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2011年6月15日水曜日

アップルシード XIII (サーティーン)/遺言

(APPLESEED XIII)

 『機動戦士ガンダムUC episode 3』の劇場上映の際に予告編が流れたので、「へえ。アップルシードの続編か」と云うのは存じておりましたが、それ以上の予備知識はありませんでした。特にスポットCMとかの宣伝も見かけなかったし、いつの間にやら期間限定で公開されていたので慌てて観に行ったという次第。
 どうも劇場用長編ではなく、OVAの上映であるというのは察せられたが、特に気にはしませんでした。最近はよくあることですし。
 でもこれが「前編」であるとは知らなんだ。

 終わってねーッ。
 「後編・預言篇」は10月公開予定。うがー!

 しかも上映されたのは「劇場リミックス版」とやらである。何のことかと思えば、全13話のシリーズの編集版だったのだ。全13話だから「サーティーン」なのか。
 でも「劇場リミックス版」と云われましても。フツーは「総集編」とか云いませんか。
 予備知識を仕入れぬまま観に行くのも、善し悪しですわ(泣)。

 その上、映像的にねえ……。
 予算がなかっただろうかと偲ばれますが……。かつての劇場版二作品に比べて、映像の質というか、密度というか、大変にその……残念なものがありまして。
 もうちょっと「映画」として観られるくらいにしてもらいたかった。OVAでは仕方ないのか。でも一方で『機動戦士ガンダムUC』なんて、劇場で観ても遜色ない作品もあるというのに。

 いや、まあ。『アップルシード』はもう一本くらい劇場版が観たいとは思っていましたし……。
 映画はビジュアルよりも、まずは脚本だろうとも思うのですが……。

 どうしてもかつての劇場版『アップルシード』(2004年)、『エクスマキナ』(2007年)と比べてしまう。
 云うまでもなく『エクスマキナ』と比べると動きはイマイチ(いや、もっとか)。主役キャラはそれなりですが、脇キャラは人形同然。
 しかも背景にバンクが多い。カメラワークも凡庸だ。もうちょいカットのつなぎをどうにか出来なかったのか。
 まぁ、ビジュアル的に素晴らしくても、こんな脚本かよという作品に比べれば、ナンボかマシではありますが。

 監督は荒牧伸志に代わって、浜名孝行。脚本は藤咲淳一となっています。
 だからまあ、物語自体が詰まらないワケではないのですが。

 設定が複雑なので、二二世紀の世界情勢がよく判らない(原作からしてそうなのですが)。
 とりあえず〈オリュンポス〉と〈ポセイドン〉と云う、二大新興勢力があるというのは判る。今回はそれに加えて〈アルゴノーツ〉と云う第三勢力が登場する。
 〈ポセイドン〉の分家みたいな組織らしい。巨大な人工島のような船で、〈ポセイドン〉にも無い独自の技術力を誇り、独立国家を宣言しちゃった為に、〈ポセイドン〉から爆撃喰らって一旦は滅びたそうな。
 幽霊船状態となった〈アルゴノーツ〉に、いつの間にやら残党が集結して再起を図っている。もはや伝説となった独自開発の宇宙開発用大型ランドメイト「ステュムパリデス」を再起動させて何やら企んでいるらしいが……。
 その一方で、〈オリュンポス〉では、「バイオロイドの自殺」と云う事件が多発するようになっていた。そもそも「生きることを義務づけられている」バイオロイドに自殺などあり得ない。何らかの調整ミスなのか……。

 結構、ミステリアスな筋立てに、対テロ活動のアクション、デュナンとブリアレオスの恋愛関係が絡んで、物語としては申し分ないでしょう。
 ただ、全体のストーリーとしては「前編」なので、すべてが繋がり合うわけではない。なんかビミョーにリンクしそうで、無関係な事件のようでもある。後編まで観るとすべてがひとつに繋がって完結するのだろうか。あまり過度に期待するのは止めた方が良いか。

 配役がまたしても変わっていて、ブリアレオスは前作に引き続き山寺宏一でしたが、デュナンは小林愛から坂本真綾になっていた。
 なんか『アップルシード』はよく声優さんが変わる作品ですねえ。私は小林愛のデュナンでも特に問題ないとは思うのですが……。
 坂本デュナンになると、更にちょっと可愛らしくなりすぎている感じがしますが(笑)。

 他にも、中田譲治、小清水亜美、置鮎龍太郎に藤原啓治。声優さんの演技には文句の付けようがない。
 台詞を先に収録するプレスコ方式だったそうですが、プレスコ方式にした意味があるのだろうか。画面上からは、あまり感じられなかった。特にブリアレオスはそうだろう。口パクしないし。

 今回は以前にも増してブリアレオスの保護者的描写が強調されている。回想シーンで、デュナンの父親とのエピソードも盛り込まれ、それはそれで納得できるのですが。
 恋人同士の気持ちがすれ違うという描写も悪くはありませぬが……。
 でも『エクスマキナ』では、もう対等のパートナーになったのではなかったか。また二人の関係がリセットされているような気がする。リセットしないとドラマが成り立たないのだろうか。

 前作までは、ヒトとバイオロイド、そしてサイボーグという三種類の人間による未来、という図式が描かれていましたが、今作から何故か「ヒト、バイオロイド、サイボーグ、ロボット」は皆、平等であると云われている。
 おお。ロボットにも人権が与えられたのか。バイオロイドも一種のロボットなのだろうから、不思議ではないが。人工知能も進歩したのか。それとも何かの伏線でしょうか。

 この作品のネックはやはり映像でしょう。CGの出来がもうすこし良ければなあ。別にもうCGアニメにしなくても良かったのではないかとさえ思えるのですが。
 加えて、完結していなかったというのが辛い。最初から「前編」だと判った上で観に行けば、ショックも軽かったのだろうか。

 ダメだ。やはりかばいきれぬ(泣)。


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