2011年9月28日水曜日

マルドゥック・スクランブル/燃焼

(Marduck Scramble : Combustion)

 昨年の『マルドゥック・スクランブル/圧縮』に続く三部作の第二弾。三部作の真ん中というのは作劇としては難しいパートではありますが、頑張って乗り切りました。
 それにしても昨今、OVAの劇場公開と云うのも珍しくはなくなったとは云うものの、年に一回、六〇分の作品を三回というのも……。
 公開される間隔が丸一年間ではなくて、十ヶ月でパート2に漕ぎ着けてくれただけでも有り難いと云うべきか。とは云え、もう少し間隔を詰めてもらえると、もっと有り難いのですが。『トワノクオン』並とは云わぬまでも、『機動戦士ガンダムUC』みたいに半年程度には……。
 物語的には一段落どころかクリフハンガー式に「主人公、ピーンチ!」でつづく。そのまま一年待たされるというのは、やはり辛い。

 但し、作画のクォリティは非常に高いデス。背景も人物も実に綺麗。待たされた甲斐はあったと云うべきでしょう。3DでもCGでもない、2Dのアニメを劇場で観ると、何故かホッとしますな。日本のアニメはこっちの方がいいや(笑)。

 キャラの紹介も、前回のあらすじも、一切ないままに銃撃戦の途中からいきなり始まるファースト・シーン。DVDで補完せずに鑑賞したので、記憶に頼りながらでしたが、とりあえず問題なし。
 前回は原作を読まないまま鑑賞しましたが、今回は読み終えているので、ストーリーの展開も追いやすかったです。
 原作者である冲方丁自身が脚本を書いている所為もありますかね。

 設定上、主人公のルーン=バロット(林原めぐみ)は声帯を使って発声せずに、常に機械的に声を出してます。したがって林原めぐみの声も加工されているワケですが──アフレコも骨伝導用マイクを装備しての収録だったそうな──、前作『圧縮』ではエフェクトが効きすぎて、いまいち聞き取り辛かったという記憶がありましたが、今回は非常にクリアでした。

 それにしても声優陣は豪華ですね。しかも渋いお方ばかり集めている。可愛い女の子は主人公だけみたいなものですからね。
 特に今回のゲストキャラである〈楽園〉の博士とカジノのディーラーがいい。
 ボイルド(磯部勉)の追撃から逃れて逃げ込んだ研究施設〈楽園〉の創始者である三博士の最後の生き残り、プロフェッサー・フェイスマン役が有本欽隆、カジノで登場するディーラーのベル・ウィング役が藤田淑子さんですよ。いいですねえ。洋画ライクで。
 藤田淑子さんの凛とした風情の声がキャラのイメージ通り。
 そしてまた、ラストに登場する最強のディーラー、アシュレイ役が土師孝也。アシュレイは今回はチラ見せ登場だけでしたが、第三部に期待しております。

 前回、前座のザコ扱いだった殺し屋集団バンダースナッチ・カンパニーの唯一人の生き残りミディアム役は若本規夫。今回も快調にトバしてくれますが、あまり出番は無かったか。原作でもそうなんで仕方ないとは云え、せっかく生き残ったのに……。惜しい。
 もうボイルドより、ミディアムの方を生かしておいてもらいたいくらい。

 林原めぐみ以外のレギュラー陣も、実に安定しておりますな。八嶋智人、東地宏樹、中井和哉、磯部勉。特に八嶋智人がシリアスな役を演じて、他の声優さん達の演技と比べて遜色ない。巧いものデス。
 この劇場版が製作される数年前に、一度アニメ化の企画が持ち上がって中止になっていたそうで、その時の配役ではボイルドは中田譲治だったとか(バロットは変わらず林原めぐみ)。そっちのボイルドもちょっと観てみたかった。

 総じて原作通りだし、原作者が脚本を書いているので問題なしなのですが、イルカと電脳空間の描写がちょっと、よくある感が漂ってしまった気がして残念でした。
 サイボーグに改造されたイルカ(浪川大輔)が凄腕のハッカーであるという設定が、昔懐かしいサイバーパンク的──ぶっちゃけ、モロにウィリアム・ギブスンの小説──だったりするのですが、ここは好意的にオマージュを捧げていると解釈すべきなんですかね。
 概ね巧く処理されていますが、このあたりの「電脳空間をハッキングして、敵が隠している証拠の所在を突き止める」という展開の演出が、その前後のドラマと比較してイマイチな感じ。全体のクォリティが非常に高いので、無難に逃げたような部分がちょっと気になりました。
 あまりにも説明的なセリフも如何なものか。
 まぁ、こういうのは贅沢な注文なんでしょうけど。

 後半のカジノに乗り込んでいく下りから、ガラリと雰囲気が変わるのが印象的です。しかも、ポーカー勝負の描写もセリフではイチイチ説明しない(それだけに〈楽園〉でのイルカの説明セリフが残念)。
 ルーレット勝負も細かいカットを積み重ねながら、スピーディに「なんか知らんがスゴい勝負」が行われていると感じさせてくれる演出が巧いです。

 スロットマシーン、ポーカー、ルーレットと順調に勝ち進んでいくバロット。
 しかしここまで原作を消化してしまっていいのかなあと心配になります。
 第二部は〈楽園〉と電脳空間だけにしておいて、カジノに乗り込むあたりで「つづく」になるのかなぁと漠然と予想していたのですが、外れました。
 もはや残るはクライマックスのブラックジャックの大勝負だけの筈なのですが……。

 今回、ボイルドの回想シーンで、ウフコックとボイルドの関係がチラッと説明されましたが、完結編ではもう少し詳細に見せて戴けるのでしょうか。どうせなら前日譚にあたる『マルドゥック・ヴェロシティ』の一部もドラマに取り込んでもらえると嬉しいのですが。
 いや、いっそそっちも丸ごとアニメ化して戴きたい。

 とりあず第三部『排気』も必見でしょう。来年が楽しみです。でも出来るだけ早くお願いします。




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