スパイ映画は〈ジェイソン・ボーン〉シリーズによって随分と様変わりしてしまった。新たな時代のスタンダードになってしまいましたな。
あの〈007〉すら〈ジェイソン・ボーン〉を無視できずに、妙に「リアル&シリアス指向」に走ってしまいましたが……。007がリアルになりすぎるのは、それはそれで問題だろうに。
この『ソルト』も新たなジェイソン・ボーンとなるべく、アクション・シーンの演出が実にリアル。しかもそれをマット・デイモンではなく、アンジェリーナ・ジョリーが演じるので、なおの強烈。企画段階では主役は男性だったらしいが、きっとそのままではイマイチでしたな。
しかし物語的にはどうなんですかね。
かつてのソビエト連邦がアメリカに潜入させた〈スリーパー〉が活動を開始するなんて、リアリティがあるのだろうか。アクションはリアルだが、基本設定の段階でかなり眉唾というか、ちょいとネタ的に古いような……。
ソビエトが送り込んだ〈スリーパー〉……と云うと、あの名作──ドン・シーゲル監督、チャールズ・ブロンソン主演の──『テレフォン』でしょう。ええ。私は『テレフォン』大好きですが(笑)。
電話からロバート・フロストの『雪の宵の森にたたずんで』の一節が……。
──森は美しく、深く、暗い。だが誓いを果たし、眠るまでの道は遠い。
この詩はタランティーノも『グラインドハウス』で使っておりましたな。
マニア受けするのだろうか(笑)。
素直に『テレフォン』をリメイクする方がいいのに。それともリメイク企画が変わり果ててこうなっちゃったとか?
監督はフィリップ・ノイスでしたか。
『パトリオット・ゲーム』や『今そこにある危機』は好きなんですが(やっぱりスパイ・アクション映画だよなあ)、最近はどうしていたのか。一時はハリウッドから遠ざかり、オーストラリアに戻っていたそうですが、腕は落ちていないようで安心しました。
ただ、最近のハリウッドのアクション映画の傾向としてよくあるように、完全に続編ありきな前提なのが困ります。終わってないじゃないかッ。
まさかコレ一本きりということはないでしょう。
とりあえず〈スリーパー〉計画の第一の野望は潰えた。しかし敵は強大であり、まだまだ隠れた〈スリーパー〉は沢山いるのだ。戦え、イヴリン・ソルト。邪悪なソビエト連邦を倒すその日まで──いや、もうソビエト倒れていますが。
21世紀のスパイ映画の敵に、イスラム系テロリストばかりでは飽きられるし、巨大企業というのもネタ的にありふれているから、設定しづらいというのは判りますがね。旧ソビエト連邦の〈スリーパー〉というのも、賞味期限ギリギリな感がありますな(もうアウトか)。
いっそのことナチスの残党とか。
そうだ。『ブラジルから来た少年』をリメイクして下さい(笑)。
アンジョリ姐さん以外の出演陣の中では、リーヴ・シュレイバーがいた。『クライシス・オブ・アメリカ』や『ウルヴァリン』にも出演していますが、どうしていつもライバル役とか主人公のサポート役ばかりなのか。『レポゼッション・メン』でも脇役だったし……。
リーヴ・シュレイバーが主役のアクション映画が観たい。地味かな。
他には『2012』で地質学者役だったキゥエテル・イジョフォーなんて人もいましたが、続編にも出てくれるのだろうか。
そこそこ良くできたアクション映画でした。
マット・デイモンよりも、アンジェリーナ・ジョリーの方が好みである人にはお薦めデス。
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