ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーの初共演ですよ。デップの方が一般人で、アンジョリ姐さんの方が〈謎の女〉という設定。
アンジョリ姐さんは『ソルト』に続いてまたスパイの役か(笑)。まぁ、今回はアクション場面は押さえてミステリアスな役に徹しておりますが。
導入部の「ヒッチコック式の巻き込まれ型サスペンス」としての展開は、なかなか良くできている。
英仏両国が追う謎の女アンジョリは「国際的犯罪者アレクサンダー・ピアース」へと繋がる唯一の手がかりである。長期にわたる監視活動の末、遂にアレクサンダーからアンジョリへ指令が伝えられたことをキャッチした当局は、アンジョリを追跡してイタリア行きの列車に乗り込む。
冒頭のパリ市内で展開するアンジョリと捜査員達のチェイス・シーンは手堅くまとまってます。
アンジョリに振り切られた捜査員が、焼き捨てられた指令書を復元して手掛かりを得る展開も巧いです。
そして列車の中でジョニー・デップの登場となる。
指令は「列車内で自分と似た背格好の男を選んで接触せよ」というものだから、デップは完全に部外者の一般人なのである。
米国の数学教師デップくんは休暇旅行の一人旅。いきなり超絶美女から話しかけられて面食らう。鼻の下を伸ばしてないで、少しくらい疑えよ(笑)。
やはり人は旅行中には非日常を味わいたいものなのか。非日常を味わいたいから旅行に行くとも云える。多少、不自然でも平凡な日常にないことを歓迎したい気持ちが働き、正常に判断できなくなるのか。
まぁ、美人に話しかけられて悪い気はしないわな。
そして列車はイタリアはヴェネチアへ。
美女に誘われるまま高級ホテルへ。例え自分で本当にイタリアに観光旅行に行ったとしても、絶対にこんな部屋には泊まれない(笑)。
サンタ・ルチア駅、サン・マルコ広場などのお馴染みの風景から、どこだかよく判らない裏路地に至るまで、ヴェネチアを堪能できます。観光旅行のロケーションとしては完璧ですな。
しかしヴェネチアの地理に疎いので、どこでどういう経路を辿って移動しているのかさっぱり判らぬ。まあ、外国人が気にすることではないか。
ヴェネチア出身者が観たらアラが目立つのでしょうか(笑)。
欲を云えば、全編これヴェネチアのみというロケーションが物足りないですか(冒頭でちょっとパリも映りますが)。イタリアの観光旅行ならヴェネチアの他にもミラノやローマにも脚を伸ばしてもらいたいところであるが、それは贅沢というものか。
ここまでヴェネチアのみな映画と云うと、遠い昔に『旅情』を日曜洋画劇場で観た記憶があるが、それくらいでしょうか。『ベニスに死す』というのも題名だけは知っているが観たこと無いな。
世界遺産にも登録された〈水の都〉を堪能したい方にはお薦めデスかね。
監督は『善き人のためのソナタ』でオスカー受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督(長い名前だ)。ドイツの人か。
共演にはポール・ベタニー、ティモシー・ダルトン、スティーブン・バーコフ等。
ベタニーは『ファイヤーウォール』でハリソン・フォードを脅迫するテロリストだったり、『ダ・ヴィンチ・コード』で暗殺者な修道士だったり、悪役が板に付いてますが、今回はイギリス捜査当局の警部ですか。正義の味方の筈なのだが、アンジョリとデップを追いかけてくる人なので、やっぱり悪役扱い。
ダルトンはベタニーの上司で捜査の指揮を執る主任警部。多少、老けたが凛々しいところは007の頃から変わってませんね。
ダルトン以上に懐かしいのがスティーブン・バーコフ。かつて『007/オクトパシー』でソ連のタカ派の将軍を演じていたが、年を食って今度はロシアン・マフィアのボスの役か。他の部下が見ている前で、ドジを踏んだ手下をにっこり笑って絞殺する悪党の鑑のようなお方だ。
ダルトンとバーコフの所為で、ますますスパイ映画の雰囲気が漂いますな(笑)。
アンジョリ姐さんの恋人である指名手配犯アレクサンダー・ピアースは、ロシアン・マフィアのボスから大金を盗んでいた。当然、警察より怖いマフィアもまた金を取り戻そうとアレクサンダーの行方を追っていたのであった。
と云うワケで、アンジョリ姐さんの所為でアレクサンダーに間違えられたデップくんは警察からもマフィアからも狙われ、散々な目に遭うのですが……。
豪華な舞踏会やら、運河でのボート・チェイスやら、見どころは色々ありますが、誰もが行方を追っているアレクサンダーがさっぱり姿を見せないのが気になりました。
アンジョリ姐さんの意外な正体が明かされ、更にアレクサンダーは整形手術で顔を変えているらしいとか、だんだんウラが読めてくる。
うーむ。まさかそんなベタなことはあるまいが……。
クライマックスでは、バーコフがアンジョリを人質にとってアレクサンダーを待ち受けるが、ギリギリになってもアレクサンダーは姿を見せない。アレクサンダーが現れないので捜査員達も踏み込めない。
デップくんはアンジョリ救出の為に自らアレクサンダーを名乗って、マフィアのボスと対峙するのだが……。
どうも結末で観客をアッと云わせてやろうと仕掛けているのが見え見えなのは如何なものか。本当にアッと云った人はいたのであろうか。
私は驚くよりも、内心で「やっぱりね」なんて呟いてしまったのですが……。
それならそれでもう少し伏線をしっかり張ればいいようなものであるが、そこまで脚本は周到ではない。だから観終わった後になって思い返すと、ちょっと不自然なところがポツポツと……。
うーむ。かなり偶然の要素が都合よく働かないと、こんな展開にはならない筈なのだが。
そもそもこの豪華な配役の所為でネタバレしているようなものではないか。
まぁ、中盤までのミステリアスな観光旅行がメインな見せ場なのだとするなら、それでもいいのか。アンジョリとデップのファンなら文句は云わないのか。
ヒッチコック風のミステリでしたが、ヒッチコックならもう少し巧く処理したのではないかと思えてならない。
初めの方が結構、良かっただけに残念。
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