続編が前作を超えることは滅多にないが、これは越えたと思います。面白いし、感動的でもある。
前作では、カンフーオタクな駄目駄目パンダのポー(ジャック・ブラック)が見事に修行を積んで「龍の戦士」となるまでが描かれました。
今回は中国全土の危機を未然に防ぎ、ポーの出生の秘密も明らかになります。
え? 出生の秘密。
前作でも描かれたとおりポーの実家はラーメン屋。ラーメン屋の親父はガチョウ。不出来な息子はパンダ。
いや、もう、血が繋がっていないのは誰の目にも明らかだろうに。
まさか、その歳になるまで本当に知らなかったのかッ。
特に深く考えていなかった設定にこじつけて続編をひねり出すネタにしてしまう脚本が素晴らしいです。無理矢理やね(笑)。
今回は中国四大発明のひとつ「火薬」が絡んできます。花火は火薬の発明とほぼ同時だったそうであるから、武器への応用が後から来るというドラマは正しいのか。すると特に物語の時代は明らかにされていないが、唐の頃なんですかね。
代々、ゴンメンの街はクジャクに治められ、クジャクは花火を管理する役職も担っていたが、跡継ぎであるシェン(ゲイリー・オールドマン)は火薬の破壊力に魅せられ、武器への転用を考え始める。心配した両親は占い師(ミシェル・ヨー)に相談するが、「シェンが改心しなければ、いずれ白と黒の戦士に倒される」という不吉な託宣を授けられてしまう。
だが逆にシェンはその占いの先手を打って「パンダの里」を急襲し、里を壊滅させてしまう。パンダが希少動物になった理由がコレか。
息子の残酷な仕打ちに心を痛めた両親はシェンを追放するが、ひねくれたシェンは復讐心を抱いたまま改心することはなかった。
そして時は流れ……。
不吉な託宣。それを回避する為の虐殺。難を逃れた赤ん坊は、川に流され、やがて別人の手によって育てられ、託宣を実現する運命の子となるのであった。
──って、あれ? 中国を舞台にした物語だと思っていましたが、バリバリにキリスト教的聖書のエピソードを観ているようでした。
ナンデスカねえ。よくある物語の類型なのでしょうが、やっぱり脚本を考えるのが米国人だからなんでしょうか。
このあたりに中国側が反発する理由になっているんですかね。あんまり関係ないか。
エンターテイメントを文化侵略だと騒ぎ立てる方がどうかしている。
聞くところに拠ると『カンフー・パンダ2』は米国による文化侵略であるとして、中国の学者先生らが反対運動を展開したそうですが。ワケ判らんですねえ。
それどころか私が観たところ、この映画には中国文化に対する深いリサーチとリスペクトすら感じられました。
劇中に登場する街並みの風景、建物、文化の様子は、しっかりした考証に基づいているように見受けられる。フツーに香港映画とか観ているのと大差ないのですが。
ジャッキー・チェン主演の映画みたいに、狭い路地裏を人力車で追いかけっこしてみたりするのですが、見事に自家薬籠中のものにしている。
それとも中国人の目で見るとおかしな部分が多々あるのだろうか。
だとしても、そういう部分は笑ってツッコミのネタにしてあげる方が宜しかろうに。
まぁ、ひとつだけ私もツッコませて戴けるなら、劇中に登場する「カンフー評議会」という設定が、なんちゅーか『スターウォーズ』のジェダイぽくて、いかにも米国人の発想であるように見受けられました。政治的な背景が一切、描写されないので、いかにも評議会が国を治めているかのような印象がある。でもこういうのはツッコむだけ野暮か。
物語としては、よく出来ています。面白いデス。
実はポーには、クジャクの羽の模様にまつわるトラウマがあったのだった。幼少時の忌まわしい記憶に結びついており、クジャクの羽模様を見るとフリーズしてしまう。
過去を克服し、ポーはシェン大老の野望を阻止できるのか。
バレバレな伏線として、冒頭にシーフー老師がポーに披露する大技があります。
「心の平安」を得た者は、気の流れを操ることが出来る……らしい。これがクライマックスの決戦で活かされるわけですが、こういう王道的伏線は観ていて嬉しいですね。
この「心の平安」と云うのが、今作では強調されています。
大事なのは過去の自分ではない。現在の自分が何者であるのかということ。それを悟れば心の平安は自ずと訪れてくる──と云う、黄金のパターンですね。
ここでポーとは対照的に、シェン大老を決して心の平安が得られない人物として描くことで、キャラの対比が際立ち、シェン大老が只の悪党ではなく、憐れむべき存在に見えたりします。巧い演出ですな。
基本は明るいコメディなのですが、締めるべき部分では感動的ですらある。判っていても、ちょっと泣ける。
シェン大老役がゲイリー・オールドマンだというのも納得か。
でも私が観たのは日本語吹替版でした(爆)。
字幕版の上映がほとんど無いのだから仕方ないのデス。これはDVD化されたら、もう一度観るしか。
まぁ、ゲイリー・オールドマンの吹替が藤原啓治でしたので、それはそれで嬉しかったのですが。それに3D上映なので、吹替の方が観やすいし。
声の出演で云うと、ジャック・ブラック、ダスティン・ホフマン、アンジェリーナ・ジョリー、ジャッキー・チェンといった前作からのレギュラー陣に加え、ゲイリー・オールドマン、ミシェル・ヨーといったゲスト陣も豪華なのですが、特にジャン=クロード・ヴァン・ダムまでが出演していたとは。ますます字幕版で再見したい。
しかし3Dにした効果は……部分的にはありましたかね。
今回は、キャラクターが高所から飛び降りたりする場面が何回もありまして、そういう場面は3Dにした甲斐はあったと申せましょう。無くても楽しめたと思いますが。
それから、最近は長々と続くエンドクレジットの後に、オマケを付ける演出が増えました。
実は壊滅したと思われた「パンダの里」は、生き残りによって山奥に再建されていたのだった。そこではポーの実の父親とおぼしきパンダの姿が……。
うわ。三部作化決定ですか。
今回、ポーとタイガーの仲がちょっと親密になる展開がありましたが、この先ロマンスへと発展していくのでしょうかね。
そうだとするとJBとアンジョリのラブシーンが拝めたりするのでしょうか。アニメだけど。
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