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2011年11月11日金曜日

スクリーム4/ネクスト・ジェネレーション

(SCREAM 4)

 ウェス・クレイヴン監督作の中では『エルム街の悪夢』と並んで『スクリーム』も好きです。
 このシリーズはホラー映画のパターンをパロディにしながら、ちゃんとしたスリラー映画になっているのがいいですね。特に登場する殺人鬼──ゴーストフェイス──が、特定の人物ではないという着眼点が素晴らしい。
 ところでこの殺人鬼、「ゴーストフェイス」という呼び名が定着しておりますが、某有名ヒップホップ・アーティストと同名なのは構わないのですかね?

 それまでのホラー映画の有名な殺人鬼──ブギーマン、ジェイソン、フレディといった連中──は皆、単体の殺人鬼で、それはそれで私も好きなのですが、ゴーストフェイスは複数の人間による掴み所のないところが逆に面白いです。全作、正体は別人だし。
 フレディとは対極的に没個性な殺人鬼。
 誰でもあのマスクを被ってナイフを持てばゴーストフェイスになれてしまう。毎回、誰が殺人鬼なのか判らない。同時に複数の人間がゴーストフェイスを演じることも可能。
 このシリーズは、ホラーでありながら、優れたミステリーでもあります(いや、そんなに持ち上げることもないか。脚本の整合性に疑問なところもあったような気もするし……)。
 超自然的描写のない現実的な殺人鬼である点も『エルム街の悪夢』とは対照的ですね。
 それだけにナイフを振りかざして襲いかかってくる際に、障害物に蹴躓いて転倒するなんぞというギャグなのかシリアスなのかよく判らない場面もありますけど(笑)。

 さて、近年は過去の名作ホラー映画が次々とリメイクされる時流にあって、遂に『スクリーム』もか……と、思ったらクレイヴン監督本人の手による続編でした。脚本もケヴィン・ウィリアムズが戻ってきてくれたので、大変嬉しいです。
 一作目(1996年)は一般的ホラー映画全般のパターンをネタにして。
 二作目(1997年)はパート2映画にありがちなパターンをネタにして。
 三作目(2000年)では三部作映画のパターンをネタにするなど、よく続くものだと感心していました。
 そして完結したと思っていたのに、十年経ってまさかの第四弾。今回のネタは「リメイク・ホラー」。シリーズ第四作にして、本作自身が第一作のリメイクでもあるという構造が巧いです。表題も “SCRE4M” だし(Aと4が合体している)。
 セルフ・パロディでありながら、今回もシリアスな連続殺人が展開していきます。ウィリアムズの脚本が巧い。
 気になる部分と云うと、よくアメリカは銃社会であると云われながら、ナイフを持った殺人鬼に皆が次々にやられていくという基本的な展開ですかねえ。家に銃が置いてあるなら、女子高生だけで留守番していても、対抗できそうな気もするのですが、思っているより銃は無いのですかね(そこはスルーしてあげないとイカンのですか)。

 ウッズボロー連続殺人事件は、劇中では『スタブ』(刺殺)という題名で映画化され(実は監督はロバート・ロドリゲスだった!……と云うことになっている)、好評につきシリーズ化……はいいのですが、さすがにパート4、パート5と続くとダレてくるというのは、世間じゃよくあることですね。なんかもう色々なシリーズを揶揄していると云うか、ケンカ売ってるようで笑えるます。おのれ、『ソウ』を愚弄するか(いや、でも「薄っぺらで血と肉が飛び散るだけ」という指摘に反論するのは難しいかも)。
 もう女の子だけでホラー映画観ていると、殺人鬼から電話がかかってくるというのは、黄金のパターンですな。
 冒頭のショッキングなシーンが、実は『スタブ4』の一場面でした……と思ったらそれを観ている女の子も『スタブ5』の一場面で、実はそれも『スタブ6』の……。
 延々続く入れ子構造のOPが人を食ってますねえ。

 今回、「ネクスト・ジェネレーション」なんぞと云う『スタートレック』を思わせるようなサブタイトルが付いていますが、原題には付いてません。あまり正確な内容とも云いがたいデスし。
 まずはメインの登場人物が皆勤賞なのが大変めでたい。
 シドニー役のネーブ・キャンベルを始め、デューイ役のデヴィッド・アークエット、ゲイル役のコートニー・コックス。この三人はもう皆勤賞──と云うか、この三人以外の他の皆様は途中でゴーストフェイスの餌食になっちゃったワケですが……。
 そう云えば前三部作にはリーヴ・シュレイバーもずっと出演していたのだと、懐かしく思い出しました。三作目も生き延びてくれれば、今作でも登場してくれたろうに。残念デス。

 今回、初登場となるのが、シドニーの従姉妹ジル。実はお母さんには妹がいたらしい。完全な後付け設定ですが、こんなのは「よくあること」ですね。
 歳の離れた従姉妹であるので、まだ高校生。ジル役のエマ・ロバーツはなかなか美人です(そりゃ、ジュリア・ロバーツの姪だし)。
 ジルと一緒に登場するのが現役ウッズボロー高校映研のメンバー。
 かつてのランディ(ジェイミー・ケネディ)の後輩たちですね。先輩に負けず劣らずオタクぽい。
 ロリー・カルキンが非モテな映画オタクを熱演しております。マコーレ・カルキンの弟だそうで、目元がよく似ている。あれ? でも『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』の時とは、少し顔立ちが変わっているような……と思ったら、あっちはキーラン・カルキンか。
 カルキンは七人兄弟で、長兄マコーレの弟たちも俳優になっているそうな。ロリーは末弟。いつか兄弟が一堂に会する映画が出来ないものか(笑)。
 エマ・ロバーツとロリー・カルキンはこの先、もっとビッグになって戴きたい。

 しかし新世代のキャラも登場して「ネクスト・ジェネレーション」と云うのかと思ったら、新世代キャラはもっぱら犠牲者要員でしたか。
 まぁ、不用心でバカなことするキャラは高校生の方がお似合いですから(失礼な)。
 殺人鬼が街に帰ってきている──と云うか、模倣犯が出没している──のに、『スタブ』シリーズの連続マラソン上映大会なんぞという、おバカ企画を決行するとは、犠牲者を増やそうとしているとしか思えぬ。
 第一作でもクライマックスはホラー映画鑑賞パーティでしたから、ちゃんとなぞっているワケですね。
 あとになって考えると、すべて殺人鬼の計画通りの展開だったというのが巧い。妙に辻褄が合っている。ケヴィン・ウィリアムズ入魂の脚本とは伊達ではないか。

 リメイクの常として、オリジナルの展開をなぞりながらも、オリジナルよりも派手にいこうという、一種のメタ的な展開が面白いです。これは過去の殺人事件の模倣であると同時に、『スクリーム』のリメイクでもあるのだから。
 スラッシャー演出も血糊倍増。
 でも可愛い女の子のハラワタ見せるのは勘弁して下さい(汗)。

 最初はこのまま旧シリーズのキャラは一掃され、これから先は新世代キャラの活躍か……と思っていたら違いましたね(笑)。
 やっぱりシドニー大活躍やんけ。ゴーストフェイスに勝てるのはシドニーだけです。
 新たなゴーストフェイスに向かって云い放つタンカが痛快でした。

 「オリジナルを改悪しないで!」

 なんかメタ的な発言ですね(笑)。
 ケヴィン・ウィリアムズには新三部作構想もあるそうですが、この先も『スクリーム5』とか『スクリーム6』とか製作されるのでしょうか。劇中の『スタブ』シリーズみたいに失速はしないでしょうが。いっそ本当にロバート・ロドリゲスにも番外編で『スタブ』を製作してもらいたいデス。


●余談
 個人的にウェス・クレイヴン監督のホラー作品では『ショッカー』(1989年)も好きなのですが、さっぱり忘れ去られているのが哀しい。こっちもリメイクして欲しいなあ。



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