これまたTBS製作による邦画ですなあ。
TVドラマの映画化なわけですが、私はドラマの方はさっぱり観ていません。
だから予備知識ゼロ。
まぁ、〈NEWS〉の山下智久が主演して、山崎努とか竹中直人が出ている映画とだけしか……。
普通、この手の映画は観ないのだが「詐欺師」を扱う映画というので、観てみようかと。
『スティング』とか『スパイ大作戦』のように、相手を引っ掛ける為に一芝居打つというのが好きなのである。何故なら、この手の映画は脚本が勝負。
したがって〈コン・ゲーム〉ネタには面白いものが多い――筈なのだが。
つまらん。
これは映画版だけ観ているからなのか、そもそものドラマからしてこの程度なのか。
ただ、役者の責任と云うよりは、脚本家と演出家の責任だとは云える。役者はそれなりに――山下智久を含めて――頑張っているように見受けられた。
一般的な詐欺師を「シロサギ」と呼称する。
「シロサギ」だけを狙う詐欺師が「クロサギ」だそうだ。
プロの詐欺師を欺す詐欺師の物語――と、銘打つからには、標的になるカモもそれなりの詐欺師であるはずなのに、なんでチャチな罠に欺されるのかなあ。
物語に構造的な欠陥があるように思えてならない。
映画版なので尺が長くなる分、ドラマも二転三転させる必要がある、というのは理解できる。だから敵が最初の罠に引っかからず、二回目の罠は――敵に面が割れている分、不利になって――更にハードルが高くなる、というのもいい。
でもそこまで。
正体がバレそうになる危険、というのは物語を盛り上げるキーだろうに、あっさりクリアされてしまう。ただ物語の中に詐欺の仕掛けが二回続くだけ。
これでは竹中直人が凄くマヌケに見える。
その上に、クロサギはヘンなポリシーを掲げており――自分の詐欺は人命を奪わない(笑)――、ドラマの展開が御都合主義的にこのポリシーが守られるように動いていくのが実に不自然でした。
警察との絡みも何だかなあ。この場合は、クロサギに先んじて竹中直人を逮捕しようという刑事(哀川翔だ)との三つ巴の化かし合いにならねば、面白くないだろう。
多分、脚本として必要なネタが何なのかは判っていたのだろう。それで、とりあえず材料を揃えてはみたはいいが、調理に失敗している。まさに「頭で理解していた」だけ。
構造的な問題といえばもう一つ。
山下智久と山崎努との関係だ。
山崎努は詐欺師界の顔役である。「フィクサー」だそうだ。日本中の主な詐欺師の手口をすべて心得ており、クロサギの大事な情報源である。
私はTVドラマの方は無知なので、なんでそんなフィクサーがいるのか理解できん(詐欺師って、そんなに横のつながりがいいのかなぁ?)が、それは良しとしよう。
でもクロサギの最終目的は「日本中のシロサギを喰うこと」だそうなので、「シロサギの大親分」である山崎努はラスボスである筈なのに……。
なんか馴れ合っている。
結局、山崎努がその気になって情報を売ってくれなければクロサギは動けないのだ。これではクロサギはいいように使われるだけではないか。
物語的には、山崎努にも一杯食わせるだけのしたたかさを見せつけて欲しかったのに、そういうことはしないのである。
TVドラマの方を続けて行くには、二人の関係を壊すわけにはいかないのだろうか。映画版なんだから少しは特別なことをしてもらいたかった。
山下智久のファンはそういうことには拘らないのであろう。
でも、あれではクロサギって、あまりカッコよくない半人前のままだと思えてしまうのですが……。
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