2011年12月14日水曜日

リアル・スティール

(REAL STEEL)

 リチャード・マシスンの短編「四角い墓場」は、元は懐かしのTVシリーズ『トワイライト・ゾーン』の一編だった筈ですが、どこをどうすれば感動の親子物語になってしまうのか。原案の短編とは似ても似つかぬ物語なので、古いSF者としては、これは全くの別物だと割り切って観るしかありませんデス。
 設定上、残っているのは「近未来では人間の代わりにロボットがボクシングをする」という背景と、「ポンコツ・ロボットを抱えたオーナーが試合に臨む」という部分のみですねえ。
 マシスンの短編は「試合前に故障したロボットに代わって、オーナー自身がロボットの振りをしてリングに上がり、フルボッコにされる」というストーリーだった筈なのですが(笑)。
 昔は拙い特撮技術を補う為に「人間そっくりのロボット」という設定が導入されておりましたが、今やCG全開の特撮となり、バリバリにメカニックなロボット同士が火花を散らしてリアルにドツキ合う場面が撮れるようになったんですねえ。いい時代になったもんだ。
 結果として、仕上がった映画には非常に満足いたしました。

 監督は『ナイト・ミュージアム』シリーズや、リメイク版『ピンク・パンサー』シリーズのショーン・レヴィ。なんか今までの作風からちょっと変わった感じがします。
 主演となる親子には、父ヒュー・ジャックマンと息子ダコタ・ゴヨ。ダコタくんは『マイティ・ソー』で幼年期のソーをチラッと演じてアンソニー・ホプキンスとも共演しておりましたが、将来有望な子役ですね。
 他には『LOST』のエヴァンジェリン・リリーや、『アジャストメント』のアンソニー・マッキー(例の調整局員の役)等が共演しております。

 近未来と云いつつ、格闘ロボット以外にはあまり未来っぽい演出は無く、逆に古き良き時代のアメリカの風景が印象的です。特に序盤の移動遊園地というか、カーニバルの場面。
 広大な牧草地の中にポツンと在って、テントやアトラクションの設備がギラギラと光を放つ景色に、懐かしいアメリカを感じました。そこへトレーラーで乗り付けるヒュー・ジャックマン。
 いかにもドサ回りの興業にやって来ましたという風情。
 ジャックマンは場末のロボット・ファイトで、何とか糊口をしのぐ冴えないオーナー。しかも対戦相手はロボットですらない。
 なんか「牛と戦う」あたり、さすがテキサスというか、ナンデモアリやねえ。

 ジャックマンは、かつては有名なボクサーだったが、ロボットに仕事を奪われ、リングに上がれなくなった男という役。
 ボクシングの技量とロボット操縦の技量は、必ずしも比例するわけでは無いと云うのが哀しいですね。勘は冴えていても、それをロボットで実現出来ない──と云うか、性格的にちょっとお調子者なところがあって、つい油断して負けてしまうというのが、この序盤の試合によく現れていました。
 この夢破れた元ボクサーに、離婚した元妻が亡くなったという一報が入り、孤児となった息子が転がり込んでくる。十年以上も顔を見たこともない少年である。
 当初は、子供を望む親戚の夫婦に、親権を金で売って借金返済に充てようなんぞと云う、外道な事を企んでいたジャックマンですが、少年がロボット・ボクシングの熱烈なファンであったことから、親子で試合に臨み、次第に失われていた絆が回復していく過程がヒューマンなドラマとして描かれていきます。
 この少年も、可哀想なだけの坊やでは無く、結構大人びているというか、オヤジよりもしっかりした性格なのがいいです。
 「ここは小さく勝って、さっさと出よう」なんて、なかなか云えませんよ。
 まぁ、せっかく息子がアドバイスしてくれているのに、オヤジの方に聞く気がサッパリなので借金は膨らむ一方なのですが(汗)。

 ところで世界的にも「ロボットと云えば日本」という認識があるらしく、本作でも日本が色々とフィーチャーされておりました。
 特に日本語の音声認識機能を組み込まれた〈ノイジーボーイ〉がいい。デカデカと「超・悪・男・子」と胸にペイントしていたり、左右の拳にも「苦痛」とか「拷問」といった漢字が表示される。ワルそうなロボットですねえ。
 まぁ、使用される漢字のチョイスが、日本人の目から見るとちょっとズレていたりするのは御愛敬ですけど。
 他にも、少年の着ているTシャツにはカタカナで「ロボット」と大きく書かれていたり、漢字やカタカナはクールなんですかね。

 日本ロボットへのリスペクトの最たるものは、やはり主役ロボの名前が〈アトム〉であることか。誰がどう見ても、これは『鉄腕アトム』へのオマージュですよねえ。
 欲を云うなら、対戦相手となる世界チャンピオンのロボは〈ゼウス〉ではなく、〈プルートー〉と名乗ってもらいたかった。そこまでやるとあからさま過ぎますか。
 〈ゼウス〉の開発者が天才的日本人プログラマであるというのも、ちょっと笑えました。

 廃品集積所で少年が見つけた旧世代のロボ〈アトム〉は、格闘プログラムは無いものの、スパーリング用のシャドウ機能を搭載していた。相手の動きをそっくり再現する機能だけは生きている。しかもスパーリング仕様なので、やたら頑丈で打たれ強い。
 ここからジャックマンの持つボクシングの技量を覚えさせていこうという少年のアイデアが図に当たり、快進撃が始まる。お約束な展開ですが、痛快です。
 しかもリングに上がれないジャックマンの願望も、これで解消されるという図式が巧い。
 特にクライマックスの決戦では、もう試合をしているのはロボットではなく、ジャックマン本人(も同然)であるという演出に熱くなります。

 基本的に物語はロボット版『ロッキー』と申せましょう。
 無名の新人がひょんなことから世界チャンピオンに挑み、善戦する。1ラウンドKOの予想を覆し、チャンピオンに食らいつく新人の闘志に大声援が送られる。
 少年の親権を巡ってジャックマンと争っていた親戚夫婦も、最初は「観ていられないわ」とヘナヘナだったのに、次第にエキサイトしていく様子が微笑ましい。
 死闘の末、勝敗は判定に。
 僅かな点差でからくも判定勝ちで逃げ切るチャンピオン。しかし観衆の声援は果敢に戦った挑戦者に贈られ、判定で負けたが勝負には勝ったぜ的に感動のエンディングへと雪崩れ込む。息子を担ぎ上げガッツポーズをとる父の姿に泣けます。

 さすがにここで「エイドリアーンっ!」とは叫びませんでしたが。
 でもエンドクレジットでサバイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」とか、ジョン・キャファティーの「ハーツ・オン・ファイヤー」が流れてもちっとも不自然じゃないよ。
 あるいはビル・コンティの「ロッキーのテーマ」が流れてもいい(でも本作の音楽はダニー・エルフマン)。
 あまりにもパターンが同じなので、これはひょっとして『ロッキー2』的な続編もあり得るのでは無いか……と思うのデスが、どうなんでしょ。

●余談
 リチャード・マシスン原作の映画化作品は『激突!』のようなサスペンスから、『ヘルハウス』のようなホラー、『ある日どこかで』、『奇蹟の輝き』のようなロマンチック・ファンタジーまで色々あって、どれも大好きです。でもやはりSFがいいですねえ。
 近年も『アイ・アム・レジェンド』やら『運命のボタン』といった映画化作品がありますが、今後も過去のTVドラマの原作を発掘してリメイクしていって戴きたいです。
 そう云えば『縮みゆく人間』のリメイクという企画はどうなったのでしょうか。


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