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2008年4月1日火曜日

ノーカントリー

(No Country for Old Man)

 〈老いたる者が棲む国にあらず〉――即ちここは〈血と暴力の国〉である、という原作小説の題名の翻訳なら理解できるが、原題をそのままカタカナにして、長すぎるから後半を省略するなんぞという意味不明の邦題にしてしまった配給会社のボンクラは呪われろ。
 そういう奴こそシガーさんに圧搾空気銃で頭に風穴を開けてもらうべきである。

 悪銭身につかず――というか、「拾ったお金は届けなさい」という実に簡単明瞭な教訓話(爆)。そういえば『シンプル・プラン』というサム・ライミ監督の作品もありましたなぁ。
 それとは別に、現代人の道徳的頽廃に根ざす不条理犯罪の増加、というのもテーマのひとつである。昨今の日本でもこれは笑えない現実です。
 トミー・リー・ジョーンズ演じる老保安官の嘆き節に結構、共感したりして。

 今年のオスカーで四部門制覇――作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞――の傑作であるが、何と云ってもハビエル・バルデムがこの映画の「顔」です。
 ホントは主演男優賞なんじゃないの?
 まぁ、物語的には、マフィアの大金を拾って逃げる男(ジョッシュ・ブローリン)を追う殺し屋(ハピエル・バルデム)と、男を保護しようとする保安官(トミー・リー・ジョーンズ)が話の軸なので、助演なのだろうが……。
 それにしてもインパクトありすぎである。
 原作小説には、この殺し屋についてのビジュアルな描写はほとんど無かったらしいので、脚色賞というのも実はハビエル・バルデムの殺し屋像に対して贈られたものなのかも知れない。いや、きっとそうだ。

 感情を排したあまりにも生真面目な殺し屋。雇われの身であるにも拘わらず、金銭には執着を見せず、特に意味もなく周囲の市民までも殺しながら追ってくる〈歩く災厄〉。
 標的の追跡に疲れたら、ちょっと一服する代わりにその辺にいる人を一人殺す、てな感じで、善悪を超越した振る舞いが実に素敵でした(笑)。なんかもう、食べたり眠ったりするのと同じように、時々人殺ししないと生きていけないひとらしい。

 公開中の『Sweet Rain/死神の精度』では、金城武は人の生死の判定に一週間かける死神の役ですが、バルデムさんならコイン・トスで即決してくれることでしょう(笑)。

 殺伐とした筋書きを緊迫した演出で盛り上げるコーエン兄弟の手腕は実に巧みである。さすが監督賞。
 でも力作であるが故に、鑑賞にも力が要ります。ほとんど音楽のない、効果音だけのサウンドトラックも怖い。多分、サントラCDなんて出ないだろう。

 結末に至るまで原作通りらしいので、実はトミー・リー・ジョーンズにあまり見せ場はない。そこが残念と云えば残念。個人的にはもうちょい活躍して欲しかったのだが……。
 ちょっとラストが拍子抜けというか、淡々としたまま終わってしまって、せっかくトミー・リー・ジョーンズを起用しているのに勿体ない感がありました。
 余韻があっていいという方もおられるでしょうが。

 ――人は奪われたものを取り戻そうとして、更に失う。

 うーむ。サスペンス映画の振りをして、含蓄のあるセリフが印象的な映画でした。


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