ページ

2011年1月7日金曜日

アンストッパブル

(Unstoppable)

 トニー・スコットは鉄道映画が好きなのだろうか。
 『サブウェイ123』に続いてまたまた。しかもどちらもデンゼル・ワシントン主演ではないか。
 デンゼル・ワシントンが気に入っているのは判るが、連続してデンゼルで列車アクションを撮ると云うのは如何なものか。前回は管制官役だったから、今回は機関士役がやりたいとデンゼルが云ったのか。
 しかし役柄として──デンゼルの年齢的なものもあるのだろうが──「退職を間近に控えた男」というアリガチな設定もカブってますヨ。

 『クリムゾンタイド』では潜水艦だったしな。デンゼル・ワシントンを乗り物に乗せてトニー・スコットが監督すれば映画が一本出来るらしい。
 よし。次は船か飛行機にしましょう。
 退職間近なパイロットであるデンゼル・ワシントンがハイジャック犯と戦う、とか。退職間近な航海士であるデンゼル・ワシントンがソマリアの海賊と戦う、とか(爆)。

 そんなアホな企画を思いついてしまうほどに『アンストッパブル』はお手軽な企画という印象を免れ得ない作品なのですが……。
 上映時間99分と云うのも、お手軽感が漂いますな。兄貴のリドリーが『ロビン・フッド』で140分もかけているのに、なんという潔さか。
 しかし潔さ過ぎて、物足りない。
 列車が暴走し、それを止めたらおしまい(当たり前か)なので、かなり脚本がシンプルである。あまりにもストンと終わってしまう。
 もう一つくらい何かネタを投入してもいいような気がする……。

 かつて黒澤明の原案をアンドレイ・コンチャロフスキーが映像化した1985年の映画『暴走機関車』では、アラスカを舞台にして、逃亡中の脱獄犯(ジョン・ボイド)が乗り込んだまま機関車が暴走するというストーリーでしたが……。
 デンゼル・ワシントンを脱獄犯にするワケにはいかなかったのか。
 『暴走機関車』では他にも、エリック・ロバーツ(脱獄犯仲間)とか、レベッカ・デモーネイ(女性新米機関士)が共演していたが、『アンストッパブル』では主要キャラはひとり減ってクリス・パインが新米機関士の役になっていた。

 ……と、書いてきて勘違いしておりました。
 ストーリーが似通っているので『アンストッパブル』は『暴走機関車』のリメイクと云うか、同じネタを題材にした映画であると思い込んでいました。予告編でも「実際に起きた事件に基づく」と出ていたし……。
 『暴走機関車』のパンフレットを押入から掘り起こして読んでみると、一九六六年に黒澤明が監督する映画として企画が立てられた、とある。元ネタはその四年前に米国ニューヨーク州の操車場で起きた事件に基づくらしい。つまり1962年の列車暴走事件なわけだ。
 一方、『アンストッパブル』のパンフレットには、別のことが書いてある。
 二〇〇一年のオハイオ州操車場で起きた事件であるという。貨物に毒性物質であるフェノールが積まれたままだったというのもノンフィクションだそうな。

 と云うことは、『アンストッパブル』は『暴走機関車』のリメイクでも何でもないと云うか、無関係な映画なのか。
 しかし、そうだとすると逆に、同じような事故が再発する米国の鉄道事情に不安を覚えますなあ。四〇年経っても安全対策が講じられているように思えないぞ。大丈夫なのか。
 まあ、限りなくリメイクに近いと云うか、そう云われても仕方のない作品ではありますがね(笑)。

 暴走を止めないと、行く手には通過不可能な鉄橋がある(暴走機関車)とか。
 暴走を止めないと、行く手には脱線必至の急カーブがある(アンストッパブル)とか。
 まぁ、この展開は鉄道映画のお約束ですから。

 うーむ。いっそ開き直って『暴走機関車』のリメイクにしてしまえば良かったのに。
 デンゼル・ワシントンがジョン・ボイトと同じように、ラストで暴走したままの機関車の屋根の上に仁王立ちになり、独り雪原の彼方に消えていく……。それを見送るクリス・パイン。
 これはこれでファンタスティックで哲学的エンディングになったかも知れぬが、トニー・スコット監督作品ではないか(笑)。

 『暴走機関車』では場面によっては登場する列車の型番が違う、という鉄道マニアのツッコミがありましたが……。素人には台車の形式やら細部の形状なんて判りませぬが、マニアには一目瞭然らしい。走っている列車の型番の違いが判るとはどんな動体視力なのだ。
 『アンストッパブル』ではどうなんでしょう。是非、〈鉄の人〉の意見を伺ってみたい。
 ちなみに『暴走機関車』で登場した機関車の一台が『暴走特急』でも使用されている──なんてマニアックなトリビア知らんわ。どういうこだわりだ。

 実話を元にしているだけに、あまり突飛な解決策とか、単独でのヒーロー的な活躍もなく、関係者達の尽力により何とかなりました的なエンディングでした。
 デンゼル・ワシントンの超人的活躍を期待していただけに、ちょっと不満。

 笑ったのは、この映画が二十世紀フォックス制作の映画であることか。
 列車暴走事件はリアルタイムの事故として全米に放送され、生中継でデンゼル・ワシントンが貨車の上を走っていく映像が中継されるという展開でしたが、活躍しているニュース番組は当然、フォックス・ニュースでした。
多分、実在のフォックス・ニュースのキャスターさん達も大勢、登場しているのでしょう。
 最近の邦画で日テレのアナウンサーがちょいちょい顔を出しているのと同じですな(笑)。

●余談
 鉄道を扱ったアクション&サスペンス映画を作るなら、他にも『大陸横断超特急』とか 『カサンドラ・クロス』なんてのがありましたが……。
 リメイク企画は無いのか。
 『新幹線大爆破』でもいいが、JRが協力してくれないか。




▲ PAGE TOP へ

ランキングに参加中です。お気に召されたならひとつ、応援クリックをお願いいたします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

ランキングに参加中です。お気に召されたなら、ひとつ応援クリックをお願いいたします(↓)。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村