小粒で地味だが、隙が無く丁寧に作られている。監督の人柄だろうか。
グレゴリー・ホブリット監督作品、実はあんまり観たこと無い。
『真実の行方』『悪魔を憐れむ歌』あたりは観たかったのだけど、スルーしてる。TVで『ジャスティス』を観たくらいか。
今回、初めて劇場でマトモに観ましたが、気に入りました。
映画監督デビュー前はTVドラマの監督で『ヒル・ストリート・ブルース』とか『NYPDブルー』を手掛けたというあたりで、何となく傾向は掴めた(気がする)。
主役にダイアン・レインを起用するというセンスがいいよね。
『ジャンパー』に続いて、ダイアン・レインを立て続けに観た。やはり恋愛ドラマよりサスペンス映画向きの人だと思う。
ダイアン・レイン出演のサスペンス映画はどれも好きなのです。『美しき獲物』とか『ホワイトハウスの陰謀』とか。どれもマイナーな作品でいまいちヒットしていない。多分、この『ブラックサイト』もそうでしょう。
FBIのサイバー犯罪捜査員でシングルマザー、という設定がハマってます。
いつもは座ってディスプレイ相手にネット犯罪をモニターする捜査員が、連続猟奇殺人事件に駆り出されていくという趣向。
サイバー捜査課の皆さんの苦労がチラリと垣間見えるのが興味深い。
「14歳の少女を演じて出会い系サイトでスケベオヤジと延々チャットする」という仕事はやりたくないなあ(笑)。
メインとなる殺人事件も、拉致した被害者を『ソウ』並の拷問器具に繋いでおき、これをネット中継するという猟奇っぷり。アクセス数が増えるほど、器具の設定が進行して死期が早まる。
本家『ソウ』に比べると残酷度が足りませんが、最終的に殺人を犯すのは犯人ではなく、野次馬共のアクセスであるという点が怖い。
ネット上のモラルの欠如というテーマが端的に表れてます。
「キル・ウィズ・ミー(一緒に殺そう)ドットコム」というドメイン名が実に判りやすい。
しかし現実に、海外のセキュリティの甘いサーバーを使えば、無限にミラーサイトを増殖させる削除不能で追跡不可能(これが原題)なサイトを作ることが出来るのだろうか。
多分、可能なんだろう。
で、この映画が素晴らしいのはネタが現代的でありながら、作風はあまりにも古典的であるという点。
実は、きちんと作品テーマの伏線やら、犯人の動機についての説明やらが用意されている。昨今よくある「無目的の愉快犯、劇場型の猟奇殺人」ではないのである。誰でもいいから人を殺したかった――とは、最近よく聞くフレーズですが、サスペンス映画の脚本上、これはやはり「逃げ」では無かろうか。
犯人は最初から周到に計画を練り、被害者を選定し、目的達成に信念を持って臨んでいるのである。関連がないと思われた被害者同士に隠された共通点があり、そこを手繰って過去の怨恨から犯人を特定するという、あまりにもローテクかつ真っ当な捜査展開にちょっとビックリしました。
脚本が真面目だ。
しかしこんなフツーなサスペンス映画の方が今では珍しい、ということの方が問題であるような……。
ダイアン・レインと云えば、昔はよくジョディ・フォスターと対比させられていたが、昨今はダイアンの方が役者として恵まれている気がしますなあ。
『ノーカントリー』のジョッシュ・ブローリンと再婚していたとは知らなんだ。
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