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2012年7月17日火曜日

魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's

(Magical Girl Lyrical NANOHA : The MOVIE 2nd)

 一昨年(2010年)、第一作『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』が公開された際には、〈なのは〉ルーキーだった私ですが、今回はきちんと続編であるTV版『魔法少女リリカルなのは A’s』(全13話)を予習して臨みました(多くのファンの方には復習になるのでしょうが)。ついでにシリーズ第三作『~ StrikerS』の方も少し囓ったりしました。
 しかしTV版『~ A’s』を観ると、画面のサイズが4:3で、今のワイドな寸法16:9に合っていないので、時代を感じてしまいました。それほど古くもない作品なのに(2005年)、時代の移り変わりを感じます。

 今回は公開後、そんなに時をおかずに観に行ったので、平日の夜と云えど劇場もそれなりに混雑しておりました。当然のことながら客層はほとんど野郎ばかり。しかも見るからに学生さんが多い。大学生は自由だなあ。私のような仕事帰りのリーマンの方が肩身が狭いとは何としたことだ(『宇宙戦艦ヤマト2199』の場合とは確実に状況が異なる)。
 しかも入場の際に私の前に並んでいた連中は、当たり前のように「リピート鑑賞券」を手にしており、リピーター用の特典をもらっている。彼らがあまりにもナチュラルに特典をもらいながら入場していくので、入場者全員がもらえるのかと期待してしまった私は、ちょっと恥ずかしい思いをしました。まだそれほど日数が経過しているわけではないのに、もうリピーターの方が多いのか。こいつら全員、公開初日に既に観ているような連中なのか。
 そのような猛者に囲まれ、公開一週間前になってやっとTV版を制覇して、「もうルーキーじゃないぜ。へへん」などと自慢たらしかった私は己の甘さを痛感したのでした。
 きっと劇場内で水樹奈々の「ETERNAL BLAZE」を暗唱できないのは、私一人くらいだったことでしょう。

 それにしてもTV版第一作から七年以上経過しているというのに、変わらぬ人気を維持してますね。劇場版第一作からも二年半過ぎてからの続編公開ですし。
 この調子だと更に二年後の、シリーズ開幕一〇周年にはどうなっていることでしょう。
 順調にいけば劇場版第三作となる筈ですが、TV版第三作『~ StrikerS』は主人公が完全に成長した後の次世代の物語になってしまうので、出来ることなら主人公ローティーン時代の完全オリジナルな物語を期待したいデス。

 ともあれ本作もまた、完全新作なパワーアップ・リメイク。配役もメインキャストは全員オリジナルのまま新録音ですよ。
 一五〇分というかなり長めの尺ですが、元のTV版を非常に巧くまとめていました。安易な総集編ではありません。
 特にTV版前半の展開の圧縮の仕方が見事です。そして後半の泣かせる展開はほぼそのままという構成。原作・脚本の都築真紀の苦労が偲ばれます。監督は第一作と変わらず草川啓造が続投。このコンビのまま、第三作もお願いしたいです。
 とにかく作画のクォリティは高いわ、音響は凄いわ。正直、本作を観ていればTV版要らずだと思います。

 前作は、主人公なのは(田村ゆかり)が小学三年生になる春の物語でしたが、本作はその半年後の年末が背景になります。基本的に冬の物語。一二月の上旬からクリスマスまでに起きる事件が描かれます。
 離ればなれになっていても、なのはとフェイト(水樹奈々)との友情は変わらず、前作で起こした事件の為にフェイトは保護観察の身となりリンディ提督(久川綾)の養女となってこちらの世界へやってくる。
 本作ではまず最初に感動の再会(前作でお互いに交換したリボンで髪を結わえているのがいい)、引っ越し、転校ときて、おもむろに事件が発生。新たな魔導師ヴォルケンリッター達が登場し、二人が戦って同時に破れ、そろって魔力の源であるリンカーコアをごっそり奪われる。

 TV版では事件が起きてから、嘱託魔導師となって市内に拠点を設けるという展開が、随分と短縮されました。リンディ提督も最初から休暇でフェイトに同行しているし、フェイトが同級生となって転校してくる平和な場面が先に来るのは、映画の構成としては正しいですね。
 ユノーくん(水橋かおり)も最初から〈無限書庫〉の司書なので、情報の収集もスムーズです。
 他にも登場キャラクターが整理され、グレアム提督と彼の使い魔アリア&ロッテの出番がなくなったり、なのはの家族についても出番なしになりました。短縮するにはやむを得んですか。
 代わりにレティ提督の出番がちょっと増えてます(配役も鈴木菜穂子から、大原さやかに変更です)。
 個人的には何故、「提督」と云う階級の人物がこんなに沢山いるのか気になるところですが、そこはツッ込んではイカン部分でしょうか。しかも若すぎる(有能なのか、年齢不詳なのか)。
 同級生のすずかちゃん(清水愛)とアリサちゃん(釘宮理恵)はかろうじて残りました。さすがにすずかちゃんまで削ると、ストーリー上差し障りがありますね。

 マッドチルダ式の魔法文明とは別種のベルカ式、と云うのが詳細には不明ですが、それを云い出すと「時空監視局」と云う組織自体がよく判りませんし、細かいところはスルーです。
 とりあえずは魔法と見紛うほどに先進的な超科学文明が二つあって、系統が異なることだけ理解していればいいでしょう(ベルカは既に滅亡している)。
 魔法使いの相棒となるデバイスに搭載された人工知能が、一方は英語で喋り、もう一方はドイツ語で喋るという演出で表現されています。魔法陣も円形か、三角形かで識別される。
 古いSF者としましては、次元がどうこう云われると、キース・ローマーの〈混線次元シリーズ〉やら、マイクル・マッコーラムの『時空監視官出動!』なんてところを想起するのですが、本作とは関係ないデスね。
 重なり合う多次元宇宙を渡り歩く者を「渡航者」と呼び、不法渡航者が引き起こす事件に対処するのが、監視局であるとな。劇中では色々な世界を垣間見せてくれますが、基本的にはこれは全部、地球なんですかね(そーゆーハードなツッコミも野暮ですか)。

 末節部分は幾つも改変されていますが、本筋である滅亡したベルカ式魔法文明の遺産〈闇の書〉と、その新たな主となった八神はやて(植田佳奈)の関係はしっかり描かれ、TV版よりも判りやすくなっています。〈闇の書〉の人格も最初から描かれているし。
 歴代の持ち主の何者かが行った改変プログラムが正常に動作せず、持ち主の生命を蝕み続けている。はやての命を救う為に、主命に背いても〈闇の書〉への魔力蒐集──他者からの魔力の強奪──を続ける守護騎士ヴォルケンリッター達。
 しかし蒐集行為が実は主の死期を早めることにつながることを守護騎士達は知らなかった。

 一般的小学三年生の女子が、そんな異次元の古代文明の遺産から「次の主は貴方です」なんぞと指名されるとか、はやてちゃんは小学三年生で一人暮らしなのかとか、ツッコミ処は沢山ありますが、愛のないツッコミはスルーするのが宜しいでしょう。
 作者の中二病が全開になった感のある基本設定は、ツッ込み始めると作品自体が成立しなくなりますし、私もキライじゃないです、こーゆーの。

 紆余曲折ありまして、序盤で惨敗したなのはとフェイトはパワーアップし、再びヴォルケンリッター達の前に立ちはだかる。
 平和的に話し合いで解決できないのなら、ぶん殴ってでも話し合いに応じてもらおうという姿勢は正しいのか。余計に話がこじれるだけなのでは。小学三年生女子は難しいことで悩んだりしないのか。
 それは良いとしても、背後の時空管理局までそういうスタンスなのは如何なものか。ひょっとして幼い少女達を利用しているだけなのでは。
 いかん。次から次へ邪念が湧いてくるッ(汗)。
 心の中で色々とツッ込み入れつつも、気合いの入った魔法少女の変身シーンは見とれてしまいますね。本作の見せ場でもありますし。スートリーの進行を一時中断してでも、長々と変身シーンを入れるのはお約束でしょう。

 激しい戦闘シーンも活劇としては迫力充分です。結局、真の悪人はひとりもおらず、誰もが誰かを思いやるが故の衝突なのだと云うのが、前作に引き続き描かれます。このシリーズの特色ですね。
 この場面で特に印象的なのは、フェイトが〈闇の書〉に吸い込まれてからの下りですね。
 「優しい母と姉がいる理想的な家庭」の夢を見るフェイト。しかしフェイトの母プレシア(五十嵐麗)による惨い仕打ちに、どれほどフェイトが苦しめられたかと云うのは、第一作で描かれたとおりなので、余計に幻影の甘美さが際立ちます。
 幻影だと判っていても、決して得られることの無かった安らぎに身を委ねていたい。しかし現実世界では、友達がただ一人で戦い続けている。行くべきか、行かざるべきか。
 小学生に何という決断をさせやがりますかね。

 絶体絶命のなのはの窮地に間一髪で救援に駆けつけるフェイト、と云う燃える展開はTV版よりも本作の方がより劇的でしょう。泣かせる演出です。
 続いて、はやてちゃんの魔法少女としての覚醒(また気合いの入った変身シーン)と、〈闇の書〉の邪悪な防衛機構を分離しての決戦。ここはTV版より数段、素晴らしい出来です。
 そして全員が一致協力してのクライマックス。中二展開だと判っていても燃えるッ。

 大団円を迎えてからのエピローグがまた泣かせます。
 実は本作最大の泣かせ処はここからだと云っても良い。正常に復した自律する〈闇の書〉が選択した「たったひとつの冴えたやり方」とは──。

 このあたりで場内から、すすり泣きというか、嗚咽の声が聞こえてきたのでビックリしました。
 うーむ。上映前に劇場内を見回したところでは、どう見ても大学生以上のアニキばかりが座っていたようなのに、どういうことだ。この嗚咽は野郎が発しているのか。
 涙もろい人が多かったのかなあ。気持ちは判りますけどね。

 かくして事件は完全に決着し、二年が過ぎ去った。実はここで物語全体の語り手が現れるのですが、TV版をご存じのファンは最初からバレバレですね。むしろ語り手の正体を知って驚く人の方が少ないのでは。
 TV版では一足飛びに六年後の中学生時代まで過ぎてしまうのですが、なんとかまだ「魔法少女」と呼べる年齢で踏みとどまって戴き、本当に良かったです。

 ところで劇場入口でもらったリピート鑑賞券なんですが、ハンコを押す欄が三回目まであるんですケド……。リピーター特典も二回目と三回目は別なのか。素晴らしい商魂デス。
 コンプリートする猛者も、沢山おられるんでしょうねえ。


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