凄えぜ。
製作はTVドラマ『エイリアス』や『LOST』を監督したJ.J.エイブラムス。ドラマの方は知らぬが、トム・クルーズの『M:I:3』の監督なので、期待できることは判ってました。新作〈スタトレ〉の監督でもあるし。
〈HAKAISHA〉とはエイブラムス自身が日本公開のために用意してくれた名前だそうだから、きっとあの怪獣の名前なのでしょう(笑)。どうにも怪獣らしくない名前なんだけど、制作者が名付けたのでは仕方ない。
劇中では「何か」とか「あれ」としか呼ばれてなかったけどね。
どうやらエイブラムスは『ゴジラ』が撮りたかったらしい(笑)。
もう、そうとしか思えない。
筋立てはシンプルで、NYの街を大怪獣が壊しまくるのみ。実に単純明快。
ただ、演出が一筋縄ではない。
ホームパーティ撮影中のビデオ係がたまたま遭遇した事件をテープが尽きるまで撮った、というコンセプト。全編がハンディカムによる映像のみ。
究極の一人称視点だけで構成された怪獣映画である。
こんな作品は初めて観た。すごい。
ただならぬ臨場感。素人カメラマンなので画面はブレるわ、ピントはボケるわ、おまけに肝心の被写体からは走って逃げるので、どんな怪獣なのかさっぱり判りません(笑)。
こらぁッ、踏みとどまってピントを合わせろ! と何度心の中で叱咤したことか(爆)。
『ゴジラ』に登場する勇敢なカメラマンとアナウンサーとは雲泥の差である。
でもこのピンボケ・ブレまくりのカメラワークが古典的怪獣映画の作法とマッチして、実に効果的でした。
これではエメリッヒのハリウッド版『ゴジラ』はますます影が薄くなる(アレはアレで好きなのですが)。
韓国映画『グエムル』といい、もう日本の怪獣映画は世界に太刀打ちできないのではないかと、ちょっと暗い気持ちにもなりました。『クローバーフイールド』を越えるのは、並大抵ではないでしょう。
「誰も見たことがない怪獣」というのがウリで、ポスターにも姿がない謎の怪獣ですが、映画のラストでようやくほぼ全身が映ります。なるほど。
しばらくすればフィギュアが発売されて、謎でも何でもなくなってしまうので、インパクトを求める方は早めに劇場に行きましょう(笑)。
ハンディカム撮影のみと云う手法ですが、画面作りは凝りに凝っています。如何に偶然撮影されたように見せるかに知恵を絞っているのがよく判ります。
そして通常のハンディカム撮影用のテープという設定なので、映画全体も短い。
なんとたったの85分。
異様に長いエンドクレジット(特撮関係者の名前が延々と続く)を差し引けば、本編は80分程度か。
ドラマの構成上、最初の人物紹介――ホームパーティ部分――に20分も使っているので、事件発生後は60分しかないという計算になる。
あまりにも短いが中身は濃い。
まぁ、このブレたりピンぼけしたりの映像を長時間見続ければ、船酔い状態になる人が出るというのも理解できるだけに、短くぴしゃりと終わる演出は正しいのでしょう。
しかし最近は本当に90分以下の超大作が多いなあ。
当然ですが、劇中は効果音のみで、映画用の音楽などかかりません。背景音楽が一部に流れるだけ。サントラなどありえない(笑)。
但し、エンドクレジット部分だけには盛大に〈ハカイシャのテーマ〉(爆)が流れます。誰が聴いても伊福部サウンドのパロディなんだけど。
きっと伊福部昭が存命していたら、迷わずエイブラムスは作曲をオファーしていたことでしょう。
ホントに『ゴジラ』が撮りたかったんだねえ。
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