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2010年7月12日月曜日

プレデターズ

(PREDETORS)

 ロバート・ロドリゲスが製作し、ニムロッド・アーントルが監督した『プレデター』のリメイク──と云うか、続編です。『エイリアン』の続編が『エイリアンズ』だった(原題がね)のと同様、『プレデター』に対する『プレデターズ』であるというのデスが。
 もう『プレデター2』も『AVP』も無かったことにしようというおつもりでしょうか。『プレデター2』は好きだったのに……。

 今までアウェイで戦っていたプレデターさん達が、今度はホームで戦う──という設定ですが、厳密に云うとホーム戦でもない。
 プレデターさん達がいつも使っている「ラチってきた獲物を放って狩りを楽しむ惑星」という設定なので、プレデター母星とも違うらしい。

 なんか開拓が途中で放棄されたか、滅亡した惑星らしいと云う描写はあるものの、それがどんな異星文明だったかは判らない。プレデターさん達は、主がいなくなった空き家の惑星を、無断で使用しているようなイメージです(笑)。
 そんなSF的設定の描写は最低限に抑え、とにかく拉致された人間達の必死のサバイバルが描かれます。
 冒頭、いきなり惑星上空に放り出されたエイドリアン・ブロディのアップから始まります。状況説明、一切なし。実にスピーディ且つ唐突な開幕。問答無用とはこのことか。

 最初、エイドリアン・ブロディが主演と聞き、アーノルド・シュワルツネッガーとの落差の激しさに驚きました。だって『戦場のピアニスト』とか『ジャケット』のイメージですもの。
 そんな線の細いキャラに、『コマンドー』や『ターミネーター』で勇名を馳せたマッチョの代名詞のような人物の代理が務まるのでしょうか。

 務まりました。見事に。
 これはもう凄いとしか云いようがない。エイドリアン・ブロディの役者としての資質に改めて感じ入りました。さすがオスカー俳優。
 もう「ベテランの傭兵」という役に違和感なし。痩せていてもOKなのが凄い。

 それと対照的なのがローレンス・フィッシュバーン。
 なんか……違和感が漂う。オリジナル版のカール・ウェザースに相当するみたいな役なのですが、どうにもイメージに合いません。ここでのフィッシュバーンは十年近く前に拉致された犠牲者の中で、唯一の生存者という設定。
 『宝島』で云うところのベン・ガンみたいな役かな。
 中盤になって登場し、ある程度の事情説明を行う。状況を説明するには巧いやり方ではありますが。
 問題なのは、ローレンス・フィッシュバーンが全然、サバイバルに長けているように見えないという点ですね。十年、生き延びてきたことが信じられない。
 少しくらい痩せていて下さいよ。余分な肉が付き過ぎデス。
 監督の人選ミスでしょうか。『アーマード/武装地帯』はまだ良かったに……。

 それ以外のキャスティングは概ね、違和感なし。
 プレデターさん達の好みである「人殺しに長けた人物」──即ち「手応えのある獲物」──と云うイメージにほぼ当て嵌まります。

 紅一点のアリシー・ブラガは、ついこの先日も『レポゼッション・メン』にも出ていました。連続して同じ役者さんを見かけるというのは面白いデスね。

 個人的にはメンバーの中に、ダニー・トレホがいたのが嬉しかったデス。
 こういう面構えが一人いると、作品にB級感がグッと増しますなあ。真っ先にやられる役というのもお約束ぽい(笑)。

 そして傭兵、殺し屋、死刑囚なんかとはひと味違う方もいます。何故か日本のヤクザが混じっている。ロドリゲスの趣味か。名前はハンゾウ(笑)。
 一人だけ高級スーツを着ているあたりが素晴らしい。
 ルイ・オザワという人ですが、これから売れそうな役者さんですわ。ちゃんと自然な日本語のセリフも喋ってくれるし。無口という設定なので、なかなかセリフはありませんが。

 そしてこのプレデターさん達の〈狩り場〉は随分と伝統あるフィールドだったらしく、大昔からの犠牲者達の遺留品も発見される。その中に「日本の戦国武将の鎧と刀」があったりして、ハンゾウはそれを発見して大喜び。
 ヤクザに長ドス──どころではない。本物の日本刀。
 プレデター好みの熱帯性気候なのに、刀に錆一つ無いのは御愛敬。
 もうこれでスイッチが入っちゃった(笑)。

 逃避を続けるエイドリアン・ブロディ達を逃がす為か──いつまでも逃げるのが性に合わなかったのか──日本刀を手にしたハンゾウがひとり残る。もう何をするつもりなのかはっきり判る。待ってました(笑)。
 〈極道vs.プレデター〉ですよ。素晴らしい企画デスね!

 上半身裸になって入れ墨も鮮やかに待ち受けるハンゾウの前にプレデターが現れる。
 今まで透明化擬装で光線銃撃ちまくりだったくせに、ここでのプレデターさんの態度は素晴らしいですね。堂々と擬装を解除し、ブレードを抜き放つ。
 もはや言語は不要。
 「サシで勝負」が宇宙の共通概念であったことがはっきり判ります(笑)。
 〈仁義あるプレデター〉ですね。

 そしてこの映画でもまた描かれる〈日本刀最強伝説〉! タラ公とロド公のおかげで〈日本刀最強伝説〉は広まっているみたいですねえ。
 そしてルイ・オザワも、剣道二段の腕前で刀の構えもなかなか堂に入ったものです。
 惜しむらくは、この場面がクライマックスではなかったことか。ハンゾウが主役なら良かったのに。

 総じて良く出来たリメイク作品だとは思います。
 新登場の〈スーパー・プレデター〉とか〈宇宙猟犬〉も、まぁ許容範囲内でしょう。
 主人公の性格がイマイチ描き切れていないという問題はありますが。
 有能な傭兵で危機回避の嗅覚にはズバ抜けている。仲間を犠牲にしてでも生き残ることを優先する。
 非情な男──の筈なのに、何故かラストで一度は見捨てた仲間を助けに戻ってきたりする。特に理由は無さげであったのが不可解であります。

 ただ、「開き直った人間は怖いぜえ」という気迫には凄みがあった。
 反撃を決意し、今度は俺たちがヤツらの〈捕食者〉になるのだ、と云い放ったときのエイドリアンの眼光にはただならぬものを感じました。
 さすがオスカー俳優。

 アラン・シルベストリのテーマ曲も懐かしい。
 状況は好転したんだか悪化したんだか、よく判らぬラストも続編への期待を持たせてくれます。
 このまま続いちゃうのかなあ(笑)。

 エンド・クレジットを眺めていると、ハワイ撮影班がいたらしいですね。
 背景となったジャングルは、ハワイだったのか。オリジナル版が南米までロケしに行ったのに対して、何とかアメリカ国内でロケ地を見つけてきたスタッフはご苦労様でした。
 今年は『パーフェクト・ゲッタウェイ』でも「ハワイの密林」を堪能したし、極力CGに頼らぬ撮影姿勢は好感持てます。

●余談
 次なるロド公の企画は『プレデターvs.マチェーテ』らしい(爆)。
 ダニー・トレホの起用はこの伏線だったのか。
 是非、製作していただきたい(笑)。マジで。




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