もっとヒドい出来を予想していたのですが、かなり頑張っている。だがすべてが中途半端と云わざるを得ない。
くそ。もっと酷ければ手放しでケナせるのに。ところどころ面白かったりするので始末に悪い。
一番驚いたのは、二時間で29万6千光年往復しちゃったところですね。
いやあ、強引だなあ。
オールドファンであるほど、ツッコミ処満載。とにかく「ヤマトである為には、このネタは外せない」という展開がてんこ盛りなのですが、あちこちの基本設定を変更してしまっているので、ネタ同士の整合性が取れず、辻褄の合わないことだらけ。
そのくせ妙に『ヤマト』としてまとまっているように見える。ぬう。
監督が『ALWAYS/三丁目の夕日』の監督ですから、CG特撮のセンスはなかなか巧いのですが……。うーむ。やっぱり映画は脚本だよなあということを、しみじみと感じ入りました。反面教師か。
やっぱり、プロデューサーの数が多すぎたからか。
とにかくプロデューサーが四人、エクゼクティヴ・プロデューサーも三人。他に製作統括とか、企画とか、共同製作に名を連ねる人数がハンパではない。制作費が高く付くから仕方ないのかも知れません。
しかしその所為で、なんとも「最大公約数的なヤマト」「当たり障りのないヤマト」が出来上がってしまった。船頭が多すぎたか。
二時間という尺の中で、TVシリーズを映画にするのは至難の業というのは判る。いっそオリジナルの物語でもやってくれれば、それなりに納得できたかも知れないが……。
驚くべきことに原作を削るどころか、『宇宙戦艦ヤマト』の上に『さらば宇宙戦艦ヤマト』まで詰め込もうとしているのである。暴挙だッ。
まぁ、おかげで「ヤマト的エピソード」には事欠かず、ドラマがダレることはなかったですが……。
個々のエピソードを次から次へ消化していく為に、なんというか盛り上がらない。ドラマを盛り上げる為の「溜め」が無い。緩急が付かないので、発進シーンにしても、ワープにしても、波動砲の発射にしても、トントン拍子に進行していくのみである。
ヤマトが好きな人が作っている、と云うのは判りますがね。コレは削りたくないと云うのも判りますがね。
あと、実に不自然な「古代進と森雪のロマンス」というのもある。もう、別にそこまで描写しなくてもいいのではないかと思えるのであるが、そこでプロデューサーの誰かが「やっぱり木村拓哉と黒木メイサのキスシーンがないとダメだ」とか云ったりしたのでしょう。
山崎貴は雇われ監督だから逆らえなかったのかねえ。
SF映画としても「最大公約数的な」と云うか、「どこかで観たような」感があって、そういうCGを入れないとプロデューサーがOKを出さなかったのだろうか。
ぶっちゃけ『インディペンデンス・デイ』とか『スターシップ・トゥルーパーズ』とか『スターウォーズ』とか『スタートレック』とか『ギャラクティカ』で観たような場面が多くて困りました。
しかもコレが、結構、出来のいいコピーなのが癪に障る。
アナライザーの使い方にはタマげましたが(笑)。
木村拓哉や黒木メイサや山崎努ばかり宣伝に登場するので、てっきりアニメの方の声優は起用しないのかと思っていたら、緒方賢一、上田みゆき、ささきいさお、そして伊武雅刀まで登場したのには嬉しいというか、ナンと云うか……。
そりゃ、私も伊武雅刀に「ヤマトの諸君」と云ってもらいたかったデスとも。
うーむ。うーむ。
結局、ナンと云うか、形はどう見ても『ヤマト』なんだけどねえ。
あれほどアニメ版ではネタとして揶揄されるようにまでなった「テーマは愛」というのだけは、スカっと外されていたのが、逆に物足りないと云うか。
いっそのこと、もう暑苦しいまでに「我々がしなければならなかったのは戦うことではなく、愛し合うことだったッ」とキムタクに号泣させるくらいのラストにしてくれた方が良かったような……。
それを云うなら劇中で散々、宮川泰のメロディを流しながら、エンドクレジットでは新曲の主題歌を流したり。もう「真っ赤なスカーフ」でいいのに。
ヘンなところで今風にしようという感覚が顔を出すのが困ったところです。
乗組員の女性比率を高めようとしたり……。
いちいちツッコミ始めると止まらないと云うか、コレはまさにオールドファンが徒党を組んで観に行き、そのあとで飲み会に突入し、散々ネタにして楽しむのに最適な映画と云うべきなのでしょう。
ああもう、ホントに「残念な映画」ですわ。
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