2011年10月29日土曜日

三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

(THE THREE MUSKETEERS)

 アレクサンドル・デュマの『三銃士』がまた映画化されました。もう何度目だ。欧米ではテッパンな物語と云われているだけのことはあります(笑)。
 中世欧州を舞台にしたチャンバラ時代劇は、いつでも人気がありますな。
 昨年は『ロビン・フッド』、今年は『三銃士』か。
 大体、この手の物語になると、日本の『忠臣蔵』とか『水戸黄門』と同じく、「今度は誰があの役を演じるのか」というのが話題になります。もはやストーリーはほぼ一緒だから、特に話題にはならんか。
 はいはい、またまた「王妃の首飾り」事件ですね。たまにはデュマの原作の違う部分も映画化してもらいたいのですが。『仮面の男』(1998年)くらいが例外ですか。

 で、配役を見ると、いかにもポール・アンダースン監督作品。
 ミレディーがミラ・ジョヴォヴィッチ。いまだかつて、ここまでミレディーが大活躍する『三銃士』の映画があったであろうか。素晴らしいデスね(笑)。
 リシュリュー枢機卿がクリストフ・ヴァルツ。ロシュフォール伯爵がマッツ・ミケルセン。
 そしてバッキンガム公爵がオーランド・ブルーム。オーランドがバッキン役か(どうも三谷幸喜の人形劇『新・三銃士』の所為で、公爵のことを「バッキン」と呼んでしまう)。しかも今回はバッキンが悪役ですよ。「首飾り事件」でここまで目立つバッキンというのも珍しい。しかもリシュリューに並ぶ悪党。
 一般的にオーランド・ブルームを『三銃士』に配役するなら、アラミス役あたりではないかと思われますが、意表を突いておりますね。しかも本人が実に楽しそうに悪役を演じている。
 かくして悪女ミレディーとバッキンガム公爵ばかりが目立って、リシュリュー枢機卿とロシュフォール伯爵が霞んでしまうと云う、実に珍しい『三銃士』が出来上がりました。

 一方、タイトルになっているのに、もっと目立たない銃士隊の面々は……。
 アトスが、マシュー・マクファディン。
 アラミスが、ルーク・エヴァンス。
 ポルトスが、レイ・スティーヴンソン。
 うーむ、地味だ。いや、実力派の俳優を揃えており、画で見ると「いかにも」と云う役作りであるのは見事なのですが。パッと見て、誰が誰だかすぐに判るよう記号化されたキャラクターになっているのは素晴らしいデス。総じてこの映画はキャラクター造形がアニメ的ですね。特にポルトスはすぐ判る。
 そして一応の主役であるダルタニアンが、ローガン・ラーマン。パーシー・ジャクソン君か。なかなかフレッシュではありますが……それなり。

 まぁ、何を云うにしてもミラ姐さんのミレディーですねえ。歴代ミレディーの中でも異彩を放っています。フェイ・ダナウェイや、レベッカ・デモーネイにも引けを取りませんよ。
 クリストフ・ヴァルツのリシュリュー枢機卿も、チャールトン・ヘストンや、ティム・カリー、スティーヴン・レイといった先輩諸氏にも負けない貫禄です。でも、どっちかと云うとNHKの『アニメ三銃士』の実写版という風情ですが(笑)。

 その他の配役では、コンスタンス役のガブリエラ・ワイルドが美しいですね。結構、気が強くてダルタニアンにすぐにはなびかないあたりが現代的です。まぁ、ダルは田舎者ですから。
 もうコンスタンスは人妻であるという設定は、無視されるのがお約束か。
 それからルイ十三世役のフレディ・フォックスもいい感じデス。幼稚で我が侭な、いかにもなバカ殿様ですが──三谷幸喜の『新・三銃士』の国王にかなり近い──、ラスト近くでは自信を付けてきて、立ち居振る舞いにも変化が見られるようになってくる演技が巧い。
 そう云えば、アトスとミレディーの関係も『新・三銃士』の設定に近いですが、アンダーソン監督は観ていたのかしら。

 しかしリチャード・レスター監督版の『三銃士』(1973年)はもう遠い昔か。ピーター・ハイアムズ監督版(2001年)では香港ワイヤーアクションまで取り入れておりましたが、今や『三銃士』もCG合成バリバリの3D映画ですね。
 ポール・アンダーソン監督だから仕方ないか。でも結構、ドイツはバイエルン地方でのロケや、実物を用いたセット撮影も力を入れていたそうなので、何でもかんでも合成にしたCG映画のような不自然さはありませんです。
 また、背景もそうですが、衣装の絢爛豪華さもかなりの力の入れ具合が見て取れます。貴族の皆さんの豪華な衣装も見どころのひとつでしょう。特にドレス姿のままアクションを演じるミレディが凄いデス(これはミラ姐さんのこだわりだったとか)。

 まぁ、なんだ。
 船が飛んだりしますけど。
 「伝説よりもハデに行こうぜ!」と宣伝されているとおり──「伝説」と云うよりは、「原作」でしょうが──ど派手な展開は、アンダーソン監督なんだから大目に見てあげましょう。どこが『三銃士』なんじゃいと云うような物語にはならずにギリギリ踏みとどまっている分、マシでしょう。
 きっと泉下では、アレクサンドル・デュマ先生や、レオナルド・ダ・ヴィンチ大先生が怒り狂うか呆れ果てているのでしょうが。
 でもアクション場面はかなり面白く演出されていて、それこそアニメのようです。
 銃士隊は十七世紀フランスに於ける特殊工作部隊だったという解釈が奇抜ですわ。
 忍者のようなアトスとか、バットマンのようなアラミスとか、色々と原作ファンからすれば如何なものかというクレームもあるのでしょうが、戦国武将が超人化していく現代にあっては、これくらいは可愛いものでしょう。
 どうせならトレヴィル隊長も登場させて、困難な任務を命じる場面とかも見せてもらいたかったですね。

 アンダーソン監督は『バイオハザード』の監督であることばかり引き合いに出されておりますが──そりゃ、一番のヒット作だからねえ──、他の映画もちゃんと監督できるのですよ。
 でも、なんちゅーか、『バイオハザード』の悪い癖というか、「きちんと完結させずに続編につなぐ」エンディングをここでもやってしまったので苦笑してしまいました。コレ、続くのか。
 どんな続編になるのだ。次こそは原作、完全無視になってしまうのでは。心配だ。

 3D映画でありますが、2D字幕版で観賞しました。特に3Dにしなくても良かったとは思いますが──場面展開の際に表示される地図が一番、立体的のようでしたが──、監督は以後の作品も全部3Dで撮ると公言しておりますな。大丈夫なのか。
 しかし本作はジェイムズ・キャメロン直伝の3Dカメラによる撮影であり、決して2D撮影したフィルムを変換しているワケではないというのが偉いですね。その意味では、逆に2D版で観てしまったのは邪道だったのか……。

 日本語吹替版も上映されていたので、パンフレットには吹替の配役も記載されておりました。
 アトス東地宏樹、アラミス津田健次郎、ポルトス立木文彦、ダルタニアン溝端淳平、ミレディー檀れい、リシュリュー小川真司、ロシュフォール西凜太朗、バッキン中村悠一といった面々。
 悪くはないでしょうが、個人的にはディズニー製作のヘレク版『三銃士』(1998年)の方が声優さんに馴染み深くて好きなんですけどね。
 アトス堀内賢雄、アラミス山寺宏一、ポルトス玄田哲章、ダルタニアン宮本充、ミレディ高島雅羅、リシュリュー麦人、ロシュフォール金尾哲夫。その上、ルイ十三世が森川智之で、アン王妃が井上喜久子ですからね。




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