例によってムスメらを連れて観に行きました。シネコンのフロアは子連れで一杯。劇場窓口でもらえるプリキュア応援グッズ〈ミラクルつばさライト〉をピカピカさせております。
まず、上映開始直後にプリキュア達が、〈ミラクルつばさライト〉の使用方法を説明してくれます。これも毎年恒例ですね。
毎回、同じ内容の諸注意ですが、ムスメらはこれが楽しいらしい。ケラケラ笑いながら観ております。が、あまり守るつもりもないらしい。
眩しいから〈ミラクルつばさライト〉はお友達の顔に向けてはいけません。ただしパパは除く。今年のライトも強烈デス。
ライトを持っていないお友達は、心の中で応援しましょう。れいかさんの背景にデカデカと書かれた「心」の書も達筆です。
さて、皆の笑顔とハッピーな未来の為に、バッドエンド王国と戦い続けるプリキュア達ですが、今回はちょっと相手が異なります。TVシリーズの敵は本作ではお休みとなり、ネバーエンド──即ち、終わらない物語──が登場します。
個人的に、物語は長く続けば続くほどいいような気もするのですが、結末が決してやって来ないと云うのも如何なものか。『ペリー・ローダン』だっていつかは……終わるのかなアレは(すいません、SF者ですので)。
昨年の『スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ』(2011年)みたいに、あからさまにTVシリーズとリンクするようなことは無くなりました。やはり単体でも楽しめるストーリーの方がいいですね。
個人的には本作は劇場版のシリーズ中でもかなり上位にランク入りするくらい出来の良い作品であると思います。
冒頭、みゆきちゃん(福圓美里)の幼年時代が紹介されます。あの、誰に対しても人なつこくて、いつも笑顔のみゆきちゃんも、最初はシャイで友達もいなかったとは意外でした。しかし一冊の本との出会いがその後の人生を変えてしまう。
図書館からの放出品の中に見つけた絵本をきっかけに友達が出来て、その経験が後の人生に於いて対人関係の礎となる。まさに「三つ子の魂百まで」ですね。
笑顔でいることの大切さを訴えるその絵本は、しかし最後の数頁が破られ、結末が判らない。幼いみゆきちゃんは、自分がその結末を考えてあげようと、絵本に描かれていた女の子に約束するのですが……。
プロローグが終わって、おもむろにストーリーが始まります。幼年時代の約束はあれからどうなったのか、ひとまず置いといて、絵本を題材にした〈世界絵本博覧会〉にやって来たプリキュア御一行様。
みゆきちゃんとやよいちゃん(金元寿子)のテンションが上がりまくり。反対に付き合わされたあかね(田野アサミ)となお(井上麻里奈)が半ば呆れ顔。キャラが立っているので、説明無しでも判るのが巧いですね。れいかさん(西村ちなみ)だけはいつも通りですが。
博覧会場の外れに怪しいテントが建っていて、中に入っても他には誰もいない。ホラー映画の定番展開のようですが、無論のこと殺人鬼なんて登場しません(すいません、ちょっと期待しました)。
無人のまま映画が上映され、魔物に追われている女の子がスクリーンに映ります。前後のストーリーも判らぬまま観ていると、いきなりスクリーンから女の子が飛び出してくる。
「最近の3D映画は凄いですね」と云うボケもお約束。
映画からキャラクターが飛び出してくる展開に、ウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』(1985年)を彷彿としました。あるいは『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)のようと云うか。
短い上映時間ですし(七一分しかない)、理屈をこねる間もなく、女の子を助けるプリキュア。
この女の子が今回のゲストキャラ、ニコちゃん(林原めぐみだ!)。絵本の世界の住人であると云う。そう云えば、追ってきた魔物も金角と銀角でしたね。
助けてくれたお礼に、プリキュア達を絵本の世界に御招待。
はて。絵本の世界の住人が、どうして映画のスクリーンから飛び出してきたのか。
連れて行くなら映画の世界にして欲しい。などと云う愛のないツッコミはスルーですね。
TVシリーズでは、メルヘンランドと云う妖精の国が登場するのですが、絵本の世界はそれとは似て異なる世界のようです。ここは古今東西の絵本のキャラクターが一堂に会する世界であるそうな。
ニコちゃんはプリキュア達を各々のリクエストに従い、「シンデレラ」、「一寸法師」、「西遊記」、「浦島太郎」、「桃太郎」のエリアに送り込む。絵本の主人公を体験させてくれるというサービスです。
何やら絵本の世界とは、『ウェストワールド』(1973年)に出てきた〈デロスランド〉みたいな……と云うツッコミは、どうせ口にしたところでムスメらには通じないので黙っています。
それに結構、ムスメらは食い入るようにスクリーンに見入っていますしね。それだけでも今年の作品の出来が良いのが窺われます。
まぁ、観ていてバレバレなのですが、このニコちゃんと云うのが、みゆきちゃんが幼年時代に手にした絵本のキャラクターであります。しかも、どうやら「結末を書いてあげる」という約束は果たされていなかったらしい。
自分のことをすっかり忘れているみゆきちゃんの態度に怒ったニコちゃんは「物語を滅茶苦茶にしてやる」と、暗黒魔法みたいな技をふるい絵本の世界を混乱に陥れていく。
しかし、ニコちゃんは最初から復讐することが目的だったのかがよく判りませんです。博覧会の会場に突然現れたのは、狙って登場したのか、全くの偶然だったのか。
狙って登場したなら、みゆきちゃんが博覧会にやって来ることがどうして判ったのか。何か深遠な罠が張り巡らされていたのか。そんなことは気にしてはいけませんね。
シンデレラの世界に桃太郎が現れ、一寸法師の世界は巨大化したシンデレラに襲われ、竜宮城は孫悟空に占拠され、どんどんチグハグになっていきます。
チグハグなのか。クロスオーバーだと思えばこれも楽しいような。
ハッピーエンドもバッドエンドも無い、終わりの無い物語にしてやる、と云うのがニコちゃんの企みのようです。確かに「自分の物語だけは結末が破られていて終わりが無い中途半端なまま」であるのは不憫ですが、他の物語まで恨むのは筋違いでは無いか……などと云う正論はもはや通じません。
それに元々の絵本を書いた絵本作家はどこへいってしまったのか。そこはツッ込んではいけませんか。
更に、ニコちゃんに手を貸し、物語の世界を滅茶苦茶にしようと企む影の魔王(てらそままさき)の存在も明らかになる。
元々、「ニコちゃんの物語」に登場していた魔王が、ニコちゃんの怨念を吸収し続けて巨大化しており、主人公すら操るまでになっていたと云うのが怖いです。
本作はシンプルな物語の中に、ストレートなメッセージが込められていて、非常に判り易く出来ております。しかも実にエモーショナルです。
ニコちゃんを歪めてしまったのは自分が約束を守らなかったからだと知ってショックを受けるみゆきちゃんですが、そこからが非常に前向きです。
過ちを犯したならば、きちんと謝ろう。誠意を持って謝罪しよう。
そして伝えよう。結末を書こうと何度も試みたが、幼い自分には書けなかったのだと。
でも「ニコちゃんの物語」で自分は笑顔の大切さを学んだのだと。自分の人生に最も影響を与えてくれたのが、貴方の物語だったのだと。
このあたりでかなりウルウルきますね。
隣の席を観ると、うちのムスメはもう滂沱と涙を流しております。
更に、恨みの気持ちが消えたニコちゃんの手にした絵本の、破られたページが再生していくワケですが、それは白紙のままになっている。
そしてニコちゃんは自分もまた過ちを犯していたのだと気付く。他人を羨みながら待っているだけではいけなかったのだ。
誰に書いてもらうのでも無い。自分の物語を書くのは自分自身なのだ。
あまりにも判り易すぎるメッセージですが、良いこと云っているのだから素直に感動しておきましょう。
そして巨大化して暴走する魔王を鎮める為に、客席に援助を求めます。劇場内では〈ミラクルつばさライト〉がピカピカと打ち振られ、キュアハッピーはプリンセス・フォームから二段変身。ウルトラ・キュアハッピーに変身です。
あれ。ウルトラ化はハッピー独りだけデスか。ウルトラ・キュアビューティはッ?
そして魔王を倒すのかと思いきや、そこでも意表を突かれました。魔王は倒さない。鎮めるだけ。
何故なら「ニコちゃんの物語」には、魔王もまた不可欠なキャラクターなのだから、倒してはイカンですね。
「私の物語には貴方も必要なんだよ」と魔王を抱きしめるニコちゃん。
子供向けのアニメと云いつつ、これはまた深い物語になっていますねえ。感心しました。
そして現実世界に帰還するプリキュア達。手にした絵本には、ニコちゃん自身が作り上げた結末が描かれていた。
「いつもニコニコ」というシンプルな一文に、心が洗われる気持ちがいたしました。
そこからエンドクレジットなのですが、それが終わってもまだ続きがあります。
上映終了後に、改めてダンシング・タイムが設けられています。しかも今回は場内の照明を点けて、周りがよく見えるようにしてくれている。
でもちゃんとスクリーンも鮮やかによく見える。技術的にも、演出的にもサービスの向上が見受けられます。
プリキュア達が、ちょっとくどいようにも思えるほど、「ダンスの時は周りのお友達に気をつけてね」と注意を喚起してくれます。
そして改めてダンス専用にノンクレジットでED主題歌「満開*スマイル!」を流してくれます。周りが明るいから踊っているお子様もよく見えます。あっちでもこっちでも。
しかし、うちのムスメらは今年は踊りませんでした。うーむ。サスガに九歳ではもう劇場で踊ったりはしないのか。
そしてお姉ちゃんが踊らないので、必然的に妹(七歳)も座ったまま。
まぁ、先刻まで感動して滂沱の涙を流していたところで、いきなり踊りましょうと云われても無理がありますか。
物語も終わり、ダンスも終わり、これでやっと終了かと思ったら、スクリーンからキャンディ(大谷育江)に呼び止められました。
「まだ帰っちゃ駄目クル~」
そうでした。来年の予告編がまだでした。
来春公開予定『プリキュア・オールスターズ New Stage 2』の告知もちらっと流れます。プリキュアの人気は衰えませんねえ。
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