「竜頭蛇尾」という言葉が座右の銘なのかヨ!──とツッコミたくなる。それが最近のシャマランです。特に『ハプニング』はあんまりだった……。
さて、そんなシャマランが珍しくファンタジー大作を監督すると云う。
半信半疑で見に行き……評価はやはりビミョーだった。これ一作では何とも云えません。
だってこれ、三部作の第一部やん!
まぁ、「導入部だけならそれなりのシャマラン」なので、全体が導入部だけな本作は、割とまともと云えなくもありませんが(笑)。
しかし続編があり得るのか、と大いに疑問を抱かざるを得ませぬなぁ。
ほら、世の中には「原作は傑作ファンタジー」と銘打たれながら、映画化の続編は決してあり得ないと太鼓判を押されている前例もあることですし。
『ライラの冒険/黄金の羅針盤』とか(爆)。
さて、私は知らなかったのですが、この『エアベンダー』も原作付きでした。実は米国で人気のTVシリーズのアニメの実写映像化であるそうな。
したがってコアなファンが既に存在し、その評価たるや散々のようです。
原作アニメを知らない身としては、割と頑張っている方じゃないか、と思えなくもなかったが、実はそうではないのか。
物語の設定は絵に描いたようなファンタジー(元がアニメだし)。
火、水、気、土という四大元素を司る国々からなる世界の興亡を、アジアン・テイストたっぷりに描くという代物です。
最近は西洋風ファンタジーだけでなく、和風ファンタジーや、中華風ファンタジーも多くなってきましたねえ。『獣の奏者』なんかもそうですが。
まぁ、アリストテレス的四大元素であって五行思想的元素ではないというあたりが、和洋折衷な感じではありますが。
この全編に渡ってアジア的世界観が新鮮で、さすがインド系米国人のシャマランだなあ──と感心したが、実は原作からしてそういう設定なのでした。
逆に原作がそうだから映画化に際してはアジア系の監督が起用されたと見るのが正解らしい。
それなのにこの体たらくかよ!──というのがファンの恨み節だそうデスが。
映画化に際しては、人種的な描写が強調されており、各国の人種が一目瞭然になっています。
〈火の国〉──インドである。
〈気の国〉──中国である。
〈土の国〉──ベトナムぽいけど日本のようでもある。
〈水の国〉──アラスカ、カナダなあ?
なんとなく環太平洋諸国に配慮したような描写ですね(笑)。
米国に於いて人種的な描写が難しいというのは判る。例え他意がなくても攻められる。ホントに他意がないのかどうかは判りませんが。
さて、この世界には四大元素すべてを同時に操る全元素の化身的存在があり、〈アバター〉と呼ばれていた。
実は原作アニメの題名も『アバター』なのだそうですが、映画化に際してはジェイムズ・キャメロンに先を越されて使えなくなってしまったそうな(笑)。
各国には各元素のみ操れる〈ベンダー〉という術者がおり、それらが各々の国を守護している。〈気の国〉の術者だから〈エアベンダー〉ね。
〈アバター〉は各国の〈ベンダー〉の中から世代毎に現れる。ほとんどダライ・ラマのような設定ですな。
先代の偉大な〈アバター〉は〈土の国〉から輩出された。その名も「キヨシ」と云う(やはり日本なのかなあ)。
さて「キヨシ」亡き後、次なる〈アバター〉は〈気の国〉から選出されることになったのだが、あるときこの後継者が失踪してしまい、そのまま百年が経過。
世界は調停者である〈アバター〉を失い、そしてその隙に〈火の国〉が勢力を拡大していったのであった。
なかなか壮大な設定ですね。
しかし複雑な設定を冒頭のナレーションだけで片づけるのはやはり難しい。TVシリーズなら何回かに分けて説明できるのですが。
しかしこの百年間失踪していた主役である〈アバター〉が頼りない。
修行が嫌で逃げ出したヘタレ小坊主! 修行していないので気の術しか使えなかったりする。
冒険の末、何とか水の術までは修得し、クライマックスでは巨大な津波を巻き起こしたりしますが、まだ物語は始まったばかり。
〈火の国〉では皇帝が次なる刺客を放とうとしていた。
「よいか。必ず〈アバター〉を仕留めよ。奴に土の術と火の術まで修得させてはならぬ」
というところで、つづく──。
ホントに続編を製作してくれるのでしょうな。非常に心配だ。
人気のアニメというだけあって、キャラクターはかなり魅力的なのですが。
特に敵である〈火の国〉のズーコ王子がいい。
『スラムドッグ$ミリオネア』のデーヴ・パテールですからね。
名誉を失い、故国から追放された王子で、最初のうちはイヤな奴だったりしますが、実は名誉を重んじ、国を憂う心の優しい王子だったりする。好戦的な父王の方針に逆らって追放されているあたりが、もうこっちが主役ぽいわ。
正体隠して仮面の戦士となって主人公を救ってみたり。
いるよなぁ、日本のアニメにもこういうキャラが(笑)。
もう主役の子坊主とか、〈水の国〉の兄妹なんかどうでもいいや。
長大な物語の映画化なので端折る部分がでるのはやむを得ないが、ならば最初から主人公と王子のライバル関係に焦点を当てた物語にする方が良かったのではないか。
特撮はなかなか巧いです。各種元素を操る〈ベンダー〉の技の表現は見事です。いやもうホントにCG(だけ)は見事なんだけどねえ。
唯一、個人的にシャマランを擁護したい部分はあるにはあります。
ラストの第二部への「引き」になるところね(シャマランはホントに期待を抱かせる演出だけは巧い)。
実は皇帝から追撃の命を受けるのが、ズーコ王子の妹姫。これがもう!
「お任せください、お父様(にやり)」
褐色のツンデレ姫! 兄王子とは対照的な、実に酷薄そうな美少女。
インド人ばんざーい!
吹き替えにするなら是非、平野綾あたりでお願いしたい。
この配役で続編もちゃんと作ってよね。頼んます。
でも、その日本未公開の原作アニメを放送してくれればそれでいいんじゃないかという気もしますけど……。
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