2011年1月13日木曜日

僕と妻の1778の物語

 

 難病映画は観ない──観たくない──のであるが、これが眉村卓の実話に基づく物語であると知ったからには、SF者として放置するワケには参りますまい。昔から馴染みのある作家さんですし。
 でも最近は読まなくなったなあ。『引き潮のとき』の復刊が近いと云うから、出版されたら買わずばなるまい(いや、これは映画とは関係ないか)。

 眉村卓は奥さんの闘病生活中、片時も休まずショートショートを書きまくった。(劇中では「短編」と表現されているがSF者なら「ショートショート」と云うべきでしょう)。
 そしてそれは奥さんが亡くなるまで続けられ、最終的に1778編にまでなった……。
 毎日というのがスゴい。星新一にも出来たかどうか。

 笑いが人間の免疫能力を向上させる──と云うのは俗説だそうだが、聞き覚えがある。コリン・ウィルソンの書いた小説にもそんな一節があったことを憶えている。
 まぁ、コリン・ウィルソンと云う時点でかなり胡散臭くなりますが(笑)。
 医学的知識皆無のSF作家が、少しでも妻の病の進行を食い止める為に、ワラにもすがる思いで、読んで楽しい作品を書き続ける。毎日一編。
 いや、なかなか出来ないことですよ。

 そしてこの実話は映画化された。
 TVドラマは観ない主義なので存じませぬが〈僕シリーズ〉と云うのがあるそうな。フジテレビ系列の火曜10時枠のドラマ。
 『僕の生きる道』『僕と彼女と彼女の生きる道』『僕の歩く道』と3作品あって、これが4作目にして初の劇場版化作品なのであるという。これら全てで主演を務めたのが草なぎ剛だとか。

 なるほど。そういうつながりか。
 他のシリーズ作品と比較して云々は出来ないなあ。
 代わりに、他の映画と比較なら何とか。昨年は何だかんだと云いながら『小さな命が呼ぶとき』とか『100歳の少年と12通の手紙』なんかも観てしまった。観終わってから「いや、これは難病映画じゃない」とか云ってますが(笑)。

 しかし『僕と妻の1778の物語』は紛うことなき難病映画である。
 他にどう分類の仕様もない(いや、他の人にはその人なりの分類方法があるのでしょうが、私にはこれしかない)。
 癌を患い、余命を宣告された妻と残された僅かな時間を懸命に生きる。美しい夫婦愛。

 ……なのであるが。
 うーむ。泣けなかった。いや、そもそもこの手の映画を観てもあまり泣かない人間になってしまっているのですが(汗)。
 でも泣いている人は沢山いた。劇場内で洟をすする声があちこちから聞こえた。
 でもなあ。結局のところ、不治の病に罹ったという設定だけで、観客の涙を誘おうとしているように思えてならないのです。

 主演の二人が、草なぎ剛と竹内結子。『黄泉がえり』(2003年)もそうでしたか。
 だから三〇代の若い夫婦の物語になるのであるが、この点にも引っかかってしまう。
 現実の眉村夫妻がそうであったように、六〇代の熟年夫婦の物語にした方が良かったような気もする。その方が夫婦の絆をより実感できたような。
 映画なんだから観客動員を考慮するなら、若い俳優でないとダメなのでしょうが。しかし「若くして余命数年」という設定には食傷しているのですが(汗)。

 そもそも草なぎ剛が演じるSF作家にリアリティが感じられないというのもあるか。ドラマの最初から躓いてしまった(汗)。
 だって、ねえ。主人公はブリキのロボット人形の蒐集が趣味らしい。部屋中にロボットが並んでいる。コレクターだ。
 玄関の表札もブリキ・ロボ仕様である。
 宇宙船とかロボットと云うのが、世間一般的SF作家のイメージなのだろうか。
 そんなSF作家がいるかーッ、という気持ちが拭いきれず……。

 更に上映時間の問題もある。かなり長い。140分ある。
 もう少し短くできなかったものか。結末は観る前から皆、判っているのだし。
 劇中劇の形で映像化されるショートショートがドラマに追加されている分、長引いたのだろうか。
 そこがまた残念な部分で、この劇中劇は丸ごとカットしてもストーリーの進行には差し支えなさそうなのである。現実の展開と劇中劇がリンクしていないのが不満に思うもうひとつの理由である。
 唯一、ラスト近くで、看病に疲れ切った主人公が病院の食堂で書き上げる「寝不足の宇宙飛行士」だけは多少なりともリンクしていたが。

 うーむ。どれもあまり決定的な理由とは云えないなあ。

 ついでだから書いちゃいますが、やはり草なぎ剛の淡々とした演技に感情移入出来ないというのもあるか。俺の偏見なのか。
 よく知らないのは確かであるが、それにしても「穏やか」「いつもニコニコ」というイメージが付いて回る人という印象がある。
 しかし「淡々とした演技」でも感情移入できそうなものであるが……。

 この映画の主人公は実にマイペース、空想に耽りがちであり、他人からの評価をあまり気にしない。それはそれで美徳ではある。
 が、一箇所だけ、どうしても気になる場面がある。
 感情的になった奥さんが弱音を吐くシーン。

 「私なんかいない方が良かったね」
 「二度とそんなことを云うなッ」

 それまで穏やかだった主人公が唯一、本気で怒りを表明するシーンである。どんなに淡々としていても、この場面だけは激しいものでなくてはならない……筈だ。そうでしょう?
 なんか演技が固い……。
 単に俺の好みの問題なのか。他の役者だったなら泣けたのか?


●蛇足
 誤解の無いように申し上げますが、癌患者がお気の毒であるという気持ちと、映画が面白いか否かという所感は、まったく別のものです。
 眉村卓氏に対してはお気の毒と云う他はない。奥様の御冥福をお祈りいたします。




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