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2010年2月6日土曜日

ゴールデンスランバー

(A Memory)

 伊坂孝太郎の小説はまったく読んでおりません。
 映画化作品も多数あるのに。『アヒルと鴨のコインロッカー』も『フィッシュストーリー』も『死神の精度』も『陽気なギャングが地球を回す』も『重力ピエロ』も観ておりませぬ。これでいいのか。

 一方、中村義洋監督作品としては、昨年の『ジェネラル・ルージュの凱旋』がありまし。ああ、それで堺雅人を起用しているのか。

 とりあえず堺雅人主演だから、という理由で観に行きましたが、監督が中村義洋なので一定水準以上の出来は期待してよろしいでしょう。
 事実、結構面白いデス。

 首相暗殺犯に仕立てられた男が、仙台の街を逃走しまくるという物語。
 オール仙台ロケというのが面白いです。
 物語上の時間経過も短く、たった三日間というのもいい。
 主人公の職業が宅配便ドライバーというのも巧い設定です。封鎖されて仙台から外には出られずとも、仙台市内の道は熟知しているのが役に立つ。

 サスペンス映画にしては、やたらと回想シーンが挿入されます。仙台で暮らしていた男の過去十年分の生活の蓄積が、逃走でフル活用されるという演出が巧いです。
 そのままポン、と逃走手段とか提示すると御都合主義の謗りを免れませんが、上手に回想シーンを挿入していくことで、一人の男の人生が浮かび上がるという仕掛けにも通じて、不自然にならずにすんでいる。

 国家規模の謀略に対抗する平凡な男に残された武器は、「ひとを信頼すること」のみ。
 正直な生き方は、それだけで価値あるものなのだと気付かされます。
 彼をよく知る者ほど、謀略によって流されるメディアのデマを信じず、逆に助けてくれる。やはり日頃の人間関係が、逆境でモノを云うわけですなあ。

 まぁ、主人公を助けてくれる様々な人物の中に、〈手配中の連続通り魔〉であるとか、〈ベテランの窃盗常習犯〉みたいな人もいますけどね。このあたりは御都合主義ギリギリの展開で、如何なものかと思うところもありますが……。

 大筋において、面白い映画なのですが、結末についてだけは、多少不満に思うところもあります。
 これがハリウッド映画なら、まず間違いなく主人公は最後には身の潔白を証明し、謀略を仕掛けた黒幕は破滅し、ハッピーエンドを迎える筈でしょう。
 香川照之あたりなんぞは、ラストで死ぬこと間違い無し。

 でも、どういうわけだか、そうはならない。
 このあたりがエンタテイメントに徹しているようには思えないというか、妙にリアルで違和感を憶えます。そりゃまあ、個人が国家的な謀略に対抗できたとしても、完全に勝利を収めることは難しかろう。第一、相手は組織なんだし。

 結局、逃げ延びはするものの、身の潔白は証明しきれず、敵の謀略を暴くことも出来ない。なんか中途半端な結末だと云わざるを得ません。とりあえず敵の鼻を明かして逃亡者として仙台を脱出しておしまいか!
 犠牲になった友達の敵討ちも出来ていないではないか。
 それとも続編が用意されているのだろうか(まさか)。

 なんかヘンなところでリアリティが顔を出すというか、これが伊坂孝太郎の小説の傾向なのでしょうか。途中まで面白かっただけに、この結末には納得しかねます。




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