しかしこれはまたB級映画の鑑のような映画です。
一切のヒネリ無し。黄金のパターン。昔懐かしい「動物パニック映画」の復活ですよ。近頃はこんな呼び方はしないのか(汗)。
舞台はコロラド州。地殻変動によって数百万年もの長きに渡って外界から隔離されていた地底湖が、コロラド川とつながってしまった。地底湖には獰猛極まりない肉食魚が生息しており、それが解き放たれたのであった。
はいはい。地底湖に単一種による生態系が確立されており、共食いで生き延びていたという設定は、無茶ですとも。でもそれが何か?
まずはタイトル前の前座として、釣り船でのんびりしているお爺ちゃん(リチャード・ドレイファスがこんなところに!)が血祭りに上げられます。そしてタイトル。
折しも田舎町はスプリング・ブレイクのフェステバル開催に沸き返っていた。「スプリング」と云っても、気候は夏同然。そもそも「スプリング・ブレイク」という風習自体、米国独自のものだそうですが、若者達が開放的になってバカ騒ぎするシーズンだそうな。
もう襲って下さいと云わんがばかりの設定。
レジャー・シーズンの開幕に繰り広げられる大殺戮。外しません。
水中を進むピラニア視点の映像もお約束。
3D映画ですが、『アバター』や『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』のように、画面の奥行きがどうとか、世界観の構築がどうとか、難しい理屈はこの映画にはありません。そもそも撮影自体は2Dの「後付け3D」映画ですし。
技術の無駄遣いと云われようとも、とにかく3Dで立体的に見せる。
ナニを?
おっぱいを!
巨乳美人のおっぱいがブルンブルーン。素晴らしいデスね。総統閣下にも御満足戴けることでしょう。この映画の2D版なんか観ちゃダメです(そもそもそんなの上映していないか)。
この映画はもう、前半は女優陣の水着姿をエロくエロく活写し、後半は殺人魚群がフェスティバルに集うバカ者共を血祭りにあげていくスプラッタ描写にこれでもかと全力投球するという、中身もナニもない爽快なバカB級映画です。
エロとグロ。それしかない。
監督は『ミラーズ』の若手監督アレクサンドル・アジャ。
なんと誠実な監督でしょうか。実に潔い。
物語は定石通り。解説不要でさえありますが──。
まずは前兆。不審な失踪事件。やがて喰い殺された犠牲者の無惨な死体が発見される。
危険な生物が水中にいる。
フェスティバルを即刻中止にしろと進言する保安官。
でも年に一度のお祭りなのである。田舎町の稼ぎ時なのである。誰がそんな警告を聞くものか。どこまでもパターンを守ろうとする見事な脚本デス。
でも出来れば「頑固な町長さん」も登場させてもらいたかった。
さて、リチャード・ドレイファスに続いて、クリストファー・ロイドの登場。B級映画のくせに妙に豪華な配役。これがアクアショップの店長役。
捕獲された一匹のピラニアを持ち込まれ、保安官に「これはナニ?」と訊かれた途端、ものすごい博識ぶりを披露する。
「まさかそんな。こいつは二百万年も前に絶滅した筈の──」
実は田舎町のアクアショップ店長は、隠れた古生物学の権威だったのだ。このブレない演出。B級映画であることに迷いがありません。
監督の意向では、ジョー・ダンテとジェームズ・キャメロンにカメオ出演してもらいたかったそうですが、キャメロンが断ったのでボツになったとか。ダンテの方は快諾したそうなのに。残念。
まぁ、キャメロン御大は『殺人魚フライングキラー』にはいい思い出が無さそうですからねえ。
他にもイーライ・ロスがレイクサイドで開催されるアホな「濡れたTシャツ・コンテスト」の司会役で登場。ボインボインなお姉さん達に水をぶっかけてました。楽しそうだなイーライ。ちゃんとその後に無惨に死ぬところまで律儀にこなしてくれます。
今風なのは主人公の母親が街の保安官であることか。エリザベス・シューも凛々しいおばさまになられましたね。後半は人命救助に奔走する肝っ玉母さん。
一応の主人公は、この保安官の息子です。スティーヴン・R・マックイーン。なんだそのスティーブ・マックイーンに激似の名前は──と、思ったら孫でした。へえ。
無駄に3Dな場面がふんだんに盛り込まれた楽しい映画です。
特に、全裸の巨乳美人がふたりして水中で戯れる美しい場面。素晴らしい水中レビューショー。ひょっとしてこっちの方が正しい3Dの使い途なのでは……。
ジェームズ・キャメロンは「こんな映画に3Dを使うなんて」と苦言を呈したそうですが、案外、家庭に3Dテレビを普及させるのは『アバター』や『サンクタム』では無く、こういう映画なのではと思っちゃいますね。
巨乳美人が喰い殺されたあとには、シリコンパッドだけが浮いているとか、巨根自慢のAV男優兼監督が自慢のナニを喰いちぎられた後、水中でデカマラを奪い合うピラニアの様子を映すといった、ブラックなジョークも随所に見受けられます。
ラストはレジャーボートを爆破し、その衝撃で水中のピラニア共を一網打尽。ダイナマイト漁は違法デス──と云う、いかにもB級ぽい解決策。
更にそのあとにも、お約束が待っている。
一件落着と思いきや、クリストファー・ロイドが興奮して連絡してくる。実はアクアショップに持ち込まれたピラニアは稚魚に過ぎなかったのである。
全滅させたと思っていたのは、単なる稚魚の群れだった。
じゃあ、親は?
──と云うところでショッキングなラストシーン。お見事です。
エンドクレジット後に予告編が出ました。もう続編が用意されているのか。
続編のタイトルは『ピラニア 3DD』。2012年1月公開予定。
また無駄に「D」がひとつ追加されているような気がします。ハッタリ効かせた題名だなあ。
やっぱり親は飛ぶのか。フライングキラーなのか(笑)。
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