総じて「惜しい映画」になってしまった。
 でも嫌いじゃないワ。

 地味な感じは、主役の配役にも及んでおりますな。
 禁断の遺伝子実験に手を染めるマッドな科学者が二人。エイドリアン・ブロディとサラ・ポーリー。
 やはりエイドリアン・ブロディは痩せて病的な感じがする役がいい。『プレデターズ』の傭兵役は──巧く演じていたが──なんかイメージが違うような気がする。

 相方のサラ・ポーリーは……。うーむ。いつの間にこんなに成長したのか。テリー・ギリアム監督の『バロン』に出てきた可愛らしい少女が、もうこんなに。
 と云うか、成長するとイマイチ印象に残らないフツーのお姉さんという感じであるが、実はザック・スナイダー監督版の『ドーン・オブ・ザ・デッド』では主役を張っておりましたな。ゾンビの方に気を取られて、主演女優が印象に残らないとは(汗)。
 実はその後、カナダ映画の『ベオウルフ』──あのゼメキスの3DCG映画ではないヤツね──にジェラルド・バトラーと一緒に出演しているのを観ましたが、もはや『バロン』の頃の面影はほとんど無かった(泣)。

 もう一人の主演女優がデルフィーヌ・シャネアック。ハイブリッド生命体ドレンの役ですが、実はめちゃめちゃ美人でした。ネットで検索すると素顔が拝めます。スティーヴ・マーチン主演のリメイク版『ピンクパンサー』にも脇役で出ているらしいがよく知らん。
 これほどの美人の素顔をまったく見せずに、CGで加工したヒラメ顔の生物にしてしまうとは、なんという勿体ないことを。サラ・ポーリーと役を交代させた方が興行成績は上がったのではないか(爆)。
 でも単なる美人女優ではない。人間に似て非なる生物という演技はなかなか巧い。ちょっとした仕草が印象的でした。

 物語は基本的に『フランケンシュタイン』ですね。
 とりあえず後先考えずに作ってしまったクリーチャーに科学者が振り回されて、やがて破滅するというダークな筋書き。まぁ、マッドサイエンティストは暴走してナンボの商売ですからな。
 暴走しない常識人なマッドサイエンティストなんていないのデス。

 しかしあまり暴走ばかりしているとリアリティが無いと考えたのか、脚本上の構成がなかなか巧い。
 二人の科学者のうち、片方が理性を働かせているのに、片方が暴走してしまう。
 やがて暴走していた方が我に返り始めると、理性的だった方が暴走し始める。
 二人そろって「ちょっとヤバいんじゃないの」と思い始めたときには、もはやクリーチャーは制御できないくらいに成長してしまっていた。

 結果、この映画では、誰も人の云うことを聞きません(笑)。

 クリーチャーの造形がなかなか面白く、特に幼生形態がモロに『エイリアン』な感じなので、いつ人間を襲って寄生するのかとドキドキしましたが、さすがにそっちの方へは流れませんでしたね。
 第二形態あたりまでは完全にCG合成ですが、なかなか巧い。
 予算は『CUBE キューブ』の100倍あったと云うから、かなりの部分がクリーチャー描写に費やされていますな。
 邦画はまだまだじゃのう。技術的には大差ない筈なのに、やはりCGアーティストのセンスなのか。

 まぁ、脚本的には科学者のモラルとか、男女の愛憎劇の方がメインで描かれるので、設定として作り込まれたクリーチャーの造形が物語にあまり関係ないというか、もうちょっとビジュアルを活かした物語にはならなかったのか、とか感じられて実に惜しい。
 だから女の子に尻尾と毒針と逆関節と背ビレを付けるのはいいが、必然性が感じられぬ(笑)。

 もっとB級モンスター映画らしく、巨大に成長するとか、大量に繁殖するとかしてもらいたかった。
 もしコレが邦画だったなら、クリーチャーは二体に増やされていたであろう。そして片方を人間に友好的な設定にして、もう片方を本能に忠実な設定にして、クライマックスは兄弟対決……(あれ?)。

 そして全てが御破算になり、終わったと見せかけて、実は──と云う超お約束展開なエンディング。
 基本は忠実に押さえて破綻のない構成なのは巧いが、やはりもうちょいハジケてもらいたかったと感じるのは贅沢でしょうか。

●余談
 『CUBE キューブ』はその後、二番煎じな続編やら、似て異なる亜流作品をガンガン生み出しましたが、『スプライス』の方はどうでしょうね。

 きっとまたナタリ監督ではない誰かが、続編を製作してしまうのであろうか。
 B級だからね。いくらでも続けられるエンディングでしたからな(笑)。




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